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 KⅠNGの右目~死んだらゲームのラスボスの側近キャラになっていた~  作者: 黒勇
 第1章 未来は変わるが、過去の事象は変わらない
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 第6話 寂しくなるのは、置いてけぼりになったから


誰も見てないだろうし、投下。

待ってくれてたらゴメンナサイ。


 それは日課の素振りが終わった後、何時ものように一時間の山歩きと山道を使ったパルクール一時間をしてからコッソリと孤児院の就寝スペースに帰るところだった。


 いつもと違って少しやることがあった俺は、毎日決めている予定の時間よりも、少し遅くなってしまっており、その為いつもよりも足早に移動していた。

 さらに、今回は山道の時に結構奥深くに行ってしまっていたので、移動時間もいつもより長くなってしまった。


 これらの要因が悪かったんのだろうか?いや、悪かったのだろう。それを見たのは山を抜け、ついでに使った物を洗うため川の方から帰ろうとしていた時だった。いつもならば、誰もいないはずの時間だったのだが、今回は人影が二つほどあり、余り他の人に見つかりたくない俺は、ここから迂回するかどうか悩み、とりあえず誰が居るのかどうか確認しようと見た、そんな時だった。



 「………こ…で、やらせていただきます!!!」


 

 そこに居たのは、真っ白なシスター服が汚れることも厭わず見事な所作としか言えない、洗練された土下座をもう一人の青髪のシスターにかましている黒髪のシスターの二人組だった。



 俺は、その光景を信じ切れずに二度見した。だが、現実は非情である。

 そこには先程とは一分とも変わらない現実があるだけであった。



 え?噓だろ、何やってんのあの人達。てか、立ってる方ってシスター・シーンズだよね。シスター・デルは休みだし、服装的に司教様では無い。と、言う事は土下座をかましてるのはシスター・マネ?

 ………見なかったことにしよう。人間知らない方が良いことだってある。例えば、昔好きだった漫画が知らない間に完結してたとか。あ、俺転生してるからその確認さえもできないのか。



 ………止めよう。これはダメージが大きい。と言う事で別ルートから行くか。確か、ある程度森を進んだ距離に抜け道があったはずだ。

 そんなふうに考えていた俺の思考に反応するように、厳かな声が頭蓋の中で響くように反響する。


 【いや、主よ。ここは、あの変人シスターの弱みを握り、我らの目的に利用するのが吉であろう】


 そんな声に対して、俺は普通の人間の感性で反応する。

 

 『ド畜生かよ、ファブニル。流石にいつもお世話になっている人に対して、そんなことできるわけないだろ。こう言うのは何も言わず、聞きませんでしたよー、って態度でいることが大切なんだよ』

 【けれど、主。別に、あのシスターに何か世話になったことあったか?】


 お前、いつも俺に配られた料理勝手に食いながら【美味い!美味い!】って言ってるのに。作ってくれている人のことを覚えていないのか?

 声の主の記憶力に、少し呆れながらも返答を、口頭では無く、脳内で返事を思考することで返す。


 『バカ。あの人は調理担当なんだよ』

 【何と!………ならば、余計に弱みを握らねば。クックック、この弱みで夕飯のおかずを一つ多めに配らせるぞ!我が主よ!】

 『いや………それするの必然的に俺になるんだけど』

 【吾輩と主は文字通り一心同体だからな】


 声だけでも、何故か自信満々で胸を張っている姿が安易に想像できる。まあ、良いだろう。

 ところで、この声は、別に俺の幻覚とかイマジナリーフレンドとか空想の友達では決してない。この厳かな声とやっていることに反比例して要求することがみみっちい声は俺の心臓に絶賛滞在中のファーブニルの声である。

 因みに、呼び名は最初のを辞める代わりに略称で呼んでも良いと言う許可をもらった。


 ―――別に中二病では無い!これ本当の事だから、俺の心臓にはなんかすごいドラゴンが住んでいて、俺が赤ん坊の頃に契約を交わして食料を食べずに生きれるようになって、身体能力に空間把握能力も手に入れ………。これ余計に中二病っぽいな。


