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頭脳訓練


 テリーの誘いを受けた俺は早速この都のことやコロシアムについての大まかな情報をテリーに聞いた。


・頭脳コロシアムは四日後に行われること

・頭脳コロシアムの形式は当日までわからないこと

・この都には工場以外は最低限生活できるための建物しかないこと

・この都は頭脳至上主義だということ


 まず頭脳コロシアムが三日後に行われることに関しては特に問題はない。俺はただ助手としてテリーに付き添っていればいいだけだ。


 (だが、形式がわからない以上当日急に何か重要な役割を任される可能性もある。一応心と頭の準備はしておかないとな。)


 そしてこの都についてだが入都してすぐ感じた通り、この都は頭脳至上主義で建物や交友関係も必要最低限しか無いらしい。だからこそ、すぐ隣の工場の状況もわからないし、逆に知ろうとするのはモラル違反だとテリーは言っていた。


 (こんな都に住んでたら誰でも内向的になるよな。)


 ヤガナを造り出したことを都の人々の人間性のせいにしていたが、その人間性を造っているのはこの都自体、ひいては都長の責任だと感じた。


 (一度都長と会って人間性を確かめる必要があるな。)


 都長がおかしいと都もおかしくなる。この都は人間界に五つしかない都のうちの一つ。その一つが崩壊してしまっては人類の滅亡に繋がりかねない。


 (そのためにも頭脳コロシアムで優勝して都長に会わなければ。)


 俺はいつのまにかテリーと利害が一致し、コロシアムに前向きになった。


「それじゃあ福くん、とりあえず頭脳戦の訓練に行こっか。」


「頭脳戦に訓練があるのか?」


「もちろんさ。コロシアムの形式が当日までわからないとは言ってもある程度の対策はできるからね。助手だとしても訓練をしといて損はないと思うよ!それにこの都で平穏に暮らしたいなら行ったほうがいい。」


 そう言われて俺とテリーはある建物へ向かった。その建物は建設する上で一番簡単そうな長方形の建物で訓練場という看板が掲げられていた。中に入るとゲームのような機械が沢山あった。


「ここが訓練場だよ。僕の服に星のバッジが付いてるでしょ?これは頭脳の等級を表すものでそれを獲得するにはここでの訓練を乗り越えなきゃいけないんだ。」


 (なるほど。人と会話をしない分、そうやって他人の頭脳を判断するんだな。)


「今福くんは星が全くついてない状態だよね。だから周りの人から見て福くんはおそらく奴隷くらいだと思われてるよ。」


 (まじか。そこまで落ちる?)


「旅人でやってきた人の大半はそのことを知らずに冷遇されたことを嫌に思ってすぐこの都を出ていくんだ。」


「そうなのか。」


「まあ、そんな話は置いておいて。早速訓練しようか!はい、これが訓練する時に使う道具だよ。」


 テリーは訓練セットを取り出してまずは俺のレベルを測ろうとした。だが、驚いたことにその訓練セットはまるで前世にあったゲーム機と酷似しているものだった。


「その訓練セットにはボタンがいくつかあると思うけど、それぞれ押すと押した方向に……」


 (まじか、まるで本物のゲーム機だ。それに前世で俺が神がかっているほど上手かったP○Pにそっくりだぞ。)


 操作説明をするテリーの説明は全く耳に入ってこず、俺は内心興奮し続けていた。


 (これが訓練ならいくらでもやれる。すぐにこの都のトップに……)


「福くん、福くん。聞いてる?」


 目の焦点が合っていなかったため、さすがに話を聞いていないのがバレた。


「もー、また最初から説明?」


「いや、操作方法はわかった。訓練方法だけ教えてくれ。」


 見た目で操作方法を確信した俺は訓練の仕方だけを聞いて、早速訓練に取り組んだ。聞けば訓練方法もまた前世の将棋のようなもので、仮想戦闘での自軍の配置や動きを考えるものだった。


 (将棋なんて小学生の時に遊びでやったとき以来だがなんとなくわかってきた。強い駒より弱い駒をどう動かすのかが重要になってくるんだな。)


 それっぽいことを心の中で喋りながら俺は黙々と訓練をした。ゲームっぽさのおかげで着実に上手くなっていった俺はテリーも驚くスピードで星を手に入れていった。


 (これで五個目と。)


 十段階中、五段階目の星を集め終わって初日の訓練は終了した。


「す、すごい……福くんって頭も良かったんだね。」


「いやいや、テリーの方が星多いじゃないか。」


「僕は何年もかけてやっと八個取ったんだよ?初日で五個も取るなんて聞いたことないよ!」


 どうやら異例なことをしてしまったらしい。だが、幸いにもこの都の人々は他人に関心がない。そのため特に騒ぎになることはなさそうだった。


「まあでもそれくらい頭が回るなら助手として信用できるよ!無鉄砲にコロシアムに挑もうとしてたけどこれなら優勝も十分あり得るよ!」


 かなりテンションをあげたテリーは俺を家族としてもてなしてくれるらしく、一緒にあの白い工場に戻った。工場に戻ると入口に機械が立っていた。


「ただいま。ジュエル。」


 テリーは入口に立っていた機械に挨拶をした。本当に家族として考えているようだ。


 (そういえばテリーの目的はなんなんだ?生活をするために機械作りをしているとはいえ一生それを続ける気もないだろう。)


 答えによっては仲間にすることに関わるため俺は聞いてみることにした。


「テリー、君は最終的に何がしたいとか決まっているのか?」


「ん、急にどしたの?」


「いや、この数の機械たちをこれからどうするのかと思ってな。全員を戦闘に送るわけじゃないだろうし、家事や仕事を手伝わせるにしても多すぎる。それに他人に貸したり売ったりするのもしないのだろう?」


「そういうことか。福くんはこの子たちの処遇が気になるんだね。」


「ああ。」


 (なんとなく論点をずらされた気がするが、間接的に目的を聞き出せそうだ。)


「この子たちはずっと僕と一緒にいるつもりだよ。戦闘用機械製造のノルマにこの子たちは使わないから。」


「なぜ?」


「この子たちは僕が長年かけて作った分通常より高スペックだからね。ノルマに使うには勿体ないのさ。」


 (何か質問と答えが合ってない気がするな。こうなったら直接的に聞くか。)


「君はその約100体の高スペック個体を使って一体何をするつもりなんだ?」


 かなり直接的に聞いたためテリーはかなり動揺しているようだった。無言で見つめ続けるとテリーは口を開いた。


「あ、あまり人に言えるようなことじゃないんだよ……。」


「大丈夫だ、私には。」


 (なぜなら人じゃないからな。)


「じゃあ言うよ。ぼ、僕はこの子たちと一緒に世界平和を実現したいんだ!!」


 予想外の答えに俺は動揺を隠せなかった。

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