19.邂逅と質問(前編)
「あ、よかったー!」
「キョウ!怪我してないか?」
「うん。平気だよ」
「本当に?さっき折れた気がするけど」
鋭いなぁ。
大丈夫と伝えながら、倒れたオーガを見る。
付け直したのか魔力の炎が燃える中、オーガは黒に近い灰色だ。
夜闇に紛れて、気づかなかった。
「いつも戦うのは緑色なのにねー」
「特殊個体か?横薙ぎは珍しかったな。」
振り下ろしだったら多分避けられた。
知能指数が高いのか、這いつくばっても避けられなさそうな高さで横薙ぎをしたオーガに死を覚悟した。
「本当に危なかった。」
「キョウが気づいたから良かったけどーマルト木っ端微塵もありえたねー」
「夜に見張りがいた方がいいかもな。」
「ぬしさまー見張りやる?」
「俺ら夜型だしクローズで寝てるから平気だ」
「いいの?じゃあ、みんなもそれでいい?」
「大丈夫だぜ。ありがとな。」
マル君とアイも頷いたからお礼を言って二人に頼んだ。
・・・
「ついたー!」
「やっとだな。」
「ここが一番近いのかな?五日もかかったけど」
「じゃあ帰りもこのくらいかかるのか」
野宿みたいな慣れない経験をして、みんな疲れ気味だ。
ココロ達も見張りに疲れて寝ている。
街の中に魔物を連れて行きたくなかったけど卵蛇がクローズされてくれないから、首に巻きついてマフラーに偽装中だ。
「ねぇ卵蛇、本当にクローズされてくれないの?」
黙っていることで否定の意思が伝わってくる。
「しょーがねーよ。」
「我慢我慢ー!」
「素材売りに行く?」
「そうだな。二人ずつに別れて行動するか。」
「じゃあー、マルトは連行ねー」
「えっ、アイと私じゃないの?」
「そんな関わったことない奴と関わっておかないと、連携大変だもんな。」
「じゃあ集合は入り口ねー」
戸惑いつつも頷くとマル君の襟首を掴んだアイが歩いて行った。
「じゃあ俺らも行くか。」
「おーけーなんだけど、どこで売るの?」
「こういうのは、入り口に町内マップがある、はず?」
別れたところがまあまあ入り口から離れていた。
だから、入り口がわからない。
「え、集合さえもできない」
「あ、(察し)」
・・・
散々だった。
「迷子だったねー」
「道は今度から覚えようと思います。」
結局徒歩で売却するところに辿り着いたけど、そこからの道がまたわからなくなって最終的には通行人に助けを求めた。
「まじ反省だぜ」
「いい年して恥ずかしい。」
辛辣な言葉がマル君から飛んでくる。
「?キョウちゃん?」
聞き慣れたけど、最近聞いていなかった声が背後から聞こえた。
「ユズ、どうかした?」
さらに、気まずいアルトボイス。
「先行かないで・・・?キョウさん、」
そして最も聞きたくなかった声がした。
・・・
出会ってしまった私たちをユズさん、アサヒさん、アイ、私が背中を押してオシャレな喫茶店に入れる。
向かい合って席に座ったみんなの中に気まずい沈黙が流れる。
「なにかあった?なんでここにいるの?」
口を開いたユズさんは興奮がおさまらない様子で私に質問する。
「はいストップ。」
正直に答えようとしたら、マル君に口を押さえられた。
「キョウ、素直すぎー。私たちと道を違えたのならー」
「ああ、こっちだけ答えるのは不平等だ。」
「だから交代しながら、質問をする。」
私が小さく両手を上げるとマル君は口を押さえていた手を外す。
「じゃあ、先攻と後攻決めた方がいいね。」
私がじゃんけんをするべく手を差し出す。
ナシさんも情報を知りたいのか、ため息をつきながら手を差し出した。
「最初はグー、じゃんけんポン!」
私の勝ち!
「ナイスだぜ!」
ジンが私の頭をワシャワシャと、かき混ぜる。
「ちょっ、やめて。」
「・・・じゃあ、交渉は変わる。」
ジンの手を外す。
少し不機嫌そうなマル君が聞き出しに行く。
手櫛で乱れた髪を整えながら、耳を澄ました。
再開した私たちの物騒な話し合いが今、始まった。
長くなったので前後編に分けます。
ストックがある限りは毎週金曜日に更新予定なので、見てくれると嬉しいです。
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