 何故か、弁解すればするほど、真実を話そうとすればするほど俺が中二病だという誤解が深まりそうな気配がしたため、説明を諦める。あれ?なんで俺、自分に説明なんかしてるんだろうか?もう自分自身で体験していることのはずなのだが。まあ、何でも良い。


 『じゃあ、帰るぞ』

 

 もう帰るし。


 【待て待て待て!今!もう一人の方が平伏している方に何か渡したぞ!アレは本か?主よ、視力を強化してやるから題名だけでも見るのだ!目を開けても良い!】

 

 そう思って、足を動かそうとした瞬間に、また引き留める声がかかる。

 ………こうなったらファーブニルはうるさい。初めて、俺が空腹から山にいた熊を仕留め、ジビエを食った時その味に感動して俺にもう一度取らせるため、朝から晩まで頭の中で、【故郷の歌、主がジビエ取るまで終わりまテン】を行い一日ずっと寝ることが出来なかった。

 それは結局俺がシカを仕留めてくることで、収めることに成功した。


 あの地獄は、もう体験したくない。


 『分かった。けど、脅迫は無しな』

 【そんな!主よ。今日の夕食はポテイトなんだぞ!成長期の主にとって栄養は何よりも大事だ!吾輩との契約で食わなくてもよいが、それは所詮食わなくても“よい”なのだぞ。

 ―――復讐したいのだろう?ならば、喰らわねば強くはなれんのだ】

 

 その言葉には同意する箇所が多くあり、俺も少しその気になってくる。だが。


 『そんなことしたらたぶん肉の時に配分が減るぞ』

 【主よ。吾輩も誇り高き龍の一人、脅迫などと言う低俗な事一切考えておらん。脅迫など弱者がやることだ。圧倒的強者な吾輩が使ってしまってはその時点で負けと言う物。

 ………別に肉が減らされることに怖がったわけでは無い。決してない】


 先程から、発言の内容が掌くるくるしているが、この龍意外と普段はこうである。レギンおじさんに脅された時も、俺に【いやだー!死にたくないー!主の軽率な行動のせいで、思いっきり生かしてたらやばい奴判定喰らって殺されてしまうー!】とか言っていたが、おじさんに敵意がないと分かると

 【フン………。やはり、心臓だけになってさえも隠せんか。吾輩から漂う高貴なる龍のオーラが、な!】と掌ドリルしていた。


 初対面はとてつもなくすごい龍だと思ったが、正直7年ほどで化けの皮が簡単にはがれるとは思っていなかった。

 なんだろうか。映画とか、ドラマとかではかっこいい人なのに住んでる家はゴミ屋敷、みたいな。知りたくなかったギャップ萌えとも言える誰得な感情が俺の中で生まれている。


 『で、題名だけでも見れば良いんだな?』

 【………ん?あ、そうだ。そうだとも!さあ、そうと決まったのならば!さあさあ!】


 面倒だ、とも思いながらもやらなければ話が進まないのだと諦めながらも瞼は開けずに、透視して見えている風景の内、今も四つん這いの体勢になっているシスターの持っている本の背表紙を見ようと注視する。

 だが、当然。別に、特段視力が良いという訳でも無い俺の視界では、ここから十五メートル位ある小さな本の題名を把握できない。当然である。その為、俺は前世では絶対できないであろう裏技を使う。


 『じゃあ、よろしく』


 俺は心の中で合図を先程の会話と同じようにファブニル送る。

 何をするかはどちらとも今までの経験から心得たもので、何をするか、何をすればいいか等はわざわざ伝えなくても両者とも理解している。


 【了解した。少し前に使ったばかりだからな。あまり強い強化は使えんぞ。【契約・代償魔力1%対価・視力強化】】


 その言葉が俺の頭蓋の中に反響するかのように響くと、全身に流れる血液が循環を止め全て、心臓に一度集まったかのような感覚が俺を襲った。だが、そう思った次の瞬間には、自分の中で鼓動を続ける心臓に血管が増えたかのような、錯覚にしか思えない重量感が続いて俺を襲う。

 

