3. スライムと魔法
さっき言ったが緑色のブヨブヨだ。
既視感があると思ったらやはりスライムだ。
ゲームにまた似た光景で目をキラキラさせたくなるが素手で戦うという不安とせめぎあい、不安が勝利する。
突然現れた動く不自然物体にクラスメートはパニックになる。
(うわぁ、これは・・・パニックは収まらなそう・・・素手とか無理でしょ。せめてどっかのゲームみたいにヒノキの棒でもあればいいのに・・・)
ジンさんが必死になだめているがそんなに効果は期待できなさそうだ。
どうしようと悩んでいると、突然おい!という声が響いた。
声の方向を振り返るとミヤビさんが泣き出し、逃げ出そうと駆け出したところだった。
スライムがいるのによくここまで逃げなかったなぁともいえるが緊急事態だ。
ミヤビさんは駆け出したところを素早い動きで追いついたスライムにあっさりと吸収される。
「あ、う、助け、て」
最後に聞いた声はそれだった。
あっさりと人が死んだ。
その恐ろしさから逃げるため、私はぎゅっと目を閉じた。
(きっとこれは悪い夢だよね。お願いします!早く覚めて!)
目を開くがそこは平和なバスの中ではない。
ミヤビさんがスライムに喰われてみんな呆然としている。
(私のせいで、ミヤビさんが・・・)
責任感からくるめまいにふらふらしていると、それに気が付いたサクが前を向いたまま私を小突く。
「注意して!よそ見すると、喰われるよ!」
私は急速に頭が冷やされて、足に力を入れる。
(もう、これ以上の犠牲者を出さないために・・・!ゲームや小説だと、スライムには剣は効きにくくて火が弱点、剣で倒せないということではないけど剣はないし、火も何処にあるかわからないから・・・)
近くにマルトさんがいる。
(丁度いいし相談しよう。多分、頭いいし解決策が見つかるはず!)
「マルトさん。多分スライムは火が弱点。とがったもので狙うこともできるけど、吸収されちゃうかもしれないから・・・」
「物知りだなぁ。火か。きりもみはやったことないから不確実だし・・・」
マルトは空を見上げる。
(・・・空?あ!理科の実験で光を集めるって・・・)
私は意図を理解し、リュックを開ける。
「鏡どうぞ!私もどうにかしてみる!」
「おっ!ナイスってこれには水が必要なんだが・・・」
マルトさんがなんかぶつぶつ言ってたけど気にしないことにした。
私はマルトさんを守るためにスライムの目の前に立ちふさがる。
魔導書を開くと嬉しいことに一発で炎の魔法のページが開いた。
(これを読めばいいんだよね。成功してください!)
「『精霊魔法:炎 フレイムリング』!」
小声で唱えると、手のひらからほのかな赤い光が漏れ出てスライムに向かうと大きな炎のリングが現れた。
リングは不定形なのか、大きくなったり小さくなったりする。
そして次に小さくなった時、スライムを締め付けるように炎は固定され、その範囲に赤い炎が立ち上る。
炎は届かなかったが火の粉が舞い、煙が立ち込める。
避難訓練のように皆が手で口をふさぎ、身をかがめる。
(魔法って言ってたから魔力も使うのかなぁ)
私は他人事のように考えながらぐらっと傾く。
それを、マルトさんが支えて無理矢理しゃがまされる。
多分煙を吸い込むと危険だからだろうか。
口に手を当てられる。
そして聞かれる。
「なあ、さっきのどうやったんだ?」
多分魔法の事だろう。
だんだん思考も回らなくなってくる。
私は眠気でぼんやりする意識の中何とか応答する。
「私じゃない・・・」
「お前、何とかするって言った後に火事になっただろ。」
「ち、がう・・・スースー」
私はなんとか応答して魔力回復のために深い眠りに落ちた。
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