白金の王子 4.
久々の投稿……遅れてすみません!
こんにちは、どうもセルヴィアです。
皆さん、私が今、どこにいると思いますか?
せ~のっ!
花街っ!
……はい、すみません。ハイになりすぎてました、謝罪します。
皆さんお分かりだと思うが、さっきも言った通り、ここは花街だ。
私がいつも暮らしている城から、1㎞ほどの場所にある、路地裏に隠された場所。
朝は眠り、夜は目覚めるこの危険地帯に、私は一人、城を抜け出しやってきた。
そう、一人である。
すごいよね、こんな所に私一人で来れたんだよ。いやー、意外と警備薄くってさぁ。少しだけ変装してたっていうのもある思うけど。もしかしたら私、スパイの才能あるかも?
いざとなれば、この才能を使って、セルヴィア死亡ルートを回避できるかもしれない。
真剣に考えてもいいのかもね。
それはともかく、私の目的は、高級娼館「フルール」の三姫と会うことだ。
テレーゼお母様は、この店の元娼婦だった。だから、ここに手がかりがあるかもしれない。
リスクは重々承知しているつもり。だけど、子供の好奇心は止められないのだ。
「こんばんは……私、セル……セレナっていうんですけど。三姫の皆さんと、合わせていただけませんか?」
フルールの店内に入り、受付のような人物にそういう。
「ごめんね、お嬢さん。紹介状がないと、うちの子たちには会えないんだよ」
彼女は、申し訳なさそうにしてそういう。
まぁ、そう言われるとは思っていた。
こちらとて何も準備せずに来たわけではない。だって、追い返されるだろうし。
「そうなんですね……あ、そうだ。
紹介状代わりと言いますか……『苺の花が、我が家に咲き誇りました』」
この花街の中で、この言葉が通じない店はない。
クライン家の者にしか伝わっていないこの言葉は、遊園地で言うフリーパスのようなものだ。
苺の花は元々クライン家の家紋で、領主一族だということを表している。
—―という情報をセバスから聞いた。
本当にクライン家様様だ。領主の直系に生まれてよかった。貴族万歳。
「—―セルヴィ……いえ、失礼しました、セレナ様。フルールへようこそ。歓迎いたします。
三姫に会いたいということですね。案内いたします」
私は領主の娘だ。機嫌を損ねてはまずいと思ったのだろう。焦った言うようにそう言った彼女は、思ったよりも早く案内してくれた。
そう言えば考えてなかったけど、お父様にバレたらヤバいかもね。まぁ、もうバレてるかもしれないけど、別にいっか。
三姫とは。娼館「フルール」の看板的存在である。花街のアイドルであり、女子の憧れの象徴だ。
ゲーム本編では名前しか出て来なかったが、このような場所でこそ、私が欲しい情報が手に入る――多分。
ただ、私にとっても驚きだったのが、彼女たちがかなりの子供好きだった、ということだ。
「セレナちゃん。やっぱり何でも似合うなぁ~。ね、ミリア?」
私を着せ替え人形にしているのは、三姫の一人、ローズさんだ。
様子を見ると、この娼館にいる子供は、彼女にとても可愛がられている。
「セレナちゃん、お菓子食べる?ここにあるやつ、ぜぇんぶ食べていいからね?」
ローズさんの質問を無視し、チョコレートを無理やり私の口に放り込んでくるのは、ミリアさん。こちらも三姫の一人である。
容赦なく発動されるお菓子攻撃は、私の喉に直撃し、ダメージがヤバい。えげつない。
「ほら二人。エレナちゃんが困ってるでしょう。そこらへんでやめてあげなさい」
そうやって二人を嗜めているのは、三姫の中では最年長のリーリエさんだ。
ミリアさんの壮絶なお菓子攻撃に対し、私の口にお水を運んでくれている。マジで天使。
「み、皆さんありがとうございまふ……」
まだ口の中に入っていたクッキーを咀嚼し、ごくりと飲み込む。
「私は、皆さんに聞きたいことがあってここに来ました」
ようやく本題に入り、私はそういう。
すると、姫たちは顔を見合わせ、にこりと笑った。
「うふふ、分かってるわよ、セレナちゃん?」
リーリエさんは、私の目を見ながら、わざとらしくそう言った。
「……テレーゼさん……そして、セルヴィス君のことについてだよね?」
その言葉に、私はこくりとうなずいた。
この人たちは、どこまで知っているのだろう。そう疑問に思いながら、三姫の言葉に耳を傾けた。
—―私がテレーゼさんに出会ったのは、私が15歳の頃。テレーゼさんはその頃三姫で、私は弟子のようなものだった。ローズやミリアと出会ったのも、その年だったわ。
テレーゼさんは、私たちにたくさんの技術を教えてくれた。舞踏や歌、時には貴族や商人のゴシップとかもね。本当に毎日、充実していた。
—―その数年後の話よ、テレーゼさんとラングラシュ公爵が出会ったとき。
ラングラシュ公爵が帰って数日後、私はテレーゼさんの異変に気付いた。で、判明したの。
テレーゼさんが、セルヴィス君を身籠っていることにね。
—―私たちはね、初めは他の男の子供だと思っていた。だけど、セルヴィス君が成長していくたびに、私達はこう思わずにはいられなかった。
ラングラシュ公爵の、子供だということに。
しんみりとした雰囲気になった。
三姫たちは、うつむき、暗い顔をしている。
「これが、セレナちゃんの求めている真実じゃないかな」
リーリエさんがそう言った。
……やはり私の仮説はあっていた。多分、この真実は偽造されているのだろう。
これがラングラシュ公爵家にバレれば、彼は利用されてしまうかもしれないから。
—―すべては、セルヴィスを守るためだった。
だけど。
闇に葬るべきではなかった。答えを探し出せてよかった。
私は。こう思わずにはいられなかった。
呼んでいただき、有り難うございました!
次回更新もがんばります!