白金の王子 ⒈
ブックマーク登録・評価有り難うございます!
【前回のあらすじ】
乙ゲーの中に転✫生したことに気付いたセルヴィアさん。
死亡フラグの継母と義弟(攻略対象)とエンカウント&大パニックです。
クライン男爵夫人、元高級娼婦のテレーゼお母様。そしてその息子、セルヴィス・クライン。
継母とその連れ子、そして義娘となる令嬢の初対面でございます。
そこに父の姿はなかったですが。今もお仕事をされていらっしゃるのでしょう。
「セルヴィアさん、よろしくお願いしますね」
テレーゼお母様の礼儀作法は、元々貴族と言われても違和感を感じないほど優雅だった。私は一安心する。元々彼女は平民なのだ。礼儀作法がなっていなければ社交界から追放されかねない。
――テレーゼお母様はひとまず大丈夫そうね。あとは……セルヴィスだわ。
メイン攻略対象の一人、セルヴィス・クライン。
彼は超美形。ものすごく美形。今は子供だから可愛さがあるけど、あと数年成長したらティーンエージャーの少女たちが揃って悲鳴を上げるわ。
あぁ、そうだわ。ゲームでは彼の過去について、多くは語っていなかった。
不確定要素が多いので、慎重に行きましょう。地雷を踏んだら大変よ。
そのセルヴィスは、柔らかく微笑んでいた——が、何故だか、私には悲しんでいるように感じた。
うーん、なんでだろうな。ニコニコ笑っているのに。むしろ私がそう感じてるのが変だとか?あれ?そういえば、相手の立場になって考える、ってどうやっていうんだっけ?確か、けい……なんとか。唸れ、私の前世の記憶!
「あの、セルヴィア……お姉様?」
「?何かしら?」
「角砂糖、もう十個ぐらい入れてますけど……」
「へ……ひゃあっ!」
やべぇです。無意識のうちに、紅茶へ角砂糖を入れすぎておりました!紅茶がどろっどろになってるんですが⁉ほら、私のバカ!変なこと考えてるから!
……ちなみにけい……なんちゃらですが、私は屈しました。私の負けです、ごめんなさい。
答えは傾聴力だったよ、結構簡単だったなぁ……。
「白金の王子」。それが、セルヴィス・クラインの呼び名である。
白金色の髪と瞳、輝かしい美貌。
幼い頃のセルヴィスも、その美しさに変わりはなかった。
代々外見が良く生まれ、昔から功績を挙げてきたクライン家。その息子であるセルヴィス……しかし、元娼婦の連れ子。その立場は、セルヴィスの我が儘に火をつけた。
「とりあえず、顔合わせはクリアしたのかしら……?」
クリアしてなかったら私は燃え尽きます、滅します。
私頑張ったよ、あの後も貴族令嬢の矜持を保ち続けたよ、けど紅茶の件は皆に笑われた。絶対後で仕返ししてやる。
まぁけど、結果的にいい方向に進んだのかな。
セルヴィアらしくでき……なかったな!結構失敗したわ!なんかこれでルート脱線しそうな気がする……そこ、自業自得とか言わないでっ!悲しくなるから!
だけど、あの輝かしい白金色の髪と瞳は眩しかった。物理的に光っているのかと思ったほどよ。私の外見は黒髪に若葉色の瞳だから、あまり珍しくないのよね。ジルヴェスターお父様にはあまり似ず、お母様に似ている。色彩も、顔立ちも。
……そういえば、お父様と会話してないな。
っていうか、お父様の話題や他の親族の話を、ほとんど聞いたことがない。
——まぁ、私自身ほとんど使用人と関りがないからなんだけれどね。
気になるなぁ、お父様について。ゲームでもそんなに出て来なかったんだよね。
セルヴィアやセルヴィスの父親なんだから、美形なんだろうなぁ。
そんなことを考えながら、私は深い眠りについた。
「……様、お嬢様!」
「ん~?何?」
「急ぎ、お伝えしたいことが」
約二時間後、私はクライン家の侍女に叩き起こされた。
彼女はかなり急いでいたようで、疲労が見える。
「どうしたの?そこまで急いで……」
「……隣国、お嬢様の御親族であるラングラシュ公爵が、事故でお亡くなりになりました。旦那様がお呼びです」
「……ふぇ?」
……へっ?お父様とのイベントですかい?
おそらく美形と思われるお父様との?
どうしよう、昼間の母子といい、逢魔が時のお父様と言い、今日は美形率高いですね。眼福を通り過ぎて眼痛……って、そんなことはどうでもいい。
ラングラシュ公爵って、あれでしょ。私の伯父さんでしょ。お父様のお兄さんだったはず。養子に入ったんだっけ。
おっかしいなぁ。第二子じゃなくて、本来の跡継ぎが養子に入ったの?あまりにも身分が違いすぎるから、あちら側がそう望んだとか?または資金援助のため?いや、それはないか。クライン家はお金たくさんあるし。
商人たちにある選択肢は、王家に睨まれるか、クライン家との取引で莫大な利益を得るか。彼らにとっては究極の選択肢なのだが、後者を選ぶ者の方が圧倒的に多い。
じゃあ、なんだろうなぁ。特に理由はなかった?
……わかんないことを今考えてもしょうがない。お父様が帰ってきたんだから、早くご挨拶しなくては。
私は侍女に着替えを命じ、疑問に蓋をした。
—―後に、私はこの事実を知ることになる。
面白いな、と思ってくれたらブックマーク登録や評価をポチポチして頂いたり、感想を送ってくださるとうれしいです(ただし感想についてはネガティブなものは無しでお願いします……)!