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僕は魔王の寵愛を受けて復讐する  作者: 神尾瀬 紫
5/7

ーーー彼らは

こんにちは

神尾瀬紫です


今回は短編の閑話の部分です

元の世界で残された者たちは何をしているのか、ご覧ください

 

 その日は朝から学校中がそわそわしていた。

 裏にはパトカーが停まり、職員室には警察官が来て何やら教師たちと話をしている。

 何も後ろ暗いことがなければ、パトカーや警察官のいる非日常にワクワクしてしまっても仕方がない。特に男子生徒はスマホで写真を撮ったり職員室を覗きに行ったり、終始落ち着きがなかった。

 その中で、ある教室の隅で纏まって話している男子生徒が三人いた。

「なんだよあれ。」

 菱沼が腕を組んで肩を揺らしながら、小さな声で訊ねる。「知るかよ。」

 ズボンの両ポケットに手を突っ込んで、せわしなく目を動かしながら上岸が答える。

「ばれたのかな。」

 下唇を指先でいじりながら林がオロオロとつぶやく。

「バカ。そんなことあるか。アレは消したんだろ?俺達が昨日あいつと一緒だった証拠はねぇんだよ。」

 菱沼がさらに小さい声で、しかし強く言い返す。

 そう。写真も動画も消した。

 あいつに関わる記録はみんな消した。

 クラスの何人かはまだ持ってるかもしれないが、そんなこと知ったことか。

 林がブルブルと頭を振る。

 あいつが川に入って足を掬われ水中に沈んだ。

 その直前、彼を見た。

 怯えた顔で、彼を振り返った瞬間、川の流れに足を取られて沈んだ。

 バシャバシャと流されながらもがく腕。

 三人はすぐにその場から逃げ出した。

 何も見てない何もしてないあそこにはいなかった。

 そして奪ったあいつのスマホを持ったままだと気付く。

 このままではバレてしまう。

 咄嗟に川に向かってスマホを投げた。

 その投げる動作をするために振り返った時、もう藻掻いて水面を叩く腕は見えなかった。

 流されたのか、沈んだのか。

 三人は足を止め、じっと川面を見つめる。

 顔を出すな。

 沈んでいろ。

 そうすれば今この時の証人はいない。

 彼らは無言で見つめ合い、頷く。

 体が震える。足がもたつく。

 それでも走って走って走って・・・

 商店街の端にあるコンビニの脇で、車座になった。

 スマホの画像や動画を消す。

 SNSの自分達が送ったメッセージを消す。

 やつのスマホには残ってるが、水没して壊れたし流されたから見つからない。

 きっと見つからない。

 

 そんな三人の元に、廊下から戻ってきた一人の男子が駆け寄った。

「お前ら何やった⁉」

 小さな声なのに怒鳴るようなニュアンスで、三人の中に首を突っ込む。

 その慌てた様子にお互いの目を見合う。

「何もしてねぇよ。なんだよあの警察は。」

「喜多川が帰ってないらしい。」

 ビシッと音がしそうなほど三人が固まる。

 なんとなく嫌な予感があって職員室を探ってきた男子生徒、木次は顔をしかめた。

 木次は傍観者だった。

 ただこの教室の中で起こっていたこと、外で起こっていたことを知っていただけだ。

 彼らのように積極的にいじめはしない。でも止めたりしない。

 枠の外から笑って見ている側だった。

 だから登校して警察が来ていることを知って、教室の中でまとまる主犯格に嫌な予感がした。

 木次は傍観者だ。そして事なかれ主義だ。何事にも積極的に参加はしないし、笑って見ているタイプだ。

 責任は取りたくないから。知らないふりをする。

 木次がスマホを取り出す。

 彼が様々なデータを消去するのを、三人は黙って見ていた。

 その時、クラスで作ってあるグループチャットがあちらこちらで着信した。

『喜多川関連のデータ消せ。警察が教室に行く。このグループも消せ』

 それは担任からだった。

 

 

 

 

お読み下さりありがとうございます


次回は優豪が現在いる魔族達の世界のお話です

よろしければまたよろしくお願いします

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