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第2話 それは神話の再現、はたまた終わった悲劇


 あー、一応説明の回なのですが、頑張ってもこれでした。

 更に、自分なりにこのまま進めようとしたのですが、自分には無理でした。

 その為、申し訳ないのですが、一章消します。


 あっ、石投げないで!投げないで!


 ………と言う訳でこれを投稿した後削除します。あっ閑話の方も色々変えるかもしれません。

 テキトーな作者ですみません。

 今までの一章とは全然違う話を進ませていくと思いますのでこれからも何卒宜しくお願い致します。

 


 男にとって、その目の前の光景は自らの常識とは明らかに外れていた。

 

 「ほらほら!もっとしゃんとしなさいよ!この程度、私達をこれまで放っていたんだから、これくらいの攻撃。簡単に受け止めてみなさいよ!ジークゥ!」


 黄金の鎧を着た人間の少女が振るう剣の一振りで、男の視界にあった半分の『魔獣』と『魔物』の連合軍がその余波により吹き飛ばされる。

 男の常識では、魔獣は魔王だけが作れる眷属で只の人間を100人を集めても勝てない様な化け物だし、魔物は魔獣よりも劣るとは言え、人間では簡単に倒せない物だ。



 その魔獣や魔物の連合軍。それが弱い訳ではない。それは暴力の塊だ。量と質どちらも重ね合わせた主の意思に従う災害の具現。

 それは小国ならば、たった一夜にして滅ぼしてしまう程の力を持って目の前の青年に襲い掛かっている最中だった。

 


 だが、その様な無双の軍も目の前で、蹴鞠の様に吹き飛ばされた。

 それを見ていた男は、2、3回目を疑った。擦ってみたし、何なら自分の商会でここに来ることになった原因となった人物の提案で作った目薬も差してみた後、二度見したが、その様な薬でもキメた浮浪者が見る世界の様な光景は全く変わらなかった。


 けれど、それを行った彼女はそのような凡人には出来ない英雄の偉業をなした事などと言う事は考えていないだろう。何故ならそれは余波であり、巻き込んだけなのだから。

 その衝撃の大半はその連合軍の前に立っていた銀髪の青年に向けられていた。

 先程から語るにその威力は凄まじく、その青年も先程の魔獣達の二の舞いに陥る事は想像に難くない。



 だが、そのような最悪の想像等は所詮妄想だと言う様に、青年は両足を少し開いたまま指先を開き彼女の剣閃の進路上に簡単に、まるで当然の様に置いた。





 「いや、私はお前たちを知らないのだが、それよりもここから離れてくれ近所迷惑なんだ」





 結果として、青年は極雷の様な一撃を意にも介さず、その剣先をも人差し指と中指の二本で止めたまま余裕綽々と言った様で言葉を煽る。


 それを見ていた男は、死んだような目になりながらも『あ、これ今日死ぬんだ』なんて少し達観しながらそんな怒らせる様な言葉を宣う青年の後ろに立ちながら見続ける。

 何故なら、今この場で男にとって一番安全なのは男の後ろだからだ。


 その衝撃のスケールの大きさに驚く暇もなく新たな衝撃(常識の壊れる音)が男を襲う。


 「そうだ。そうだとも。我々2人がどれだけ思ってきたか………それを知らん?忘れただと!?ならば、教えてやろう。

 ―――文字道理、お前の体になぁ!」

 

 そう叫ぶと、先程の少女の反対にいた銀髪碧眼の美女が手に紫の握り拳程の大きさの宝石を付けた銀の杖を持ちながら宙に浮かぶ。

 だが、男にとってはその女の美貌に見とれるよりも先にその気配に圧倒される。その気配は種族的に只の人間である男にとっては、禍々しく暗い気配であり、整った美貌も相まって男の恐怖を掻き立てていた。


 けれど、宙に浮いた女の周りには、気配の禍々しさと反比例された様な神々しい銀色のオーラが天女の羽衣のように纏りついている。

 その幻想的な光景に、先程までその姿に恐怖しか抱か無かった男でも、図らずも見とれてしまう。


 「待て。魔王よ。君は少し勘違いしている。私達は、今君達と争う予定は――――

 「あんたが知らなくても、こっちにはあんのよ!」


 だが、そのような光景にも関わらず、青年が止めようと口を開くが、それを邪魔するかのように黄金の少女の剣先を止められたままながらも蹴り飛ばされた事で邪魔が入る。


 そして、銀の女の詠唱が始まる。 


 「『深淵の魔よ、我が杖に宿り、光を超えて、その闇を放出せよ』」


 完全な詠唱。詠唱破棄も無詠唱もせず、魔力を高め続ける。それは詠唱を進まれば進まる程周りの物をその莫大な魔力で威圧して来る。


 それが意味するのは魔道士の殺意。全てを巻き込んでも殺す、と言う意思と決意を感じ取らせ、戦場で生きるものならば直ぐ様全力で逃げるであろう殺気を周囲にいる者達全てに感じさせた。


 そして、詠唱が最後の言葉を以て完成する。



 「『カオス・レーザー』」



 極限まで高められた魔力が杖の先に集まり、圧縮し、そして闇の線となり目の前の物を文字通り消滅した。

 戦場にあった物の中。その線の範囲にあった物は何もかも無くなってしまう。


 先程山のように積まれていた魔物の死体も全て、元から無かったかのように消えてさっぱり無くなり、周りの岩石や、少しだけ広がっていた丈の短い草花までもその場にあった何もかもが消えそこに残っている物は何も無い。


 と、思えた。


 だが、青年は無傷でその場に立っていた。いや、無傷というよりは弾き飛ばしたというのか、その青年の手には先程までには確実に無かった身の丈以上は優に有る太刀が収まっている。



 それで、どうやってあの全てを消失させる線としか言えない物を弾いたのだろうか?



 いや、弾いたと言うよりも、女が放った全てを消滅させる魔法は青年の所から裂かれたかのように、青年と男の背後には消えなかったものが残っている。

 相対的に、青年と男の背後以外には何も無いと言う事になるが。


 「………危ないな。初対面の人間に対してこの様な攻撃魔法を打つとは。常識外れにも程がある」


 そして、無事なのは青年の後ろだと言うと、ならば彼の前にいた黄金の少女はどうなったのか?

