停泊
といってもその時は異常なほどの暑さで、意識は朦朧としていて、今となっては本当におぼろげな記憶だったが。
死にかけてるリューオスを、誰か女の人が介護してくれていたような記憶がある。
女の人というより少女だったような……?
あの水鏡の少女に似ているような……
子どもの頃、その少女とテッドの舟の中へと入り込んだ。
手を繋いで、二人走って……
その子もリューオスと同じで、翼がなかったから、年の近い子と走って遊ぶというのが新鮮だった。
他愛のない遊びをしていたような記憶がある。
テッドの舟は地面の下、つまり天空岩の下へと通り過ぎて行った。
地上の方へ降りて行ったかのように見えたが、リューオスはそうじゃないと直感していた。
リューオスはかつてのテッドの舟の姿を思い出していた。
天空岩にドッキングする要塞のような街のような宇宙船。
その場所も覚えていた。
リューオスはその場所へと走り出していた。
* * *
リューオスは鉄柵の前にいた。
鉄柵の向こうに半球形の宇宙船が停泊していた。
それがテッドの舟だとわかった。
リューオスは記憶どおりだった。テッドの舟は天空岩の淵にドッキングするように停泊していた。
宇宙船ではあるが、テッドの舟は小さな街そのものだ。
半球形のドーム型の中に街があり、その中に竜人と人間とが暮らしている。
リューオスも何度か舟へと遊びに行った記憶がある。過去に何度かこうして舟は来ていたのだ。
かつての天空岩に鉄柵はなかった。以前は当たり前のように天空岩からテッドの舟へと行き来してたのだ。
リューオスは鉄柵をどうにか登ろうとした。
鉄柵の高さは五メートルほど。
翼のないリューオスではどうにもならない。
そんなリューオスを、いつの間にかそばに来ていたファニィが心配そうに見ていた。
ファニィを踏み台にということを考えない訳ではなかったが……
その時ヤイノが飛んで来た。ヤイノは宇宙船が気になっていた。