世界の終わり
王間は俺のことをやばいと感じたのか、スキルである"波動"を全力で使い、守りに徹していた。スキル"波動"は指定した空間の一点から振動を起こし、その振動で物体を切断したり、霧散させたりすることができる。首が飛んだのと黒玉が消えたのはそのせいだ。そして今、王間はその"波動"を自分を起点に起こし、あらゆる攻撃を無効化しようとしているのだ。
(なんでそんなことが俺にわかるんだって?悪魔なんだから当然だろ!)
俺はこの世界に存在しない誰かに対してそう答えながら、王間の一生懸命な守りを"スキル解除"で悉く粉砕し、王間の心臓を奪って潰した。ちなみに"スキル解除"は今僕が考え、編み出した最強スキルだ。
「な、なんなんだ……お前は。」
王間は死んだ。
「あっけないな、あんなに強そうだったのに。やっぱ僕最強だな〜。」
次は観客だ。あいつらは生かしておけない。なぜなら生きてちゃいけないからだ。その至極真っ当な理由で俺は本日二度目の王間の部屋の窓破りを行い、闘技場の観客に言った。
「え〜、私はかみのてさき〜かみのてさき〜でございます。今から皆さんのことを殺そうと思いますので、皆様〜死なないように頑張ってください〜。」
そして俺は火の雨を降らせた。火の雨から逃げようとする観客たちにステップはまるで死の舞踏だった。
「いいダンスだね〜♪」
劇を見ているような感覚で観覧しているとついに一人が燃え上がった。
「あ、熱いぃ!誰か助けてくれぇ……」
一人に火がつくとそこからはドミノのようだった。火のついた者は助けを求めて近くの人に火を移し、その人がまた近くの人に火を移す。
「いやぁ〜さっき善人の村人たちを殺しちゃったからね〜、悪人も殺さないとフェアじゃないよね〜。」
善人と悪人と言ったが、その基準はもちろん俺にとって善人か悪人かだ。村人たちは俺を信仰していてくれた、だから善人。闘技場の観客たちは俺をイラつかせた、だから悪人。
「いや、待てよ。でもこのスキル至上主義の世界自体がムカつくな。なんでもスキルで片付けすぎなんだよなぁ……てことは、この世界は悪だ。んでもって悪の世界にいるってことは相対的に全員悪だよな!」
例えば、ある家に殺人犯が出てしまったとする。すると殺人を犯した人だけでなく、殺人を犯してない他の家族まで迫害をされる。つまり、この家は他の家と比べて相対的に悪になるわけだ。
「この世界もその家と同じだ。俺という別世界から来た人にとってこの悪い世界に住む奴は何をしていようが相対的に悪人になってしまうのだよ。って俺ナレーションと会話できてるね!さすが悪魔!!常識を〜ぶっ壊ーす!では、正義を執行しようか。」
火だるまになった観客たちは続々と燃え尽きて行った。そして、まだ火がついていた最後の一人が線香花火のように燃え尽きたのを見た後、俺はまたまた今考えた"集合"の能力でこの世界の人間全てをこの闘技場に集めた。もちろん、この闘技場にそんな人数が入るわけないので入らない分は捨てて(殺して)しまった。
「君たちは選ばれた人間だ!私の死の選別に耐えた素晴らしい運の持ち主だ、確率にして0.1%ほどだろう。おめでとう!そしてそんな君たちには今からプレゼントを贈ろうと思う!」
困惑に満ちた者たちにそう言い、俺はこの世界に来る前に神が言っていた魔王をこの闘技場に呼び寄せて戦わせようとした。
「こーい魔王!」
だが、魔王は来ない。
「あー、そういうことね。」
世界は滅びた。