 もしかしたら、魔物の死体や草花と同じようにこの世から消失してしまったのではないのか。


 しかし、幸いにもその疑問に対する答えは直ぐに出てきた。


 「ちょっと、魔王!あんた私まで狙ってたでしょう!」

 「さあ、何の事だかね」

 「………あんた、せめて少しは隠しなさいよ!」


 ギリギリ避けたのか、銀の女の下に黄金の少女はいた。そして、女に対して文句をぶつける。


 そして、その様な神話の再現の様な光景を見ていた男。アール商会会長アール・デモ・ナルはこう思っていた。


 (………何で、こうなったんだろうか)


 そんな風にアールが考えていると。ふと、自分を結果的には救った青年がこちらに太刀を左手で持ち、剣先を少女達に向けたまま首と肩を少し動かしてこちらに話しかけてくる。


 「ナル。大丈夫か?」

 「大丈夫なわけあると思っているんですか!?どこが?逆に、どこが?ねえどこが大丈夫に見えるんですか?あぁん?」

 「大丈夫そうだな」

 「どこがなんですかーーー!」


 そう言いながら、こちらに首を向けてきた青年に、アールは暴言を吐く。

 だが、それも関係無いかと首は前の敵へと向き直る青年の姿を見ると、その態度を見たアールは頭に血管が浮き上げながら今度は頭を搔きむしる。


 すると、青年は今度はこちらを一瞥することも無く一言。


 「そんなに頭を抱えていたら禿げるぞ」


 その言葉と同時に、ブチッ、と何かが切れた音が、男の耳に入って来た。だが、それすらも、もういいやとばかりに男は頭を振ると、何故こうなったのかと言う回想を始めた。



 ――――――――――――――――

 

 

 「ピクニックに行くぞ」

 「はぁ」


 それがやって来たのは、商会の資料整理をしている時だった。

 目の前にいるのは、我が商会の救世主とも言える組織『王国』の最高幹部の青年である。

 私達の商会であるアール商会は、私が商会長になる前は王国でも1、2を争う大商会だった。

 

 だが、30年前に起きた王国の飢饉により、先代が大損害を被り、今より少し前までは下降を続ける弱小商会だった。

 けれどある日この青年と上司であると言う少女がやって来て資金提供と世にも珍しい技術を齎してくれた。

 ………秘密結社『王国』と名乗っていたが、その時の私はその言葉を余り信用していなかった。

 と言うよりも、名前だけが世に大きく知られているが『王国』と言うのは都市伝説の様な物である。懸賞金も掛けられているが、基本的にお母さんが子供に『夜は早く寝ないと、『王国』に連れ去られちゃうわよ~』って言うぐらいの信憑性である。

 しかも偶に『王国』の名を名乗ってテロをする闇組織もあるので、急に私は『王国』の人間です。と言われても信じられるわけが無いと言うのは分かるだろう。


 だが、そんな怪しい人間でもその時の私は悪魔でも何でも良いから助けてもらいたかった。


 けど、その選択は間違いではなかった。

 彼等が私達に齎した物は素晴らしい物だった。

 資金、商品、人材、商品供給ライン、貴族とのコネ等々。彼等が齎した物は、潰れかけていた商会を一気に大商会に返り咲かせる物だった。


 それに対しての彼等が要求した物は少なかった。

 単純に組織への資金援助、食料品、商品の提供、私の改造である。

 ………最初の二つは良く分かった。彼等にとって私の商会への投資は恒常的に資金と大商会にすることで組織の影響力を強める事だったのだろう


 けど、最後の何?


 青年に聞いた答えとして帰って来たのは、『お前は変態だから強くなれる。取り敢えず固有魔法には目覚めるだろうし』何だよその答え。

 少女に聞いた答えは『君は、只の人間ではないと思うよ。何せジークが見つけて来たからね。しかも、僕が引くほどの変態だし、君』と言う私が変態だと言う答えだった。

 何を言っているのだろうか。私は、見た目も性癖も普通だ。


 よく見ろ。私の同僚と言って紹介して来た奴等の方がヤバいだろうに。

 1人は、他人に尽くすことに興奮を覚える冥土(誤字に非ず)だし、1人は、豚骨ラーメン狂いのオーク。

 合わせて4人いるが、まともな奴がもう一人の聖女と合わせて二人しかいない。


 だが、全員私の事を変態と呼ぶ。心外である。ただ、私はお金が好きなだけなのに。


 何故だ。やはり真の変態は自分の事が変態なのか、わからないと言うのは本当のようだ。

 やはり奴等の方が変態であろう。


 「聞いているか?」

 「あ、すみません。えーっとピクニックでしたよね。わかってます?今、勇魔大戦中なんですよ?」

 「ああ、知っているとも」


 勇魔大戦。それはこの世界に暮らすものなら誰だって知っている半ば現象じみた戦争の事を指す。

 それは、100年周期で生まれる魔王と勇者の戦いである。

 基本的に勇者は只人。魔王は魔族から生まれる。

 今回の勇魔大戦では、孤児だった少女から勇者。魔族の王族の落とし胤から魔王が生まれたみたいだ。

 通常の勇魔大戦ならば、敵対している只人族と魔族の代理戦争代わりに、魔王と勇者闘いその勝敗で諸々の権利問題や、土地問題を決めるだけだったのだが。


 今回の勇魔大戦では、勝手が違う。勇者、魔王両方が歴代最高峰だったのだ。

 勇者は、攻撃魔法の才は無かったが、強化魔法と剣の才がとびぬけて優れており、基本となる身体能力も高かったが、強化魔法によりその力は倍以上に膨れ上がり、その剣の才は幼少の頃に王国の最高戦力である『剣聖』に弟子入りし経った5年で、『もう教えることは何も無い』と言わせた程。



 そして、そんな勇者の事を人々は『歴代最強の勇者』と呼び称えた。



 魔王は逆に魔法全般がずば抜けており、特に闇魔法は幼少期に極まったと言われ、それに魔国の最高戦力と謳われた『魔議会』の老師から多種多様な魔法を教えられたすえ。国内外問わず、『最強の魔法使い』と呼ばれる技量を身に付けた。



 それを見た群衆は『歴代最強の魔王』と呼び称えた。



 そして、それを見た両方の国の元首はこう思った。

 『今回の勇者/魔王使えば、魔国/王国を倒せるのではないか?』

 王国も、魔国も、共にどちらもが敵対国として最大戦力を手に入れた場合、起こる事は必然的に明らかである。


 それによって、魔国VS王国&王国の同盟国の全面戦争と言う歴史上にも見ない戦争が起こったのだ。


 その為、王国と魔国は戦争中であり、それに先程も言った同盟国や他の国も巻き込まれていて混戦状態で、こんな時にピクニックに行っても安全な場所なんてそれこそ魔道都市や、龍神国などの戦争に参加していない中立の国ぐらいしかない。


 ………なるほど。そこに行くのか。ならば、話は速い。普通ピクニックは平和な所に行くものだ。何を私は考えていたのか。まあ、取り敢えず、仕事が少し残っているので、ソファにでも座っ――――


