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信頼の作戦


 神の知恵。それは転生の際に神らしき爺さんからスキル"信仰心"と共に譲り受けたもの。人の頭脳の限界を超え、文字通り神の知恵を得ることができる能力だ。しかし、神の知恵にはデメリットもある。それは神という人を超えた思考力によって人間的な感情を度外視した思考形態になってしまうということだ。


 (例えば最初の村の村長が死んだ時、俺は悲しみよりもスキルやその後の展開のことばかりを考えていた。)


 人知を超えた神の頭脳は神としての責務、つまりこの世界を救うことという唯一の目的のためにのみ思考をする。逆に、それに関係しないことには何も考えを提示しない。


 (たしかに責務をひたすら効率的に遂行するためのこの思考は神として正解なのかもしれない。神に感情という人間的な要素が要らないのもその通りかもしれない。)


 だが、俺がなりたかった神というのはそういう存在じゃない。強く気高く全てを包み込むような、そんな存在を神と信じ、それを目指していた。だから、俺はこの神の知恵の思考法を出来るだけ拒否しようと思った。


 (神の知恵は俺が思考につまづいた時に不意に案が浮かび上がってくるというような仕組み。つまり、俺がある状況に対して常に何かしらの考えを持っておくことで、神の知恵がそこに入り込む余地はなくなるというものだった。)


 そこで俺は、神の知恵に疑問を抱いた日からその法則を逆手に取り、可能な限り神の知恵を拒否してきた。


 (だが、この今の状況。全く解決策が思い浮かばない。それに、俺がここで死んでしまっては魔王を倒して世界を救うという目的も達成されなくなってしまう。)


 世界救済のためと俺の思考不足という二つの条件が重なった今、神の知恵は俺の頭に一つの答えを出した。


 "頭だけが動けばいいのではない、四肢を使うのだ。四肢の一つが近くに在る。"


 (四肢を使う?一つが近くに在る?)


 訳の分からないアドバイスに思考を巡らせる。


 (四肢というと手足のことだ。だが、手足を使うというのは既にやっている。その一つが近くに在るという言葉もよくわからない。)


 普通の手足で考えたところで全く解決の糸口が見えなかった俺は、考え方を変えた。


 (頭をリーダー、手足を仲間と置き換えたら……そうか!)


 俺はその瞬間に即座にこの状況の解決法がわかった。


 (テリーだ。テリーが俺の四肢の一つだったんだ。)


 四肢の一つという神独特の言い方に若干の違和感を覚えつつも、俺はテリーに"通話"を繋げた。


 (テリー、聞こえるか?)


 (わっ、福くん。どうしたの!)


 (一つ頼みたいことがある。先刻私が与えた"発砲"と"破壊"であの剣を破壊して欲しいんだ。)


 (え、?)


 急な頼み事にテリーはかなり困惑しているようだった。


 (奴を倒すことは簡単だ。だが、ただ奴を倒すだけでは奴の中で機神が神という概念は変わらない。だからこそ、今から奴の心を折る。そして、そのためにはテリーの協力が必要なんだ。)


 (そっか……うん、わかった。うまく出来るか不安だけど協力させてもらうよ!)


 テリーは不安に打ち勝ち、俺の要請を受け入れた。


 (それでいつどうやって破壊すれば良いのかな?)


 至極当然の疑問をテリーは投げかけてくる。


 (まず方法だが、さっきも言った通り"破壊"と"発砲"を使う。そして、その二つを合わせるんだ。)


 (二つを合わせる?)


 (そうだ。"発砲"で発射した弾に"破壊"を付与する。そうすることで"発砲"の弾に触れた物は即座に"破壊"されるようになる。それを十本の剣に向けてやってほしい。)


 (すごく難しそうだね……。)


 なかなかの難題にテリーは狼狽えるが、覚悟を決めたように言った。


 (よし、わかったよ!その合わせ技を必ず成功させてみせる!それでタイミングは?)


 (うむ、タイミングは十本の剣が私に触れる瞬間だ。)


 (触れる瞬間ってことは……)


 (ああ、失敗したら私はバラバラになるかもしれない。)


 (ええー!!むりむりむり、僕自分の命は賭けられるけど他人の命、ましてや福くんの命なんて賭けられないよ!)


 想定通りの反応に対して、俺は言葉を返す。


 (テリー、その気持ちはわかる。だが、私たちは仲間だ。仲間とは共同体、つまりはどちらかが欠けては成立しない。これは気持ちの上でもそうだ。私は"私"と君のことを信じている。だから、君も私と"君"のことを信じるんだ。)


 (福くん……)


 遠目から見たテリーの顔は決意がみなぎっていた。


 (信じるよ!福くんと僕自身のことを!それに"一人で解決"しようとするのはよくないもんね!)


 テリーは俺の言葉を思い出したのか、少しにやつきながらそう言った。そして、俺は"通話"を切り、ようやく狂信者の少年に相対した。


「死ぬ覚悟はできましたか?」


「お前こそ、機神が偽物で私が本物の神だと信じる準備はできたか?」


「だまれ!お前には懺悔の時間も与えず死のみを与えてやる!」


 そして、十本の剣が俺に降り注いできた。

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