1. 転移
キョウは平凡な女子だった。
過去形なのは今は平凡じゃないからだ。
私たち、6年1組の全員の人生は6月9日の日光移動教室最終日に大きく変わった。
「はぁ・・・もう終わりか~家帰りたくないな。」
「そーだね悲しいね。」
バス席の隣のアイはお茶を飲みながら私の独り言に答えてくる。
先生がバスの通路を人数確認のために通り過ぎていく。
私は読んでいた魔術の本を愛に見せる。
そこには光魔法の呪文が書いてあった。
「どかしたー?魔法ー?唱えてみるよ『ライト』ー!」
アイは人差し指を立てて唱えた。
そして指先に光がともった・・・りはしなかった。
「できるわけないよねぇ」
二人で苦笑する。
もう一度ページを開くと異世界転移の呪文が書かれていた。
(・・・面白そう!)
私とアイが読んでみようと視線で示し合っていたら、人数確認が終わりバスが発車するようだ。
エンジンの大きな音で周囲の音が紛らわされる。
私はアイとともにその音に紛れ、小声で唱えてみる。
「「『クラストランスファー』」」
トランスファーの前は適当だ。
アイがけらけら笑う。
「あはは、さすがに」
できるわけないよね。という私の言葉はさえぎられた。
ゴトン・・・誰かが水筒を落とした。
続いてあがる悲鳴と戸惑う声。
見ると足元に人一人分の不思議な魔法陣が形成されている。
私とアイは慌てて飛びのこうとするが魔法陣は私たちの足元から離れない。
そして先生に報告する子もいるようだが私たち以外には見えないのか先生はしきりに首をかしげていた。
みんながパニックの間に、魔法陣から光の粒子が出てあたりがまぶしい光に満たされる。
アイが私の手をぎゅっと握るから私も強く握り返した。
はじめまして、音花 緑葉です!
初心者ですが、がんばるので、評価貰えると嬉しいです。
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