プロローグ
加筆修正しました。
ある日セルヴィアは思い出した。
ここは、乙女ゲームの世界であると。
そして自分が——
「ゲーム開始数年前に死ぬ、サブキャラだとぉ⁉」
ふざけんなと言いたくなる立場に転生した、私、セルヴィア・クライン。
この状況に眩暈がし、無言でベッドに突っ伏した。
私の心中とは裏腹に、空の色は眩しいほどに青い。
ねぇ、酷くない?転生したら私、死亡フラグ満載の男爵令嬢でしたよ?
前世のことはほとんど覚えてないけど、一度死んであと3年後に死ぬサブキャラでしたよ?
しかも私、ゲームでは名前しか出て来ないけど結構重要で、死なないとお話進まないってどーゆーことですか、製作者⁉
ふざっけんな!一般的には、裕福で不便しないし社交界にもあんまり顔出さなくていい男爵令嬢最高!ってなるんじゃないの⁉
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……。そうだった、セルヴィアってあんまり体丈夫じゃないんだった……」
落ち着け私。今からこんな状況じゃすぐ死ぬぞ?いいのか、美形の弟を見なくて?
それはダメでしょ、私。オタクの私が黙ってないわよ。
さて、まず状況整理。
私が転生したセルヴィア・クラインの実家は、代々王家に仕えてきた由緒正しき男爵家。元々は侯爵家だったのだけど、嫁いできた王女様がやらかして一気に転落。それからは私の父、ジルヴェスター・クライン男爵がこの地を治め、王国一平和かつ、進歩した領地である。
王家からあまりよく思われていないのにもかかわらず、栄えた都市であるクライン男爵領。それは先代たちの努力の賜物で、中でも優秀な人材を多く輩出したことから、クライン男爵家は一部から「ゴールドハンター」と呼ばれる。私から言わせてみれば、もっとましな二つ名無かったのかなぁ、と思うのだけど、そこは突っ込まない。世には口出ししてはならないことは多いのだ。
そしてセルヴィアについてだが、さっき言った通り、あと三年で死ぬサブキャラである。母は病気で亡くなっており、恐らくそろそろ、継母と義弟が家にやってくる時期だろう。
一部の攻略対象のルートに於いてかなり重要なので、最早メインキャラでいいのではと思うのだが、それでもサブキャラ……である。
確か、攻略対象は7人で、セルヴィアの弟、メイン攻略対象のセルヴィスが居たはずだ。他にも、隣国の第一王子だとか、獣人族の次期頭首だとか、「平民の特別な少女が、高貴な男性と恋愛をする」というのがコンセプトだったはず。
このゲームの攻略対象はそれぞれ、女性に対してトラウマを抱えている。
それは、セルヴィス然り、他の攻略対象然りで、姉だったり婚約者だったり……だ。
幸せな終わりに導くためには、その心をどれだけ癒すことができるか。
だから、セルヴィアの死はセルヴィスルートで重要なのである。
「必要なのは、私がどれだけセルヴィスをセルヴィアに依存させないようにするか。
……どれだけ愛してあげられるか」
『はぁ?お前、誰に対してものを言っている?』
『お姉様は亡くなってしまうし、父母は愛してくれなかった』
ゲーム内でのセルヴィスは、家族の愛情に飢えた我が儘王子。
父や母には愛されず、唯一の「家族」だった姉は早逝。
全ての言動は、そのトラウマからだった。
可哀想な、我が儘王子。それがセルヴィス・クラインである。
「救ってあげられる……かな。やる価値は……ある、よね」
今決めた。転生して初日、クライン家の中を取り持つことを覚悟した。
転生したオタクですが、とりあえず義弟の幸せを願い、オタクなりに頑張ってやろうと思います。
ついでにヒロイン様、私の死亡エンドを回避して頂けませんかよろしくお願いいたしますです。
何故にこんなことに?
私は困惑していた。
昨日、自分が転生していたことに気付き、色々と頭を使った。そのあと疲れ果てて寝た。以上、転生初日の出来事。
問題、転生二日目にして死亡フラグとの遭遇イベントが起きることなんてある?
ないよね、ねぇ?ひどっ、製作者ひどっ!
私が悪いわけないよね、私豪運だよね、そう信じたい!
……げふんげふん、失礼いたしました。
ご報告、継母、テレーゼ様と息子のセルヴィスがクライン男爵邸にやってきました。
それを聞いた時、飲んでいた紅茶を思いっきり噴き出して、卒倒しそうになりましたよ、えぇ!
誰か私に、休暇をくださいお願いします……(切実)!
不自然な表現や文末は、わざとやってることが多いのでよろしくお願いします。
ただ、漢字の間違いの時は報告をお願いしたいです。本来の読み方と違う時はルビを振るので。