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覚悟の殺気


 四人チームになり、数日間この仮想現実を生き抜いて見てわかったことがある。


・空腹や眠気といったものは存在しないこと。

・戦いによる肉体的疲れはあるが、一定時間が経つと疲れは消えること。

・この仮想現実には森や砂漠や海といった自然だけが広がっており、街や村はないこと。

・魔物はちょくちょく出てくるが、ボスモンスターは簡単に出てくるようなものではないこと。

・多少強い魔物の中には謎のドロップ品を落とす個体もいること。


 これらを数日の間に把握した俺たちはボスモンスターを探しにまずは森の探索を進めていた。


 (一通り、この森を探索したがボスモンスターは全く姿を見せない。それどころか弱い魔物ばかりいるせいでここで死んだら現実でも死ぬという緊張感があまりない。)


 皆この仮想現実に飽きを覚え始めているようだった。身体的な疲労は一定時間経てば回復するが睡眠なしで精神を健全に保つのは中々に大変だ。


 (今のところ頭脳を使う要素がこの仮想現実にはない。とすると、ボスモンスターを見つけるということがその要素にあたるのかもしれない。)


 俺はその考えをチームに話し、意見を求めた。


「ここらへんの雑魚たちを狩って行ったらいつかはボスに辿り着くんじゃねえのか?」


「レングスばか。それだと頭脳コロシアムじゃなくて、脳筋コロシアムになっちゃう。」


「ぼ、僕は魔物が落とした謎のドロップ品が関係してくると思う。」


「それはチニーも思う。」


 テリーとチニーという頭脳派二人の意見が揃った。当然俺もそのドロップ品が怪しいと考えていた。


「ドロップ品がどう関係すると思うんだ?」


 俺は一番気になるところを聞いた。何かに関係ありそうだとは思うが、その何かがわからない。見た目は小さい鉄の塊で特別なアイテムという感じはしない。するとテリーが意見を出した。


「多分これ機械の部品だよ。」


「機械って、いつもテリーが作っている機械のことか?」


「そう!僕の家族たちも最初はこんな小さな塊から始まるのさ。それを僕たち製造者が合体させて命を吹き込むんだ!」


 (機械の部品か、それは盲点だった。)


 機械製造の工場を営む者が多いこの都で開催された頭脳コロシアム、それに機械が出てくるというのは至極当然のことだ。


「チニー機械のことはわからない。」


「機械のことなら僕に任せて!そのためのスキルだからね!」


 テリーは機械に触れられてとても上機嫌になっていたが、何かを思い出したのか急に怪訝けげんな顔をし始めた。


「どうしたテリー?」


「今思ったけど、いつも僕が機械を作るときこれくらいの部品が百個くらいいるんだ……。」


「お、おい!俺たちが数日かけてやっと三つの部品が百個ってまじか!!」


「チニー退屈で死ぬぅ。」


 運良く一日に一つくらいのペースで集められたとしても最低百日はかかる。必要がないとはいえ、百日間食事なし睡眠なしの生活はさすがに精神が持たないだろう。


 (これが人と人を戦わせる要因になるわけか。)


 加えて優勝に興味がなく、強者や知者を求めているだけのレングスやチニーにとって魔物を倒して行う部品集めは退屈以外の何者でもない。


 (人と戦う方が賢いやり方か。)


 戦うと言っても殺すわけではない。相手に圧倒的な力を提示してしまえばお互い無傷で話し合いに持ち込むこともできる。


 (逆に、もし俺たちの力に対抗しようとするような奴なら少なくともレングスの強者と戦うという欲求は満たされるだろう。)


 それに、それほどの強者を助手に選ぶような者は優秀な可能性も高い。そうすればチニーの欲求も満たすことができる。


 (テリーは部品を集めて機械を造れれば良いという顔をしているし、やはり人と戦って部品を集めるのが効率的にも精神的にも良さそうだな。)


 あまりに遠いゴールに嫌気が差していたチームメンバーに俺は今考えたことを提案しようとした。しかし、俺が戦闘を提案するより早く、戦闘の気配がやってきた。


「福!誰か来たぞ。」


「ああ、かなり殺気立った奴らだ。」


 殺気の出し方からして、魔物ではなく人間が攻めてきたとわかる。俺とレングスはテリーとチニーを後ろに守りながら、殺気のある方向へ体を向け戦闘準備に入った。敵が来るまでの少しの間に俺はテリーに"通話"をした。


 (テリー、時間がないから手短に言う。本当にやばいと思った時以外は力を使うな。私たちの力がバレたら後々面倒になる。)


 (わかった!)


 それだけの会話を交わし"通話"を切った。それと同時に木々の中から仮面を被った十人の敵が姿を現した。


「お前ら、そんな殺気出してくるってことは死ぬ覚悟はあるんだよな?」


 レングスが威嚇とも思える言葉を発する。


「いや、死ぬ覚悟なんてないさ。なんせ僕らが負けるわけないんだからねぇ!」


 その言葉と同時にそこにいた全員が戦闘態勢に入った。

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