2. 転移後と説明
「ぐっ・・・」
ゆっくりと目を開くと青い空が広がっていた。バスの中で寝ていたわけではないらしい。
本でよくある起きると知らない天井、知らない部屋、みたいなもんだ。
光に慣れない目が痛い。
少し鍛えていた腹筋で勢いよく起き上がり、あたりを見回す。
そこには私の所属クラス、6年1組のメンバー全員が眠っていた。
「あ、アイ?みんな?」
生きているのかわからないぐらいピクリとも動かないみんなを見て私はまさか・・・と思いながら隣で寝ていたアイの首に手を当て脈を確認する。
(生きてる。寝てるのかな?)
私はみんなの安全確認(全員やったわけではないけど)をしたから情報整理をすることにした。
(まずはこうなってしまった原因。私が唱えた呪文のせいだとはとても思えないけど、それ以外に原因が一つも思いつかないし・・・じゃあ私がこんなことを起こしたと知られたら、間違いなく責められるってことだよね。アイは言わないと思う。サクも大丈夫かな)
アイは私の友達だと説明したがサクは私の親友だ。言わないと信じてる。多分。
というかアイは当事者の一人なんだから私と同じように言ったら責められるから困るし。
(で、この場所。)
あたりを見回すと緑の草原。広くて私が見たことある日本では想像がつかないほど平らだ。
(・・・もしかして、クラス転移?!)
本で見たことのある異世界転移に似た状況になっていることに私は気づき、目をキラキラさせた。
「これが、異世界転移・・・(仮)」
「・・・何してるの?キョウさん。」
「ふわっ?!」
「そ、そんな驚くなよ。」
「なんだ、マルトさんか。」
「なんだって・・・なあ、ここどこだかわかるか?」
「わかんない。」
私に気配を消したまま話しかけてきたのはクラスメートのマルトさんだ。
というかさっきのこれが異世界(略)は聞かれてないよね?!
「戻れないのかなぁ」
不安げにマルトさんがつぶやく。
「わかんないけど、」
「「異世界転移みたいなもんじゃないの?(じゃないか?)」」
シンクロした。
・・・ってなっているとマルトさんが口を開いた。
「まあみんなのこと地道に起こすしかなくない?」
「あー、そうだね。私、起こしておくからマルトさんも、」
「俺は見張りする。何があってもおかしくないから。」
「わかった。」
私はマルトさんとの会話を一回止めアイとサクを起こした。
起こしたというのはパニックになる二人をなだめるところまでがセットだ。
口元に人差し指を立てシッとすると二人はとりあえず黙った。
そして、いま推測できることと私とアイが原因である可能性が高いから黙っておいてほしいということを簡潔に伝えるとアイとサクはブンブンと首を縦に振り分かったと伝えた。
そしてついでにほかの人を起こすのを手伝ってほしいと伝えるとアイは間延びした声で、サクは了解とシャキシャキした声で答えた。
で、私たちはみんなのことを地道に揺さぶり起こした。
起きたみんなは少し混乱しているみたいだが、マルトさんはみんなが納得できる?ように状況を説明してくれているから少しだけ待つことにした。
「ということだから。じゃあジン、あとはよろしく」
みたいな感じでクラスのリーダー格、ジンさんに言葉を譲った。
「俺かっ?!・・・あー、こんなところは俺の記憶にない。どこかに元の場所に戻れるきっかけがあるはずだ。」
突然パスされて困ったようだが言葉ははきはきとして芯を通していた。
私は原因となる魔法書が入っているナップサックを強く抱きしめた。
「とりあえずここで待っていても先生の助けも勝手に帰れる仕掛けみたいのもない!ちょっと周囲を探索してみようぜ!」
みんなは不安そうにざわめくが、少しずつ行動に移し始めたようだ。
思ったより大人だ。
もっと泣いたりする子がいると思ったのに。
もちろん私はしていない。旅行に行っても一度もホームシックになったことない人だからね!
日光の行動班の順番に並ぶと歩き始めようとする。
私も素早く混ざって班のメンバーが全員いるか目配せする。
そんなところにうおわっという悲鳴が上がった。
「?!どうした、リョウ?」
悲鳴を上げたのは器用貧乏なリョウさんだ。
マルトさんが素早く振り向き、声をかける。
リョウさんが一方を指さす。
そこには、ゲームで見たことあるような緑色のブヨブヨがいた。
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