 体感時間では数分間にも、数時間にも思えたが、実際は数瞬なのだろうか、それらの痛みとも言えない違和感の激流を乗り越えたのち、約束された代償の恩恵がやって来る。

 そう確信しながら、堪えるため手に力を込めて違和感を誤魔化す。



 だが、そんな誤魔化し等意味は無く。

 心臓から上へと触角のようなものが伸びてくるような気持ち悪い感覚が、肺を通り、骨を通り、そして両眼へと長い道のりを辿り着く。その触角が網膜に張り付いた瞬間。


 

 世界がクリアになった。

 先ほどまではっきりと見えなかったここから山奥の景色から、先ほどまでは見えていなかった気に留まり、談笑する小鳥に。シスター服の皺まで。

 

 今まで見ていた景色が変わった。比喩でもなんでもなく、精神的でもなく、確実に俺の前世の世界では決して起こりえないような非現実的な現象が、確実に俺の中で起きていた。

 だが、そんな文字道理に魔法のようなことが起きたのにもかかわらず、俺は動揺する事も無くそれを当然のものとして享受する。

 ………先ほど(・・・)まで使っていた量と比べたら、文字道理、桁が違うので一回程度なら何も感じないようになっている。


 実際これは魔法に似ているが本質的には違うもの、らしい。俺は普通に魔法と同じものと思っているが、ファーさんが言うには、魔法は魔力を糧に外界に影響を及ぼす術で。対して、こちらは魔力を使うことには変わりないが、その影響は内部に限定されるらしい。

 要は、専門家から見たら違うけれど何も知らない人から見たらどちらも一緒に見えるものと同じである。


 【時間は3分間。視力を補正したぞ。さあ、どんな題名だ?我が主!】

 『ああ、今見る』


 

 この現象の制限時間をファーさんが告げる。それを頭の片隅に置きながら違和感を今までの経験で流しすと、俺は今いる場所から少し場所を移し本の題名が見やすいであろう場所へと移動する。

 ―――確かに、視力は問題ないほどまでには強化されたが、角度が悪い。今の俺がいる場所ではちょうど木や石などの遮蔽物が邪魔をしてあまり見えない。

 勿論、移動している間も足音を立てない様に、石や木の根などの踏んだら音を立ててしまう物を避けている。音を立てて気づかれてしまったとなれば、余り意に沿わない行動だとしても失敗するのは目も当てられない。


 「ん?んっ、ん~ん?お、見え………。ん?」

 【どうした?我が主。やはり、弱みとなる何かいかがわしい題………。ん?】

 

 俺たち二人はそろって、俺は肉眼で見た映像。ファーさんは共有した映像で。どちらも、あっけにとられていた。


 『「スケルトンでもわかる子供あやし術」………スケルトンって有性なのか?』

 【………いや、吾輩の知識が正しければ、スケルトンは生き物の骨を放って置いたら出来るものだ】

 

 思っていたのとはまるっきり違う答えに俺とファーさんはあっけにとられ、もう脅すとか、弱みを握るとか以前に、そんな怪しさ満点の本を渡されるほど気に病んでいるのかと戦慄した。

 いや、スケルトンって魔物の一種でしょ?そんな聞くからに骨だけの魔物に分かる頭はあるのか?まず中身は?よしんば、それを覚えても使うことはあるのだろうか。


 「………シスター・マネ。まさか、そこまで」

 【主たちのせいではないだろうな?】

 「そんなわけないだろう」

 【即答だな。主】


 何を言っているのだろうかこのトカゲは、俺たちがシスターが気に病むほどのことをしでかすだなんて―――

 その時、俺の頭に電流が走る。


 自分のことを客観的に見てみよう。朝のまだ誰もが寝静まった時間に起床し、どこからか調達してきた剣を持ち素振りを始め、朝から晩まで修行修行と他人とのかかわりあいも最低限。唯一遊んでると思われるのも子供とは思えない速度での鬼ごっこ。更に、朝食、昼食の時間に居ないこともザラ。さらに、今日もシスターが言っていたピクニックをすっぽかした。


 ―――してる。バリバリしてる。こんなの問題児でしかない。


 更に、一緒につるむ連中も大体こんな感じだ。

 