 「因みに場所は、キョウカイ平原だ」

 「――――馬鹿なんですか?」

 

 開催場所を聞いた時私は目の前の人物の正気を疑った。


 キョウカイ平原。その名は、今最もホット(物理)な場所。王国と魔国の中間地点に存在する平原であり、今思いっ切り戦争をやっている場所。そんな場所にピクニック?アホか。体吹っ飛ぶわ。貴方達が大丈夫でも私は無理です。

 ………まあ、意図的に狙われないなら避けれると思いますけど。


 「そんな場所に行っていられるか!私は金貨ちゃんの元に帰らせてもら――――

 「すまんな。ボスの命令なんだ」

 「―――ぐほっ!」

 

 そうして逃げようとした私の首に彼の手刀が入り視界は暗転した。



◇◆◇



 気絶から復活した後、私はキョウカイ平原の大きな木の下にいた。 


 そして、そこには私を運んできただろう銀髪の青年と、その上司の金髪少女。そして青色の髪をした冥土。

 ハハハ、下手したら死んだわ、私。まあ、流石に魔王軍と勇者軍がドンパチやっている様な所にはいないけれど。



 『奴らが来るぞ!小隊!投石用意!』

 『行くぞ!誇り高き我等が王に、勝利を捧げるのだ!』

 『『『ウオオオオオオ!!!』』』



 あー、聞こえない。聞こえませんよー。私には、もう金貨ちゃんと、白金貨くんと銀貨さんと、銅貨たんの声しか聞こえません。


 「ほら、速く食材を出しなよ。はーやーく」

 「早くするしなさい変態商人。お嬢様が言ってらっしゃるでしょう!」

 「黙れ。狂人冥土。お前如きに渡す食材は無い」



  『そろそろ蹴りを付けましょう?魔王オゥ!』

  


 私は、そう言われながらも固有魔法を使い、命令された通りに銀貨ちゃんを取り出しそれを適当な食材へと変え冥土に渡す。

 え~と、確かここは王国の領地側だから、王国の市場で今日の安値の食材は、ある程度あるから4人分は優に用意出来る。


 ………何か音が聞こえる。だが、幻聴だろう。幻聴だ。幻聴でしかない。異論は認めん。私の中では私が法だ。


 それを少し不満げな顔をしながらも冥土は受け取る。


 「全く、何であなたのような変態が一家に一台は欲しいような能力を持っているんでしょう?

 もっと普通の人が持っていないと世界の損失でしょうに」

 「そっちの方が変態ですよ。何故、自分が健常者だと思っているんです?

 あ、もしかして。自覚がおわりでない?」


あ?

は?


 「………肉が多いな。バーベキューセットは持って来たので、大体はサンドイッチにして残りは焼きますか」

 「そうだね。じゃあ、僕は焼くからジークはサンドイッチ担当で」

 「分かりました。ボス」



  『そうだな。そろそろ決着と行こうか。来いッ!勇者アァ!』



 何を言っているのだろうか?変態の度合いは冥土の方が強いだろうに。

 衝撃で地面が揺れたように感じるが、そんな事は無いだろう。そうきっと。希望を捨ててはいけないのだ。もしかしたら魔物の大移動かもしれない。


 「は?本当の事でしょう?」

 「ん?そっちこそ、他人に仕えることに興奮するって奴のどこが健常者なんですか~?理由が聞きたいな〜?」


 私は、目の前の冥土と額を突き合わせてメンチを切る。


 「はいはい。喧嘩もそろそろにして、ほらサンドイッチ作ったから食べようよ」

 「――――お嬢様が自らの手でお作りになったサンドイッチですって!?」

 「いや、ジークだけど」

 「なん……ですって……!」


 そこには五体投地で這いつくばる。メイド(変態)がいた。

 ハハハハハ!俺を変態だと宣うからだ。いい気味である。

 

 「あ、そうだ。サンドイッチに今焼いてる肉を入れてみる?」

 「ああ、良いですね。じゃあ、早速」



  『勇者アアアァァァァ!!!』

  『魔王ウウウゥゥゥゥ!!!』



 さっきとは比べ物にならない位の衝撃が響いた。

 それによって、


 「お?」

 「あ!」

 「え?」

 「………あ?」


 焼いていた肉がバーベキューセットごと吹き飛んだ。

 ガゴッガシャン!と、美味しそうに焼けていた肉は草原の上に落ち、土だらけとなった。

 ………食べられないことは無い。だが、普通に考えて土だらけになった肉を食べるという考えは無いだろう。


 「―――ジーク」

 「………はい」


 そんな言葉が私の後ろから聞こえたと思ったら、とんでもない量の魔力が感じられた。

 あ、これ怒ってますね。私、ここで死ぬんでしょうか?


 「文句言ってきて、商人と一緒に」

 「はっ」

 「え?」


 片膝を付いてそれを承諾する彼と違って、私は何故?と言った風に間抜け面を晒すことしかできなかった。

 あ、待って下さい。自分で行きますから、だからちょっとあの、手刀構えながらこっちににじり寄って来ないで!



 ◇◆◇


 そうして彼に、半ば強引に連れていかれた結果がこれである。

 幻聴だ。幻聴だと現実逃避していた結果はやはり、魔王と勇者のタイマンだった。

 更に、暴れまわっていた勇者と魔王相手に彼がこう言った。


 『そこの二人。すまないが、近所迷惑なんだ。こう暴れられるとおちおちピクニックもできないんだ。自重してくれ』


 『え?あ、あんた!ジーク!』

 『ふぇ?え、ジ、ジークなのか!?久しぶりだな!』


 何故か、勇者と魔王は満面の笑みで彼と旧知の中の様に戦闘行為を辞めて、近づいてきた。

 それに対して、彼は何時もの仏教面で、



 『すまない。君達を私は知らないのだが、何処かで会ったのだろうか?』


 そんな言葉を宣った。

 その言葉は、まるで火に油を注ぐが如く、彼女達に変化を与えた。

 まあ、要するに、

 

 『あ?』

 『ほう?』


 ぶち切れていた。


 『まあ、取り敢えずこの場所からどい――――


 『死ね!』

 『殺す!』


 こうして、戦いの火蓋は切って落とされてしまった。



 ◇◆◇



 「………待て。少し話し合おう。君たちは『王の右目』としての私が望みだろう?私の顔は国家元首には知られているからな。アレか。懸賞金か?確かに私の首には莫大な懸賞金が掛けられているが、金が欲しいので有れば幾らでも払おう。我々としてはここから離れてくれれば何も言わないのだ。それに、一様我々は初対面だ。段階を踏んでから殺し合うのがマナーだろう。

