異世界転生の輪廻
「どうじゃった?神になって楽しかったかの?」
「まあ、楽しかったけど……最終的には神って大変だなって思ったよ。」
「うむ、その意見にはわしも同感じゃ。神というのは大変じゃ。力や知恵を持っていたところで神になれるとは限らんのじゃから。」
「そうだな。」
しっかりと皮肉を言われながらも、俺はそれを受け止めるしかなかった。
「まあ、神の大変さが"少しは"わかったところで、お主に朗報じゃ!」
「なんだ?」
「なんとお主は今度こそ本当の神になれるのじゃ!」
「そんなまさか……」
「そのまさかじゃ!だが、無理にとは言わん。お主も神の大変さを少しは理解しただろしな。だから、もう一度人間として最初の世界をやり直すこともできるんじゃ。」
「赤ちゃんからか?」
「いや、電車に飛び込んだ続きからじゃ。」
「でも俺は特急電車に轢かれたはずじゃ…?」
「いや、轢かれる前に後ろの人に手を引っ張られてお主はもともと助かっておったんじゃ。じゃが、その時に死んだという思い込みをしたせいで寝たきりらしい。」
衝撃的な事実に顔を顰める。
「結局、お主は自分の死も操れないただの人間じゃったということじゃ。」
散々皮肉を言われてきたが、この言葉にはさすがに少しムカついた。俺はさっきまでの無双状態の癖でこの爺さんに消えろと願った。
「え………?」
すると爺さんは本当に消えてしまった。
それから千年経った。俺は死ぬこともできないままただただ年老いていき、この何もない雲の上のような空間でただただひたすらに待っていた。
「ここは……どこだ?」
若い男がやってきて言った。
「これは死後の世界で神がなにか異世界に行く前にスキルや装備をくれるパターン?」
俺は言葉を返した。
「待ち侘びたぞ。先の世界でお主は死んだ。だが安心するが良い、わしはお主を異世界に転生させるためにここにいる。」
(あぁ、神の大変さがやっとわかったよ……)
「神っぽい爺さん!俺が転生するのは一体どんな異世界なんだ!!」
「今回の異世界は生まれて備わる"スキル"と呼ばれるものが人生を左右する異世界じゃ。そこには魔王と呼ばれる世界を滅ぼそうとする輩が存在する。そやつがいなくなればその異世界には永遠の平和が訪れるじゃろう。そして、それを為せるのはお主だけなんじゃ!」
「俺だけなのかよ、勇者とかはいないのか?」
「まあ、色々事情があるんじゃよ。」
(あと少しだ……)
「そうかい。それで俺にはどんなスキルが備わるんだ?」
「スキルが備わる前提か……まあ良い。お主に与えるスキルは"信仰心"じゃ。」
そして、俺は"信仰心"を付与した。
「スキル"信仰心"のスキル内容は、自らの神を信仰する力に比例して他者を強化できるというものじゃ!じゃが実は、今から行く世界には神様の概念がないのじゃ。だから、信仰心のスキルが使えんかもしれん。確認不足じゃった、本当にすまぬ……。」
「はあ!?それじゃ俺はスキルなしで生きていくってのか!?そんなの無理に決まってるだろ!どうにかしろよ!」
(やっと終われる……)
「それじゃあ、せめてもの償いとして生活に困らないように"神の知恵"と呼ばれる超人的な思考力を授けておく、それで良いじゃろう。」
そして、しっかりと結末に辿り着くように俺はその男に神の知恵も与えた。
「神の知恵か、まあ知恵があればなんとかなりそう……なのか?」
「もうすぐお主を"光が包んで"転生が始まる。とにかく今度こそ"人生"を楽しむんじゃぞ〜」
「あんた本当に神かよ…」
こうして俺はとても神と思えない酷い手続きのもと、その男を異世界に転生させた。そして男が行った後、俺は一人で呟いた。
「俺たちは"人間"だよ。」
ここまでお読みいただきありがとうございました!
これが一つ目のEルートのエンドです。違うルートはまだまだ続きますので引き続きご愛読いただけると幸いです!