 結論。俺は問題児だった。


 『ファーさん。俺、問題児だったよ』

 【やっと、自覚したか。と言う事はこれからは真面目にするのか?】

 『まあ、それはしないけど』


 自覚することと改善することは、また別の話である。俺が今やるべきことはほかの人間との協調性の向上などでは無く、個人としての武力の向上だ。

 ………一応、最低限の交友は行っているが、それ以上を望んで時間を無駄に裂く事よりも、この幼少期から鍛錬と肉体づくりを行うべきであろう。


 人間、なんでも望んでしまうと最終的にはろくなことにはならない。


 いろんなものを望むよりも、確実に一つのことを望んでいけば、おのずと最後に持ってるものは多くを望み過ぎた者よりも多くなる。

 高望みする心なんてものはとっくの昔に捨てた。


 【………ところで主】


 何?


 【今、何処に向かっている?】


 何処って。視覚共有しているのだから、映像で自分がどこに向かっているのかぐらい簡単にわかるだろうに。何故、再三確認を求めるのだろうか?

 そんな質問に俺は、先程からの返答と同じように思考することによって答える。


 『シスターマネのところ』

 

 仕舞って(・・・・)いる剣も出さないといけないしな。

 そう思いながら俺は手ぶらの両手を開いて、振りながら大の字になっているシスターに近づいて行った。

 

 ♦♢♦



 その部屋は、質素であった。

 質素。貧困では無く、質素。裕福と言うにはあまりにもみすぼらしく、貧困と言うにはあまりにも満ちている。だが、普通と言えば、首を縦には振れないような。そんな部屋。


 もう、春だからか、部屋にある唯一の木製の窓は防犯の意識もなく全開であり、春の日差しと風を部屋の中に運んでくる。

 その風は奥行きのある部屋の閉め切られた扉に当たり、部屋全体に循環する。


 そして、その風に当たり、寝息を立てる生き物が二つ。


 「ん、ん~、ふぬ。すぴー」

 「すー。すー」


 この部屋の右と左に置かれた二段ベッド、その音はその内の扉から見て左の方から流れてくる。

 一つは下から、もう一つは上。

 狭い空間であるため、上下の感覚など内にも等しいが、二段ベッドであるがためそれらの区別は簡単にできる。


 下に居るのは、金髪の少女。

 春の夜が少し、いつもよりも暑かったのか、使い古されたブランケットを体の半分にも満たない角度で装着し、手足は散らかり、着ている寝間着はへそが丸出しになっている。

 更に、これまた先程のブランケットと同じくらい使い古され、石の様に固い小さなベッドを少し開けられた口から垂れた涎が染め、少し普通よりは長く伸ばしている金色の髪は昨日の格闘(寝相)の結果か。散らかり放題になっていて、見るも無残な状態になっている。


 それに対して上に居るのは、正反対の銀髪の少女。

 肩に、きちんとかけられた先程の少女と同じような白いブランケットは少しの皺があるが毛布としての役割を十分に果たせており、両足をそろえ、手は両方とも胸の上に置かれ。規則正しい呼吸音が聞こえてくる。

 肩にかかる程度にそろえられた銀色の髪は寝ているの状態でありながらも、先ほどの少女と比べて散らかって等おらず、少し形が崩れている程度であった。


 この二人の少女は見た目も寝相も丸っきり正反対ではあったが、どちらも幸せそうな顔をして眠っており、その表情だけは姉妹かと見間違うほどに似ていた。


 「ん、ん。んはぁ~あ。ん?」


 すると、二人のうち下で寝ていた金髪の少女が寝息を止め、上半身をゆっくりと起こしながらも利き手であろう右手で両目をぬぐいながら周囲を見渡す。

 そして、大きく口を開けて大欠伸をしながら両腕を伸ばす。それでも眠気は取れないのか、伸ばし切った両腕を膝の上に置き、沈黙する。

 その後、数分間ほど沈黙を保ったままでいたかと思うと、急に口を開いた。


 「あぁ?そういや、今日は休息日だっけ?じゃあ、寝てていっかぁ」


 そう言うと、少女は掛かっていたと言っていいのかも怪しいブランケットを、寝る前と同じように再度肩までかぶり直すと、もう一度夢の世界へ―――


 「ん?休息日?」


 行かなかった。少女は先程言った自分の言葉に疑問を持ったのか、ブランケットを掛けた状態のまま、目を大きく広げその意味を考える。


 休息日?休息日だ。休みだね。何の?一週間の。じゃあ、何かあった?そう言えば、シスターが今度の休息日にピクニックに行くって言ってたような………。あ、それじゃん。じゃあ、何で隣のベッドに誰もいないのか。それはもう先に行ったからでしょう。確かに、いやぁ、私ってホント頭良い―――