 ――――取り敢えず自己紹介から始めてみよう」

 「゛自己紹介゛?聞いた?魔王聞いたわよね?」

 「ああ、じゃあ、゛自己紹介゛してやろうではないか」


 勇者と魔王は、示し合わせたかのように同時に笑うと答える。


 「「君/あんたをぶっ飛ばした後でな/でね!!!」」


 それを見ながら青年は妙に残念そうに失敗したという態度で、私の方に向き直すと、


 「………交渉決裂のようだな」

 「いや、さっきの何処が交渉だったんですか!?――ヒャッ!」


 そう言った瞬間私の右頬を魔王が打った魔法が頬を掠めた。怖い。私が話した途端に打ってきやがったよあの人。さっきから、目を見開いてこっちを凝視している。

 あ、これあんまり他人が関わってはいけない奴だ。

 

 「………自衛位なら、出来るな?」


 え?そう思った瞬間。目の前の彼は、魔王と勇者の魔法と斬撃の弾幕の中に嗤いながら歩を進めた。


 「………勇者と魔王に恨まれる覚えなど一切無い。だが、武力行使がお好みというなら仕方ない。そう、仕方ない。

 ――――――――ある程度痛めつけるしかあるまいなぁ!」


 腰からもう一度、先程は自衛の為に使った太刀を今度は相手を打ち倒すために引き抜く。

 その白銀の刃は相手の勇者が放つ斬撃を容易く迎撃した。


 「………ねえ、そのカタナ?少し長すぎない?そんな物使えるの?」

 「大丈夫だ。これは伸縮自在だからな」

 「伸縮自在?」


 確かに、その太刀は普通なら大きすぎて使えない様な長さであり、持っている者が倒れてしまう程の重量があるだろうな代物だった。常人では鞘から抜く事すら難しい物である。  

 青年の背丈は180㎝程であり、引き抜いた太刀は、その背丈の半分以上はあるような長さを誇っていた。


 だが、勇者がその大きさに疑問を唱えた瞬間に、その太刀は小刀程の大きさに変わり、そのまま流れるように彼は勇者の首を狙った。


 「うわっ!危ないわね!普通そんな殺意ある能力幼馴染に使う!?」

 「………幼馴染?そんな物は私にいないはずだ」


何なのだ、と青年は口を開きながらも、攻撃の手を休めず、もう一度目の前の少女の首を斬り捨てようと剣を振るおうとする。


 「おっと、私の事を無視して勇者と会話なんてひどいじゃないか!」

 「無視したつもりはなかったのだがね」


だが、それは叶わず、横槍によって強引に止められる。


 そうして、青年は横から魔王が放った黒い色をした魔力の球を、もう一度先程の長さまで伸ばした太刀で切り裂き防御する。


 そしてそのままの勢いで彼は魔王の前に躍り出ると、その凶刃で斜めに上から切り裂こうと剣を延ばす。

――――だが、それを許す勇者では無い。


 「よそ見は厳禁よ!」

 「………それは、失敬。もとはと言えば会話なんぞに嫉妬して襲い掛かって来た魔王殿が悪いと思うのだが」

 「ハッ、そんな心にも残っていない事を言うなよ。ジーク」


 咄嗟に勇者が魔王をカバーリングし、凶刃から魔王の肉体を守る。

 そのまま魔王は勇者の肩越しに、先ほどとは違う魔法による弾幕によって彼をその場から離れさせようとする。


 だが、その魔王が放った弾幕も、簡単に切り裂き次の攻防へと繋げる。そして続いたその斬撃は先ほどの物よりも勢いを乗せて加速しながら勇者を狙う。


 「いい加減思い出しなさいよ!」

 

 勇者は、その斬撃に激情と刺突をもって応える。けれど、その様な分かりやすい刺突では当たるはずも無く、加速された剣先によって簡単に弾かれる。


 「なっ!――――――――かはっ!」

 「少し、静かにしておくと良い」


 激情により攻撃を単調にした代償は、勇者本人へと支払われる事になった。

 弾かれた後、彼の腹部への強烈な蹴りにより、空中戦へと移行していたことから勇者は戦闘の余波によって、草木が吹き飛ばされ衝撃を吸収する物が何も無い地面へと叩きつけられる事になった。


 「ッ!、勇者!」

 「………そちらこそ、余所見何て酷いじゃないか!やっと、楽しくなって来たと言うのに!」


今度は、笑いながら、少し残念そうに魔王と呼ばれた少女を見る。


 「我は、少し辛くなってきたよ。そろそろ、この無駄な戦いも終わりにしたいのだがね」


それに対して、負けじと苦笑しながらも少し嫌みな言い方ながら少女は青年へと言葉を紡ぐ。


 「それは、残念だ。………私は永遠に続けたいと思っているというのに!」

 

 けれど、青年はもう一度満面の笑みを浮かべる。それは、最初彼女達が浮かべた笑顔とは百八十度丸っきり違う邪悪な笑顔だった。

 その笑みの意味は、久しぶりに自分の力を発揮できる者が現れた事に対してか、それともはたまた違った意味なのか。


 そんな彼の斬撃を魔王は手に持った銀の杖で受け止める。いや、受け止めると言うよりも、勢いを流したというべきか、もし受けることを選択していたのならばその銀の杖は簡単に切り飛ばされそのまま受けた魔王ごと切り裂いていただろう。

 だが、勢いを流すことに成功したとしても全てを受け流すことには失敗したようだ。


 その衝撃によって魔王は勇者と同じ様な結果を辿ることになった。

いや、肉体的には勇者に劣る魔王の方がよっぽど悪い結果だろう。


 吹き飛ばされて地面に仰向けのままに叩き付けられた。

 ズンッ、と重い音が地面に落とされた衝撃によって伝わり大地が揺れる。

 

 「――――クホッ!」


 その衝撃により、魔王は血を吐いた。真っ赤な血が一瞬空に浮いたかと思うと、血の雨として彼女の顔に降り注ぐ。

 彼女の白い肌と黒の衣装は文字道理彼女の血によって血化粧に染まる。


 そんな彼女を、宙に浮いたまま彼は先ほどとは違った冷めた目を向け、見下ろしたまま言う。


 「もう少し耐えられると思ったが………全くとんだ期待外れだ。

 まあ、こんなぐらいで良いだろう。これで煩いのも止んだ。さて、アール帰るぞ」

 「あ、はい分かりまし――――

 「まあ、少し、待ちたまえよ。『カース・バインド』」

 

