21.幻聴と店
「幻聴じゃなくて本当だったんだ!」
「キョウが一番信用してねぇじゃん。」
「キョウの体を操れるものー、マルト、キョウの人格が変わった時に持ってたもの教えてー」
マル君は思い出そうとするかのように目を固く瞑って眉に皺を寄せた。
「あ、ナップサック、肩に卵蛇、手には魔導書だった。」
「んー、卵蛇はテイムされたばっかだったからねー」
「ナップサックには大したものは入ってないもんな。」
「となると魔導書だね。」
私はナップサックから暗い赤基調に黒の縁と金の装飾が入った美しい魔導書を取り出す。
「これが魔物だったら話が早いんだけどな。」
「魔力入れれば喋れる。」
「入れてみればー?ちょっと気になるー!」
「あとにしない?今日中にここ出るんだよね?」
窓の外を見ると太陽は南にある。
「そうだな。防具も見に行かないといけないし。」
「お金分けちゃおー」
私とジンは換金したお金を机の上に出した。
「レイズっていうんだよね。」
「英語ー?というか、ここの人たち日本語喋るよねー。」
「レイズ・・・Raysか?日光みたいな意味があるが。」
「それで合ってる気がする。コインのレリーフ的に。」
銅色のコインに彫ってあるのは大きな太陽が光を放つ姿だ。
そんなに感じられないが、この世界では光の神を信仰しているらしい。
この街の広場にも聖火があるのかもしれない。
見に行く予定はないが。
分け終わったお金を彼方の世界から持ってきた財布に入れる。
「防具とか売ってる場所、ある程度調べた。」
「固まったところにあるからー。一緒に行こー!」
「心強いな。行ったことがないところはすぐわかんなくなるからな。」
「うん。じゃ、行こうか。」
・・・
入り口で地図をもらい、目的地に向かう。
地図さえあれば迷わない!
「ここはねー冒険者の街なんだってー」
「医療が発展してるから、怪我しても治してもらえる。」
「医療か。そういうのは拠点にないからな。」
「冒険者の街っていうと防具や武器の店もすごいんじゃない?」
「そゆことー!」
「いつか拠点に取り入れたい。」
雑談して歩いていると表通りの人混みを抜けて、裏路地に入る。
「入り口の近くにも、武器や防具屋があった気がしたんだが。」
「んー?あれは無理ー。」
「予算的な問題。あれはブランド物。」
「じゃあ今から行くのは?」
「中古の店だよー。」
「俺らのお小遣いで足りるのか?」
「多分、ギリギリ。」
小さな広場に出る。
四角の形になった場所で、屋台や小さな家に武器防具の看板がかけてある。
なんとなく素朴な感じで、表通りより安心する。
「ここか。」
「ん。看板に書いてあるマークで、職業別」
「テイマーはなかったからー、あそこのお店に行けばいいと思うよー」
「じゃ、買い終わったらこの広場の入り口集合な。」
私たちはそれぞれのお店に向かった。
・・・
「いらっしゃい!」
「こんにちは」
レジに立っているスキンヘッドの壮年男性が元気よく挨拶する。
挨拶を返しながら、武器防具を物色する。
(いいのあるかなー)
私の動きはピタッと止まった。
———テイマーって何使うの?
「嬢ちゃん、どうかしたかい?」
「何を選べばいいかわからなくて、」
「冒険初心者か、見繕ってやるよ。予算は?」
「ありがとうございます!このくらいでお願いしたいです。」
私は財布から銅の硬貨を七割ほど取り出して渡す。
硬貨を数えたおじさんは
「おう、嬢ちゃん職業は?」
「テイマーです。」
「珍しいな。ちょいと待ちよ」
おじさんが店の奥に引っ込む。
私は磨かれた武器防具の物色を続けた。
「こいつぁどうだ?」
奥から出てきたおじさんに長くて細い磨かれた剣を渡された。
「綺麗ですね。」
「これの良さがわかるか。見どころあるねぇ」
嬉しそうに目を細めたおじさんに私も嬉しくなる。
「こいつぁな、まだ銘がねぇんだ。」
「?作った人はつけなかったんですか?」
「ああ、俺の息子が作った最高傑作だが、あいつは銘をつける前に工房に籠っちまった。」
なんか訳ありだ。
「こいつの銘をつけてくれねぇか?」
「・・・ごめんなさい、流石にそれは、」
「やっぱそうだよなぁ、じゃ防具も見繕う。」
ふさふさの眉を下げたおじさんはもう一度奥に戻った。
私はその間におじさんが置いていったレイピアを見つめる。
派手ではないけど地味でもない気品のある黒の装飾。
丁寧に磨かれた銀の刀身。
柄に嵌め込まれた美しいトパーズ。
こんなにいい品なのに、私に売っていいのか心配になった。
「嬢ちゃん、こいつでどうだ。」
戻ってきたおじさんは灰色のロングコートを持ってきた。
「元の装備の質がいいからな。ケープだけ少し焦げてるから変えたほうがいいぞ。」
「ありがとうございます。」
「じゃ、お代はな」
・・・結構なお値段がした。
ストックがある限りは毎週金曜日に更新予定なので、見てくれると嬉しいです!