 「待って、ピクニック?」


 その言葉を発した途端。少女はグルンッ、と効果音が着きそうなほどのスピードで首をベッドがある方向に九十度曲げると、もう一度ベッドががら空きなのを確認する。

 そのことでもう一度今の自分の状況を再確認する。


 しまった。置いて行かれた。

 

 「ヤバい。ヤバい。どうしよう!どうしよう!?」


 再確認が終えた今自分が何をするべきなのかもさっぱりわからない少女はバッドから飛び起き、頭を抱えながら足音を立てることしかできない。

 そんなに楽しみでもなかったが、別に嫌いなわけでもなく、好きであったピクニック。昔の自分ならばこの日に誰よりも早く起き、誰よりも先頭に立ち、誰よりも先にしかられていただろう。

 だが、ここ最近は毎週行われるピクニックに参加できないでいる。その理由は―――


 「………ユウ。うるさい。何?」


 慌てふためいている金色の少女に、頭上から声がかかる。その声に少女はハッとすると、その声の方向に顔を向けるため少し上を向く。

 するとそこには、先程の正反対の銀色の少女が心底怠い様子で目をこすりながらこちらを覗いてくる姿であった。


 そして、それに対して、金色の少女は今度は嬉しそうに顔を綻ばせながら笑みを浮かべると、寝ている人も飛び起きる程の大きな声を掛ける。


 「おはよう!マオ!」

 「おはよう………。ユウ」


 それに対して、銀の少女―――マオもソレに耳をふさぎながらも、少し笑いながら挨拶を返した。


 と思った瞬間。マオは起き上がったせいで肩から膝にまで落ちてしまったブランケットを頭までかぶり直すと下にいるユウに声をかけた。


 「そして、おやすみなさい」

 「え!?待って!!!」


 その言葉に対して焦ったかのように、掛けられたはしごを使わずブランケットに包まったモノにとびかかるユウの姿がそこにあった。



 ♦♢♦



 【あいつら起きてるのか?主の異常な生活に付き合って、連日疲れ切っている奴らがもう起きているとは少し考えづらい】


 それには同感だ、と俺は頭の中で響く声に対してそう考える。が、別に返事をするほどの物でもないのでわざわざ伝えることは無い。

 それに言葉にしなくても感情は伝わるため、簡単な言葉ならば伝えなくてもわかるだろう。

 ファブニルも分かったのか、返事を待つ事も無く話を続ける。 


 【………やっぱり、先に準備に取り掛かった方が良いのではないか?】

 『いや、けど。シスターに先に起こしに行くって言っちゃったし。言ったのならば、やらないといけないだろ』

 【まあ、主が良いのならそれで良いのだが………】


 ファブニルはそれだけ言うと、また黙りだした。

 何を言いたかったのだろうか?………多分。手伝ったら味見くらい許してくれるかもしれないから手伝いに行こう、とでも考えていたのだろう。

 

 そんな風に、益も無いことを考えながら、俺は今。木で出来た先程から音がギシギシと鳴る廊下を一直線に歩いている。

 その廊下の俺から見て左側には、窓と言うよりも穴と言った方が良い様な窓から風が入って来ているため、春が開けたばかりなはずなのに少しばかり寒い。俺の服装が少し薄着なこともあるが。