 そんな風に話しながら帰ろうとした彼と、私の体を縛ったのは黒い魔力によって作られた縄であった。

 魔王が最後に唱えた捕縛魔法であり、私でも簡単に外せるような魔法だったがそれには一瞬の時間が必要であり、魔王が狙ったのはそれだった。


 私達が動けない一瞬こそが魔王の狙いだったのだ。

 

 「今だ、勇者!!!」

 「合点!『聖なる神よ、我が剣に宿り、太陽を超えた光により、悉く全てを滅相せよ』」


 振り向けば、叩き付けられた所から回復し、剣を上段に構えながらその剣に自らの魔力を注ぎ込んでいる勇者の姿があった。

 魔力の量は、決して大きいと言えるような量では無い。だが、循環している。その両の手に収められた剣を起点にし、回っている。

 それが、一周する毎にそこから発せられる魔力の圧は大きく、そして強くなっている。



 「………良いだろう。ナル。お前がアレを受けたら消滅するぞ。――――死ぬ気で避けろ」

 「………え?」

 


 そう思った瞬間。私の目には、少女の上に、いや、少女が持った剣に神が降り立った様な光景を幻視した。


 それは、極限まで圧縮された光だった。


 光魔法。それの能力は光を作り出す力である。その為、攻撃魔法と言えば魔法により作った光を圧縮し線にする『レーザー』系統の魔法しかなかった魔法であり、『レーザー』系統は取得者が少ないことから、攻撃には余り使え無いと半ば産廃扱いされていた魔法だ。

 だが、この一撃はそんな魔法業界を鼻で笑うような原理で出来ている。

 


 その原理は、簡単だ。



 魔力を極限まで圧縮した上で、更に圧縮する。圧縮したら、もっと圧縮する。なら次はもっと、もっとと。更に、更に先へ。


 こんな簡単な事なら誰でもできたのではないか?その疑問は正しい。

 魔力を圧縮する。これ自体は簡単な操作の一つであり、水の初級魔法のウォーターでも魔力を水に変換し、魔術回路を圧縮する事で放出する事を可能にし、魔法を完成させているのだ。それが無ければ、この魔法は掌から水がちろちろと出るだけになってしまう。

 大体の魔法は、圧縮を使い発動を可能としており。言わば魔力の圧縮は普遍的な技術である。まず、これが無いと魔法の発動すらできないのだから。


 だが、魔力を圧縮しすぎると魔力回路が耐え切れなくなり、爆発する。


 けれど、威力を増やすためにする事が圧縮だけでは無い。それは、一つの手段だ。

 単純に魔法に使う魔力量を増やすだけで良いのだ。無理に魔力を圧縮するよりもそちらの方が簡単に出来る。


 だが、彼女はそれを承知で行った。魔力回路が度重なる圧縮と、その圧縮された魔力によって軋み、一部が断絶する。その端から出てきた余剰魔力を使い『勇者』の力で魔力回路を回復させる。壊れては再生する度に激痛が彼女に襲い掛かる。だが、彼女はそんな物は関係無いと、痛みなどは知らんとばかりに圧縮を続ける。


 体中から、痛みと同時にかかった負荷によって体中から血液が出てくる。

 

 痛いはずだ。辛いはずだ。同じぐらいの年の少女ならば痛みでショック死してしまいそうな程の激痛が体に走っているだろう。だが、そんな痛みを彼女は億に一つも顔に出さない。逆に笑って見せてみる。


 そして、その極光の塊を、彼女は私達に向けた。

 

 

 「喰らいなさい!これぞ、私の大必殺!


 ――――『勇者爆裂残・改』!」



光、いや、聖神の神威とも呼べる極光が一瞬にして、視界全てを飲み込んだ。


その光は、全てを包み込む暖かな光と、敵対する魔の全てを焼き尽くす消却の理が、同居していた。



 「―――これは酷い。だが………悪くはないな」



そうして、そのような、全てを飲み込むに余りうる光の極致に対しての対応は三者三様であった。

 

 その極光を真正面から受けようとする彼は、嗤いながらもう一度鞘に収めていた太刀で迎撃する。


 魔王は自らに仕掛けていた防御魔法を発動させる。


 私は、咄嗟に魔法によりこの場所から、先程の木の下へと転移する。


 

 そして、世界は光に包まれた。



  ――――☆――――


 

 

 「はぁはぁ………これで、思い出したかっ!この無表情唐変木!」

 「………これ、で思い出さなかった、のなら、もう一度やってやろうか?」

 「はぁ。ぜぇ。………それをやるのは私なんですけど!」

 

 そこには、もう草原だったようには見えない光景があった。先程の光により、全てが消えた場所。

 そこで俺は立っていた。極光を受けて立っていた。


 だが、代償は大きい。


 服は汚れたし、体はズタボロだし、てか服ボロボロなんだけど。何で?

 どっちかと言うと体よりもボロボロになった服の方が心配だ。これ結構良い値段したんだけど。


 それに、ボロボロなのは俺だけではなく目の前の勇者と魔王もだ。俺は男だから別に良いが二人は女である。それに魔王は元々痴女みたいな格好なのでセクシーさがムンムンである。

 ………勇者は。うん。そういう趣味(ひんぬゅー)も有るから、ということで。


 ただ、俺はバーベキューをしたかっただけなのに。まあ、こんな戦場の真横でやってた俺達が悪いとも思うが、まず戦争やるのがだめだと思う(真理)。

 そう言えば勇者と魔王は何か使命を持って戦争してるんじゃ無かったっけ?


 たしか、たしか。たしか。ん?

 あれ?俺、何でそんな大事な事忘れてるんだ?おかしい。パッケージの謳い文句にもナニカ書いてあって。


 あれ?俺は、前世、何時『勇魔大戦』をプレイしたんだっけ?


 何故俺は疑問に思わなかった?そう言えば前世の自分の名前も覚えていないし、何をしていたのかも分からない。

 何故か、この世界が『勇魔大戦』の世界だと、漠然とした確信しかないのだ。


 確かに目の前の勇者も、倒れている魔王も、ボスも、スペルーズも、冥土も、ナルもだ。どれもこれも、ゲームに出て来た。


 この世界が『勇魔大戦』だと言う証拠は有る。だが、確信出来る程のものではない。

 何故、確信できた?


 勇者は勇魔大戦1の主人公だ。

 魔王は勇魔大戦2の主人公だ。

 勇魔大戦3はその二人の子供が主人公だ。 


 何故確信出来る?


 ゲームの世界を、違う世界だと、異世界だとしても、何故この世界がゲームだと確信した?いや、違う!俺は、最初確信などしていなかった。

 この世界は、ファンタジーな異世界で、初めてボスを見た時でも、まだ異世界だと、ゲームの世界などと思っていなかった。

 


 ―――幼馴染。




 「………幼馴染か」


 それは幼少期の頃仲良くしていた者のことを指す。

 だが、俺は幼少期から組織で育てられていたはずだ。

 そうなのだ。

 そうに決まっている。


 俺の記憶ではそうなって………゛記憶゛?


