表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/85

20.誤解と契約

「えー、真面目な話になりますがー」

「口調のせいで全く真面目な感じがしないにゃ」

「あ、アイなりの個性だから。うん、そういうことにしておこう。」

「そ、そうだな。いくら真面目なところでも個性は潰しちゃダメだよな」

「エリー、外野がうるさーい」

「気にせず頑張ってください!」


 ほっぺをむぅんと膨らませた後、翠竜に向き直ると話を再開した。


「翠竜はー、この機械見たことあるよねー?」

「……はい。」


 アイが取り出したのは私たちが拾ったパソコンだ。


「それは、私が捨てた……嫌な思い出」

「なんでこれは、嫌な思い出になったのー?」

「私が母さんに捨てられたということを書いたから」

「はいストップー!」

「いい雰囲気ぶっ壊しマシーン現るにゃ」

「それはー!ただの被害もーそう!」

「??どういうことです?」


 ガラゴロと岩が落ちてくる頻度が高くなる。

 これ、間に合うか?


「翠竜のダメだったところはー、この機械を最後まで確認しなかったところー!」


 ということで!と繋げるアイ。

 金色の魔力がアイの周辺に集まり出す。


「私がお見せしましょうー!この物語の『真実』をー!」


 エリにちょいっと手招きしたアイは少し耳打ちする。

 エリとアイは手を繋ぐ。


「「闇の神よ、この大地にありし、真実を映し出せ!『ネクロマンシー』」」


 二人の声が重なった。

 金色と深緑の魔力が蔦のように絡み合い、現れたのは門。

 門の向こうは深淵。真っ暗だ。


「これは、死者の門だよー。」

「そして、後もう一つ魔法をかけましょう!」


 次はエリさんだけが水晶玉をどこからか取り出し、両手で持つ。


「未来を見通せ、思い通りにせよ。運命を変えるもの、エリが命じる!死者の国から翠竜を連れ出せ!」


 門が暗くて眩しい光を発する。

 矛盾してるけど、実際にそうだからしょうがない。

 そして、門から現れたのは……


「か、母さん……」

「…………」


 深碧(しんぺき)の髪に花緑青(はなろくしょう)の瞳を持つ美しい女性。

 角が生えていて、翠竜に似てる。

 無言で立った女性に全員が暫し見惚れた。


「アイさん、時間がないです。」

「あー、うん。初代さんー、息子さんに真実を話してあげてー」


 こくんと頷いた初代さんに、私はゾンビになったショウとココロを思い出した。


「……なんか懐かしいね。」

「今、ショウとココロを思い浮かべただろ?」

「うん。」

「にゃ、確かにこんな感じだったにゃ。」


 初代さんが小さな口を開く。


『……ごめんなさい。』

「…………」

『私は(そら)から全てを見てました。私が何も言わずに貴方を置いて、外へ出てしまいました。』

「…………」

『それなのに、小さな貴方はヒトと自然を守ってくれた。仇を恩で返してもらいました。』

「…………」

『私は母親失格ですね。』

「……そんなこと、」

『私は貴方のことが大好きですよ。貴方のことを置いて逝ってしまったのをとても後悔しています。』

「捨てたわけじゃ、なかったんですか?」

『そんなこと、するわけないじゃないですか。私は貴方が大切です。もう共にいることはできませんが、息子を心配させた母を、許してくれますか?』


 大切、という言葉を聞いた瞬間。

 現翠竜の瞳から大粒の涙が溢れでた。


「ッ……許したくない」

『…………』

「ですが、大切って聞けて嬉しかったです。……許しますよ。母さん。」

『ふふ、よかった。』


 初代さんの体から金粉が舞う。


「母、さん?」

『もう時間みたいですね。優しいヒトたち。ありがとう。この子のこと、助けてあげて。』

「んー、もちろんー!」

『もし、この状況を打破したいのなら。』

「?」

『憑依した後に、』

『この子に目玉を捧げて?』

『大好きですよ。私の子。』


 それを言った瞬間、門が消え去った。


「母さん!私も、大好きです!」


 ポロポロと溢れ出す涙を拭いながら、叫んだ翠竜。

 少しの間、下を向いていたがバッと顔を上げた。


「ありがとうございます、視界が晴れました。」

「よかったよー」

「なんで、あの人に捨てられたと思ったんでしょうね。あんなに愛してくれたのに。」

「…………」

「脱出するにゃ!」

「目玉を捧げるはわかるが、憑依はなんだ?」

「あ、わかりますよ。」


 真面目に話を聞いていた翠竜が手を挙げる。


「まずは憑依するパートナーを選びます。これは選び直しができないのでご注意を。」


 私だったらこの人ですね。

 そう言いながら、アイの手を取る。


「そしたら、呪文を唱えます。自然と頭に浮かぶはずです。」


 アイと翠竜が目を伏せる。

 唇が動き出す。


「「『我々は、病めるときも、健やかなときも支え合おう。魂の契りの名にかけて。』」」


 魔力の光が飛ぶ。

 金色と翠色の光が辺りを満たし、それが収まった時には……


「おおー、不思議な感覚だねー」

『そうですね。魔導書とも同期します。』


 現れたのはアイと翠竜を足して二で割った人。

 中性的な顔に磨きがかかって、性別がわからない。


『できた。仲間になったのかよ。』

「悪かったなぁー?」

「喧嘩はダメですよ!早く脱出しましょう!」

「と言ってもにゃー、目玉にゃ……」

「んー……、あー、私が捧げるよ。」

「え、マジで言ってんのかよ」

「うん。肩の傷があるから、しばらく役に立てないし。」


 華麗に立候補した。


「ほんとにゃ?肩は治っても、なくなった目は治らないにゃ。」

「……うん。いいの。生きて帰れるのなら。」

『その決意、しかと受け取った。』


 アイ竜――アイと翠竜の合体版のことだ。――が槍を抜いて、近づいてきた。

 私も大きく息を吸う。


「私は!恐れません!」

『では遠慮なくいただく』


 目にも止まらぬ速度で動いたアイ竜は私の左の目玉を刈り取った。


「…………痛いね、やっぱり」

「簡易的に回復するよー」


 きっとアイ竜になったから使えるようになったであろう回復魔法を私の瞼にかける。

 痛みが治った。


「あ、ジン。その額の布貸して」

「お、おう」


 ジンの額についていた黒い布を指差す。

 手渡された黒い布は血で濡れているけど、気にせず眼帯の代わりにする。


「…………ありがとー」

「いや、早くやろう」

『では、行きます。』


 アイ竜は握っていた手を開く。

 蒼くて吸い込まれそうな瞳が現れる。

 鏡を使わずに自分の眼球を見ることができる。

 異常な状況だ。SAN値が減りそう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