 だが、それよりも光はちょうど太陽が反対方向にあるため、朝であるのにも関わらずこの廊下は夜まではいかないが、少し不安になるくらいには暗い。


 そして、俺はそれとは反対の右側を見ながら歩き続ける。左側とは違って、右側には薄茶色の木の壁に、等間隔で置かれた茶色の扉が奥まで見て13個程ある。

 俺が用のあるのは、そこの7番目の扉だ。少し歩けば簡単につく距離だが、俺は慎重に一つずつ指で数えて確認する。


 何故なら、この扉達には、どれが何の部屋なのかを見分ける術が無い為、ちゃんと数えないと違う部屋に入ってしまうことがあるからだ。

 俺も一回間違えて上の年齢の奴らの部屋にノック無しで入ってしまって気まずい状態になったことがある。


 ………田舎ってませてるよね。うん。本人たちのプライバシーもあるから言わないし、思い出したくも無いが。その部屋は男女共用であったとだけ言っておこう。


 「ここだな」


 俺は、その扉の前に立った後。もう一度、その場から端を見て数え直す。

 ………4、5、6。そして目の前の…7と。二回も数え直したのならば、もう大丈夫だろう。


 【………そこまでしなくてもよいと思うが。それに視たと言っても、子供同士が同じベッドで手をつなぎ合ってただけだろうに。別に、あの年で乳繰り合ってた訳でも無い。


 ―――それに、主の未来の方が、もっと凄い事になってそうだが?】


 ファーさんが少し、俺を揶揄うかのようにこちらに語りかけて来る。

 いや、ああいうのって普通に、前世ではもっとすごいの見て来たし。手をつなぎ合ってた程度でほとんど何も思わないが。逆に、初々しすぎて見てるのが辛い。

 何だろうあの空気。あれ以上のことは画面越し(サブカル)で散々見て来たのに、リアルの空気感?と言うのだろうか、アレだよね。目が合っちゃったもん。二人で目を合わせて空間を作っていた中に土足で入って来た空気読めないやつをにらみつけてたしね。

 あの何とも言えない三人だけの無言の空間はもう味わいたくない。


 しかも、後日ばったり部屋に入ろうとしていた二人と廊下でばったり会っちゃったし。あの時は本当に気まずかった。


 それと、このトカゲは何を言ってるのだろうか。


 『前半はまあ、あの時は状況が悪かったから良いとして、後半は無いだろう。彼女を見捨てた俺が人並み以上の幸せを享受するなんてこと。出来るわけない。それに、そんなことする相手なんかいない』

 【………そう、か。まあ、言っているがいいさ。未来など誰にもわからないのだから】

 

 何か、考えたかのようなそぶりを見せるとファブニルは、また黙りだした。

 

 ………何を言いたいんだ。まあ、それは置いておいて、このままだとアレだしそろそろこのドアを開けないといけない。

 そう思った俺はドアノブに利き手を掛け、もう片方の手でノックをしようとする。

 その時、部屋の中から声が聞こえて来た。どちらも聞き覚えのある高い声だ。それに俺は少し驚く。俺はこの中にいる奴らがてっきり寝ているのだと思い、起こしにやって来たからだ。




 『何で、あの流れから二度寝を決行できるの!?あの流れは私と一緒に走って先に行った裏切者たちに文句を言う流れだったでしょう!?』

 『いや、そんな流れではないでしょう。休息日なんだから毎日の礼拝も無いんです。………それに、遠足なんかなくても毎日楽しいでしょう?なら、良いじゃないですか』

 『うぅ………けど!あんたたちと遊ぶのと、みんなで遠足するのはまた違うっていうか。なんて言うんだろう?別腹?』

 『………』

 『あ、いや、その………別にあんた達を軽く扱ったとかではなくて………マオ?』

 『………Zzz』

 『寝るなぁぁぁあああ!!!』



 

 ………まるで、いつも通りの会話である。声色から今日は朝から元気だと言う事が両方とも伝わってくる。

 それにしても、いつもなら他の部屋から苦情が出るほどには大きな声だ。今日は、遠足でみんながいなくて良かった。


 少し、聞きすぎてしまった。そろそろ入るか。中にいるなら別にノックは良いだろう。俺は、事前に手を置いていたドアノブの円形部分を掴み、軽く回すと何も考えず声をかけながら足を踏み入れた。