 『勇者ー!勇者様ーー!どこ行ったんですかーー!』

 『マオ様ー!どこですじゃーー!』


 そう思っていたら、勇者と魔王を探す声が聞こえてくる。どちらも知っている声だが、今の俺では接触するのは悪手だ。

 勇者と魔王は自軍から離れて決闘染みた事をやっていたらしい。それを探して大人数がこちらに来ているようだ。今、この場で見つかるのは見つかるのは避けたい。

 ………それに、確認したいことも出来た。


 「………もう、潮時らしい」


 そう言いながら俺は勇者と魔王に背を向ける。

 そして、首にかけていたペンダントを手に持って唱える。


 「え?待ちなさいよ!」

 「待て、ジーク!」


 俺に向けて手を伸ばして来ているがそれを俺は意図的に無視する。

 俺は、ケジメをつけなければならない。



 「『テレポート』」 


 最後に、悲しそうな顔をした二人の顔が視界に入った。



 ◇◆◇



 それを唱えた瞬間。俺の視界は、先程の荒廃した場所とは違った緑豊かな森林へと変わる。その場所は、さっきいた場所とは違い、人間の手が一切入っていない、未開の地と言われるような場所だった。


 樹齢1000年と言われても、納得できるような大木があちらこちらに生えており、それにより太陽が一番高い場所に来る様な時間なのに光はあまり入ってこない。その為屋外なのに珍しく暗い場所だった。

 だが、その暗さに不安は覚えない。それよりも神秘的な場所に来たような、この場所には自分一人しかいないと思える様なほんの少しの優越感が心に残る。


 先程の場所にいると思っていたが、違う場所に移動していたらしい。


 「お帰り。ジーク」

 

 静寂を歌姫の様な声が破る。誰であろうとも、耳に入った瞬間、たとえ酒に溺れた荒くれ物でも落ち着かせる様な透き通る声が俺の耳に入る。

 その声は、確かに落ち着くような声だが、今の俺にとってはただ、耳障りなだけだ。


 その声の主が誰なのか振り返る必要も無いだろう。何故ならこの魔道具はある人物の下に転移する物なのだから。

 今なら分かる。分かるとも。


 「………貴方が、私の記憶をいじりましたよね?」

 「そうだけど。そんなことよりも、二人きりなんだから、一人称は『俺』でしょう?そういう風に洗脳したはずなんだけど。あ、もしかしてさっきの衝撃で思い出しちゃった?それは、そう………ざーんねーん!」


 全然残念そうに見えない声で、どちらかと言うと嬉しそうな声色で笑いながら彼女は言う。


 「………何故こんな事を?」


 俺は振り返る。そこには当然の様に金髪の赤と青のオッドアイをした美少女がいた。

 目の奥に怪しい輝きを滲ませ、絹の様な髪を何時ものように流しながら、赤いドレスを着た美少女。

 その姿は、舞踏会の貴族の令嬢の様な格好であり、この場所には決して合うはずが無いながらもその整い過ぎた美により無理矢理、調和を保たせた様な感覚をを覚えさせる。


 『美』と言う言葉以外では表せられない少女。

 

 この思考自体もおかしいだろう。美少女だとしても何故こんなにも美しいと思えてしまうのがおかしい。これも洗脳か?


 「違うよ。君が僕を美しいと思うのは普通の事だ。何故なら、僕は世界で一番美しい。それは純然たる事実だ」


 俺の思考を読むことなど簡単だとばかりに頭の中で思った疑問に答えられる。


 「今の俺には、お前がこの世界で一番だとは思えない。今のお前はゴミ以下だ」

 「それは残念だね。君が言ってくれたのに?」


 そう言いながら、奴はゆっくりと自らの肢体を見せつけるかのように俺の元に歩いてくる。


 「それは俺か?それとも、お前が人形の様にしていた俺か?お前の言葉に疑問を持たずに、ただ従うだけの私か?」

 「勿論。君だよ。最初の君だ」


 そして奴は両手を同時に広げて語る。


 「僕を製造したというだけが人生の最上の幸運だった僕の生みの親である『母』が連れて来た当初の君だよ。その君が教えてくれた。何よりの幸福を、何より君が教えてくれた。

 それだけだ。それだけなんだよ。ジーク。君にとっては簡単な事でも君が教えてくれた事は僕の中で息づいている。

 ――――――――それは、堪らなく愛おしい。狂おしい程に。君の全てが欲しい、と、想ってしまうほどに!」

 「………だから記憶を?」

 「そうだよ。………いや、記憶はついでだね。幼馴染なんて消えてしまえば良い。君の中にあるのは僕だけであれば良い」


 何を言っているのか分からない。理解ができない。俺からしたら狂人の戯言であり、他人からしても狂人の戯言だ。と言うことは満場一致でイカレいる。


 判決。有罪 死刑。執行人は俺です。


 俺は、自らの相棒である太刀を、目の前の敵へと向ける。

 そして、一瞬で俺から見て右腹部から両断する。


 「――――へ?」


 死んだことに気付かなかったように、人体切断マジックに失敗したマジシャンの様に無様な顔で目の前の彼女は両断される。

 そのまま、切り飛ばされた彼女の体の上半分が丈の低い草花の上に落ちる。そこから流れた血が草花の緑色を血の赤で染める。


 妙に思考がクリアだ。

 今の俺はスポーツ選手で言うゾーン状態とやらに近いのだろう。今までのどんな攻撃よりも確実に仕留められたという感覚がある。

 今までの自分の考えがどれだけ奴の都合の良いように書き換えられていたのかが理解できる。その反動なのか、肉体状態は勇者の攻撃を受けて良いとは言えないが精神状態は過去最高だ。


 ………後悔は無いと言えば嘘になる。洗脳が解けてもそれまでの情は残っているのだから、だが、それよりもやっと幼少期の記憶が戻ってきた。

 ああ、忘れるわけが無い。忘れてはいけない物だ。ユウ、マオ忘れるわけが無い。俺達は家族――――――――

 

 「だって君が教えてくれたんだよ?欲しいものは自分で手にいれるのだと」

 「――――ッ!!」

 

 その声は永遠に、もう聞くことの無いはずの声だった。


 そんな風に油断していた俺の背中に切り飛ばしたはずのボスの上半身が乗っかっていた。

 な!?確実に切断したはずだ。骨も内蔵も切り飛ばした。ボスは常時魔法を纏っているので確実に仕留められるか分からなかったし、出来たとしても自分で回復するとも思っていた。

 ………だが、復活が早すぎる!俺の゛記憶゛では、ボスは一度両断されたらこんなに動―――ん?この゛記憶゛は、どっちだ?前世か?それとも植え付けられた記――――


 「フフッ………」


 そしてボスは、にこやかに俺に笑いかけながら強引に俺の顔を動かすと、自分の唇と俺の唇とを合わせた。


 ?………???????????????

