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神の役割


「うっ……。」


 片腕を切断されつつも一心は"伸縮"で王間から距離を取った。


「今ので首が飛ばなかったとは大したものだ。」


 (一心よ、すぐに"回復"だ。)


 一心は"回復"をし、切断された左腕は元に戻った。


「ふむ、切断された腕が瞬時に戻るとは……なかなか興味深いな貴様のスキルは。」


「はっ!この力はスキルではなく神にいただいたものだ。お前を殺すためだけにな!」


 そう言い放ち、一心は"発砲"の構えを取った。そして、"伸縮"を使った瞬間移動をしながら両手から黒玉を放った。


「また新しい力か、面白い。」


 王間は攻撃を避けようともせずその場に佇んでいた。すると、王間に触れようした黒玉は四方八方に霧散してしまった。


「なんじゃと!?」


 (さき様!?黒玉が効きません!)


 黒玉が効かないという予想外の状況に対応するため俺は即座に思考に耽った。


 (黒玉が霧散した………となるとやはり奴のスキルは空間に作用するものだな。そして、移動速度の上昇や攻守に使えることからおそらく空気の流れを操るような空間操作のスキルだろう。)


 俺は一心と"通話"をしていることを思い出し、急いで口調を直した。


 (一心よ、今言ったように奴のスキルはおそらく空気の流れを操るものだ。)


 (はい、深淵なご考察を聞かせてもらいました。)


 (よろしい、それで対処法だが闘技場の砂を巻き上げるがよい。)


 (砂……ですか?)


 (そうだ、そうすることで空気の流れが変わることを目視できる。)


 (なるほど!かしこまりました。)


「さて老人よ、ここからどうする?攻撃が効かなければ復讐は達成できないぞ?そのスキルなら俺から逃げることはできるだろうがな。」


「ふん、貴様のスキルはもう見切った。」


「と言うと?」


「貴様のスキルは空気の流れを変える類のスキルじゃな?」


「なるほど、まあ及第点だな。それも神とやらの力でわかったことか?」


「もちろんじゃ、神は全てをお見通しになる。そして、貴様の倒し方もわかった!」


 一心は剣を地面に突き立てながら"伸縮"で瞬間移動をした。すると瞬く間に闘技場に砂埃が舞った。


「いい作戦だ。」


 王間がそう言って再び殺気を出すと、それと同時に砂埃の中に一つの透明な丸の空間が出来た。そして次の瞬間その透明な丸から斬撃のようなものが繰り出された。


「攻撃が見え見えじゃ!」

 

 一心はその斬撃を"伸縮"で難なく躱すと王間の前に瞬間移動し、斬り込もうとした。しかしその瞬間、王間の前に先ほどの丸が現れ、また斬撃が繰り出された。一心は斬り込むのを止めて後ろに下がる。


「くっ……」


 (福様のおかげで攻撃は見えるようになりましたが、なかなか斬り込めません。)


 (一心よ、もう一度"発砲"を使うがよい。)


 一心はもう一度"伸縮"をしながら"発砲"を繰り出した。するとまた王間の前に透明な丸が現れ、王間の周りに透明な膜を張った。その膜に触れた途端黒玉は霧散した。


「なるほど、そういうことだったのじゃな。」


「ここまで見られたからには隠す必要もないだろう。そうだ、これが俺のスキル"波動"だ。"波動"は指定した空間の一点から振動を起こし、斬撃や防御膜を作ることができる。これでわかっただろう、俺に攻撃を当てることは不可能だ。」


「じゃが、それでは逆に攻撃することもできまい。Sランクの名が聞いて呆れるぞ?」


「そう言う貴様こそ、復讐を果たさないままぐだぐだ戦いを続けて恥ずかしくないのか?」


 両者互いに攻撃が通らないと見ると舌戦が始まった。お互いが言葉で相手の隙を作ろうとしている。その内に俺は王間の倒し方を思いついた。


 (一心よ、作戦がある。ただし一度しかチャンスはない、心して聞くのだ。)


 俺は一心に作戦を話すと一心は納得したようだった。そして、一心は舌戦を終わらせ最後の構えをとった。


「ん、何か作戦でも思いついたのか?」


「そうじゃ、貴様を殺す方法がわかった。」


「ほう、面白い。ではやって見せよ。」


 一心は先ほどと同じく"伸縮"を使い不規則な瞬間移動で王間に近づいた。


「ふっ、何度も同じ手が通じると思うなよ。」


 王間はそう言うと、空間の点から波紋のような斬撃を繰り出し一心の逃げ場を奪った。


 (今だ、一心よ。)


「はい!」


 一心は斬撃が自らに届く前に"破壊"を地面に向けて発動した。


「なに!?」


 闘技場の地面が粉々になり、王間と一心は宙に浮いた状態になった。すかさず一心は"飛翔"と時間"伸縮"を同時使用し、王間の死角である真下に瞬間的に移動した。そして"発砲"の構えをした。


「終わりじゃ、王間。あの世でわしの息子に詫びるんじゃな。」


 一心は五センチほどの黒玉を放った。王間はすぐに防御膜を張ろうとした。だが、普段は防御膜を真下に張ることがないため、判断が遅れた王間は黒玉に心臓を抉りとられた。


 (一心よ、よくやった。)


 (はい……福様のおかげです!)


 俺は瀕死の王間の元へ降り立ち、最後に言葉を交わした。


「王間よ、最後に言い残すことはあるか?」


「誰だ……?いや、あんたがあの老人の言ってた神ってやつか。教えてくれ……神ってのは何者なんだ?」


「神とは全てを持ち、全てを与えることができる者のことだ。」


「そうか……今回あんたは見事にそこの老人に復讐を、そして俺に死を与えたわけだ。」


「そうだ。」


「随分と険しい道だな……」


 そう言って王間は息を引きとった。

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