 「おい。ユウ、マオ。シスターマネが朝食の用意をしてくれている。起きているのなら、早く着替えて食堂に―――」

 「ほら、早く脱ぎなさい!そして寝間着からすぐに着替えなさい!早くしないと追いつけな…く」

 「いやー!ユウの悪魔ー!人でなしー!追いはぎ―!」


 そこには、金髪の少女が寝間着とさほど変わらないが、それよりは少し動きやすそうな服装でもう一人の銀髪の少女の寝間着を力尽くで剝ぎ取ろうとしている光景だった。

 そしてその片方の金髪の少女と、侵入者である俺との目が合い。彼女の言葉が中途半端に中断され、無言空間が作られる。


 「………」


 俺は、少し無言のままフリーズすると、ちょうど回した後で手を掛けていたドアノブを掴み、音を立てぬようにゆっくりと、無言で、けれど迅速に、扉を閉めた。

 

 【………ほ、ほら、主。確認しても意味無いだろう?】

 『部屋があってても………中身が間違ってるじゃん』


 俺はドアノブから手を離すと、その手で両目を覆った。



・土下座型シスター

 現在進行形で洗濯中。


・ファブニル

 ファーさんが、某青い空のファンタジーの某堕天使の愛称だったので急遽変更。全部の名前を言うと少し長い。


・【契約・代償魔力1パーセント対価・視力強化】

 基本的に外界に対して、魔力を使い干渉を及ぼすのが魔法だとするのならば、これは極東の島国に存在する【呪術】や『仙術』に近い物であり、肉体の内部に干渉するものである。

 魔法の身体強化などとは違い、表面を魔力で覆うのではなく、内部の似て魔力を燃料とし肉体の密度を上げるものであり、魔法などと比べて瞬間火力や派手さは無いがじわりじわりと相手を追い詰めるものや、あったら便利というようなものが多い。

 因みにこの時の主人公の魔力は残り21%である。


 『ちなみに、この契約って何なの?』

 【性質的には、呪術に限りなく近いが、司っているのが魔力の神なので魔法】

 『へえー』


・問題児

 この教会で問題行動が特に目立っている子供三人を指す言葉。一人は社交的で他の子とも話している姿がよくみられるが、魔物が蔓延る森にシスター同伴も無く無断で行ったり、もう二人はほとんど誰とも話すことは無く、一人はずっと鍛錬し、もう一人はずっと本を読んでいる児童たちの事。

 なおほかの子供達は普通に暮らしている模様。


 トラウマ系主人公「いったい我々のどこが問題児だというのですか!」

 シスター「どこもかしこもだ!!!」


・仕舞っている剣

 どこにしまっているとは言わないが、俺のエクスカリバーを見せてやる! みたいな展開にはならない。


・春の日差しと風

 今日は15月7日月の日でございます。皆様も週の初めで体が重いと思われますが、今日も張り切って頑張りましょう!

 (同時刻帝国歴325年朝の鐘の放送より)


・金髪の少女

 未来は皆の人気者。みんなが頼って、たのんで、依存して、彼女の力に溺れてしまう。


・銀髪の少女

 未来は皆の嫌われ者。みんなが与えて、嬲って、楽しんで、彼女の力に震えてしまう。


・手と手を合わせた男女

 目と目が合う~瞬間。す~木だと!実は男に見える方が女で、女に見える方が男。


 この世界の住民は情緒の発達がこっちの世界と比べて二倍ほど早い。


・主の未来


 未来など、きっと誰にもわからない。わからないから素晴らしい。わかり切った人生なんて只の操り人形だろう。

 だから!俺は賭けるのさ!この命!この魂!この全て!

 ………コール。俺は、半額を赤に賭ける!


 『流浪の博徒スッカラン』より引用



 駄文。


 この世には、2つの人類が存在する。

 (投稿が)速い奴か、遅い奴だ。

 そんな私は遅い奴。どうも!お久しぶりです!覚えてますかね?

 そして、今回はすみません。凄いオクレテーラ。

 まあ、次は早めに投稿…出来るかどうかは分かりませんが頑張ります!

 ーーーーそれはそれとしてエ●ペ●クス楽しーーー


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