 俺の思考は、はてなマークで包まれた。何が起こった?何があった?思考を回せ。死んだはずのボスがここにいる?いや、そんなことはどうだってよい!唇と唇を合わせる行為とは?


 俺の灰色の脳細胞が簡潔な答えでは無いウィキでググったかのような答えを導き出した。この間0,5秒。


 答え、それは外国ではキス、日本では接吻、あるいは口付けと呼ばれる行為であり、相手に親愛や友情、愛情などを示す行為であり、断じて体を両断した人と両断された人がする行為では無い。

 更に、ボスは俺の想像の先を行った。

 そこに痺れないし、憧れない。


 「な!?――――………ん!?」

 「ん、んんっ、っんん、――――プハァ」


 ボスの舌が俺の口内に入ってくる。そこから、俺の全身に痺れるような快楽が走る。脳はそれに侵され先程の鮮明な考えが出来なくなる。


 キスから発展し、唇を重ねるに飽き足らず、舌を入れて俺の口内を蹂躙する。

 答え、ディープキス。


 この感覚に俺は覚えがある。

 どんな物から与えられる幸福のどんな物よりも濃く、重い感覚。


 それに俺は抗えない。抗いたくなくなる。

 脳内から侵されていく、肉体は直ぐに逃げろと危険信号を脳に送るが理性は溶けて判断を遅らせる。


 そのまま俺の精神は体の操作を手放し、重力に従い膝を折る。


 それをボスは満足げに見終えると。嬉しそうにこちらを見てくる。その顔は淫靡で、普通の人が見たら理性を無くして襲い掛かる程の魅力に満ちていた。



――――☆――――



 その女は舌を使い、先程の行為をもう一度じっくりと味わうかの様に自分の唇を舐めると目の前の愛おしい男に視線を向ける。

 その男は、女が送った服をボロボロにし、鞘から抜いた太刀を持ったまま膝を付けていた。

 100人に聞けば100人が満身創痍と言えるような男の姿を見ようとも女の余裕の笑みは変わらない。逆に満身創痍だから笑っているとも言える。自分の為にここまでボロボロになってくれて嬉しい、と。


 確かに、自分を殺すために満身創痍になったと言えば、見方を変えれば確かに自分の為だろう。だが、致命的に意味の解釈を間違えているような気がする。


 「………やっぱりジークの唇は美味しいなぁ。この世界のどんな甘露よりも甘いし、美味い。それにしても、何も言わずに両断なんてひどいじゃないか!

 これじゃあ動くのも一苦労だよ。悲しいなぁ。

 ――――――けど、嬉しいよ!正面からの不意打ちだとしても、この体の頑丈さと頑強さは知っている。やっぱりジークはすごいね!」

 「あ、あっ、ああ」


 女と違い、その男は理性というものが削げ落ちていた。その心には、もう本能と女によって掻き出された情欲しかない。

 その瞳は先程の明鏡止水に至った剣士のような目ではなく、女と見れば襲い掛かりそうな欲望に塗れた瞳になっている。

 だが、それに従うことを男にほんの少しだけ、わざとらしく残された理性がそれを許さない。自己の存在証明さえ、危うい中で、膨れ上がる本能よりも遥かに少ない理性に従うことが出来るのは素晴らしいとしか言えないだろう。

 それを女は祝福すると同時に落胆する。

 ああ、ここまでしても自分を求めないのかと。

 



 ゛愛している゛




 女は、男を愛している。何もかもを捧げたいほど、何もかも奪われたい。何もかも知ってほしい。

 彼女は、その様な被虐的な考えを持っている。

 曰く、『ああ、きっと彼に跪いて全てを奪われる。奴隷の様に虐げられる。ああ、それは何て素晴らしい』のだろうと。

 要は、変態(ドМ)である、



 だが、同時に、この女はこれと丸っ切り違う考えも持っている。その考えが今の廃人の様な男を作り出す要因の一つになったのは否めない。



 曰く、『けれど、彼の大事なものを、私が忘れさせた物を忘れた彼自身で壊して、それを理解して絶望した瞬間も見るのも、素晴らしい』と。

 そんな、嗜虐心も抱えているのだ。

 要は、変態(ドS)である。


 だが、そんな物は洗脳出来るなら簡単にできるのではないか?何ならその心全てを手に入れることが可能なのではないか?、と。

 それは可能である。なんなら、女だけを考える人形に男を変え、女が心から望んでいる事も好きなようにできるだろう。

 だが、女はしない。



 何故ならば。



 

 『こ、こういうのって、やっぱりパ、パートナーからやって来るものだと思うんだ………!』

 女は、変態であると同時に、乙女でもあった。


 ここまでやってて何言っているんだと思われるが、要は無駄に純情なのである。洗脳して記憶を奪ったり、認識を操作して違和感を無くして同じ屋敷に住んだり、料理に使われる食材の中で男が食す物に自分の血を混ぜたり、下着を盗んだり、ハートをキャッチ(物理)した後自分の心臓をくり抜いて入れたり、右目を取って自分の右目と交換したり、等々普通の人なら引くような………ヤンデレでも泣いて抜け出す程の事をしているが女は男と肉体関係を築いていない。




 この女の望みは、『誰もいない彼と自分二人っきりの場所で愛の告白をされ、(彼の方から)熱いキスを交わして左手の薬指に指輪を貰い、一夜を(洗脳していない状態の)彼と過ごす』それがこの女の夢である。

 やっていることはえげつないが、その望みは愛している人と結ばれたい、これに尽きる。


 「………それにしても。少しくらいなら思い出すと思っていたけれど。まさか、全部思い出すなんてね。少し、嫉妬しちゃうなぁ。

 ――――――――殺すか。あの二人」


 そう言った時の表情は、先程の人生の最高潮を味わった様な顔から変わり、全ての感情が削げ落ちていた。

 簡単に言っているが、その言葉に込められた殺意はさっきまでの言葉に込められた感情と比べて天と地ほどの差がある。


 自分でやろうか、と。その時彼は何を思うのだろうか。彼は怒るのだろうか?それとも何も思わない?ああ、また僕の呪縛を解くかも知れない。その時は、また熱いキスを交わそうか?いや、彼が僕に代償を求めるのなら、それもまたアリだ、何て妄想しながら女は遂に考えに至ったのか少し嗜虐心をほころばせながら。 


 「あ、けれど。やっぱり、昔の女はジーク自身にケジメをつけてほしいなぁ」


 そう笑う彼女は、初めて美しかった。


 「………まあ、どちらでも良いか。勇者と魔王なんて名乗っているんだ。十中八九『世界』からのバックアップは受けるだろう。まあ、結局僕にとってはどっちでも良い」


 女にとってはどちらでも良い。勇者と魔王が『世界』に愛されている『英雄』だとしても関係無い。

 『僕の右目』を狙うのならば、魂を砕いて時空の隙間にでも投げ捨ててしまおう、と。

 

 「あっ?そう言えば………あ~あ、服が破けてるよ」


 そして、女は今気づいたかのように、腹を両断されたときに肉体と同じく半分になってしまった血で汚れた服を脱ぎ捨てる。

 その脱げ落ちた服からこぼれ落ちる様に表れた肌は雪の様に白く、肩に掛けた黄金の髪はこの森

では降り注ぐ事は少ない太陽の光をも反射する。


 その姿は、正しく神に祝福された者であるかのようでいて、全てから彼女は程遠いのだと、超越者のだと思わせる美しいとも言えない『美』という概念の化身だと思うような。

 その様な、言葉に表す事も出来ない姿をして――――――――


 「僕は、自分の姿の究極は裸だと思っている。美の究極として作られたこの体はどんな時でも美しいのだから。

 故に、この姿は全ての物を引き付ける。それは理解しているつもりだ。それに引き付けられて色んなゴミが纏わり付いてくる、それも理解しているつもりだ。

 ――――だがね。僕は自分の裸を安売りする気も無いんだ。

 わかるだろう?確かに、恋する乙女()は最強だ。

 君達程度僕なら指一本で殺せる。

 僕は、忠告しているんだ。

 分からないか?

 まず、僕のジークを見ている時点で君たちは、罪深い。それを理解しろ。


 ――――その上で、上位者面しているのが気に食わないと言っている。

 上から目線で見下ろすな。他のものならどうでも良いが、僕とジークを見た時点でお前を殺したくなる。何よりも、勇者や魔王ならまだしも、まず舞台にすら降りてこない分際で僕を語るな。

 だから、『美』なんて陳腐な物でしか僕を語れないんだよ」


 


 ――――☆――――


 「に」


――――☆――――


 「げ」


――――☆――――


 「る」


――――☆――――


 「な」


 お前もな。■■■■・■■





 魔獣

・歴代の魔王が創り出した新生物であり、魔王の能力の一つとも言えるもの。作中では一瞬で消されたが本当なら魔獣一体=平兵士100人位の戦力。多種多様な能力を持っており、創り出した魔王が死ぬと同じく消える。だが、一部の魔獣は原生生物と交配した者達もおり、その子孫は消えないまま残り魔物となった。

 因みに魔王軍は自由恋愛である。ついでに魔王の前でいちゃつくと切れられる。

 『ギュータさん………♡』(手を取りながら)

 『ラビリンさん………♡』(手を取りながら)


 『………何をやっている?』(手首を鳴らしながら)

 『え?あっ、魔王様!?ちょ、早く行くのじゃ!そこの二人ぃ!』


 剣聖

・勇者の師匠。強い。王国の最高戦力であり、国同士の停戦協定の中で『もう流石にさぁ、こいつら使うのは辞めない?』『『『だよねー』』』と言われるほどの実力があるが、只の攻撃で時空を切り裂く勇者を見た時『あ、こいつ俺越えたな』と思ったらしい。しかも、気合いで光魔法を使って殲滅魔法を習得したりしたので『もう、引退しよ』ってなった。最近ジャポーンから流れてきた将棋を始めた。

 『でさー。師匠聞いてる?』

 『ああ、聞いてる。聞いてるぞー。婚約者が見つからなかったんだな。………え~と、ここは飛車だな』

 『やっぱり、おかしいよね~。何処にも見つからない何てさ~。折角この休みの間に亜人国も回ったのに結局収穫は獣王との戦いしかなかったのよ』

 『ああ、聞いてる。聞いて――――今何て?』


 魔議会

・魔国の最高戦力者達の議会。その強さは、1人1人は剣聖の強さには及ばない、が10人位が居るので=で剣聖と同じぐらいの力を持っている。その為、魔国では魔王の次に恐ろしい存在とされている。だが、実態は魔法の修行に来た『魔王』に魔法を教えてたら、孫心を刺激された老人連中である。最近、第45回『マオちゃんの可愛さを語る会』が開催された。

 『やっぱり、マオちゃんは昔が良かったのだ!今では一人称が我になり、露出が多い恰好をしている。これは嘆かわしい事だ。………やはり、今一度我ら全員であの忌々しい相談役を八つ裂きにし、昔の『お爺さん。あ、ありがとうございます』と言ってくれていた。あの頃のマオちゃんを取り戻す!嘗ての栄光の日々を取り戻すのだぁ!』

 『いいや。違うねぇ。それはダメだ。子と言うのは親を超えて成長するもの。成長とは言わば変化。例え、どの様な変化でも、それを祝福するのが我らであろうがよ。それを゛戻す゛?

 何、世迷言を口にするかよ。あほうになったか、いや、痴呆か?

 ――――逆にそれが良いのだろうが!』

 『まて。いい加減にその口を閉じろ。馬鹿が移る。

 いいか?お前たちの様なマオを表面的な物でしか見ないその姿勢は飽きたぞ。いい加減もう少し進化しろ――――――――




 小話 商人の驚き


商人「あー、良かったー。良く、あんな所から生き残ったなぁ。私。凄いなー。私。じゃあ、このまま帰って書類整理でも―――」

冥土「お待ちなさい。変態」


商人「ふひゃい!」


商人「って、変態冥土じゃ無いですか。何?変態衝動が抑えきれなくなったんですか?ちゃっちゃと、あの怖ーい人の元に行き―――」

怖ーい人「怖ーい人が何だって?」


商人「るひぇい!」


怖ーい人「商人って結構面白いね」

太刀の人「ですね」


商人「辞めてくださいよ!本当に!」

商人「全く。居るんだったら言ってくださいよ。太刀の人も帰ってきたのなら声をかけて―――」


怖ーい人「?」

冥土「?」


商人「ん?どうしました?」


怖ーい人「ジークは、まだ帰ってないよ」

商人「え?」




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― 新着の感想 ―
[一言] すべてにおいて説明不足。書きたい場面しか書いていないので、話が繋がっておらず理解できない。読者に伝える気がない文章。これは小説ではなく書き散らしだ。
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