接近
だが、それでは説明がつかないことに気づいた。
天空岩の一日は24時間。
地上に落ちた弟タツキによれば、地上も同じく一日24時間らしい。
ヤイノの考えでは、惑星と衛星の一日が同じ時間ということはほぼ有り得ないんじゃないかという結論に達した。
天空岩は地上の上を公転しているのではないかという考えだったが。
そこでまた別なことに気づいてもいた。
そもそも天空岩が一つの星だとするなら、そこから弟が落ちるということはあり得ないはずだ。
やはり天空岩は、地上の上に浮いている。
それは、一体どういうことなのか?
ヤイノの心の奥底でずーっとそれがひっかかっていた。
* * *
その日、タツキとヤイノと家の田んぼの手伝いをしていた。
タツキの家では稲を栽培し、米を物々交換して生計を立てていた。
「あれ、飛行機? ロケット?」
タツキは空を見上げそんなこと言った。
空高く、ぽつんと小さな黒い点だったものが近づいてきていた。
近づいてくるとかなりの大きさなのがわかった。
「宇宙船だよ」
タツキの兄――ヤイノはそんなことを言う。
「宇宙船?」
「テッドの舟だよ。宇宙を旅する街で竜人と人間が乗ってるんだって。久々に天空岩に来たんだ……」
ヤイノは感動してるようだ。
「テッドの舟かー。あれなら地上に行けるのかな」
とタツキ。
タツキは元気に振舞ってはいるが、時々地上でのこと思い出してるようで寂しそうな顔をする時があった。
「行けるだろうな」
「いいなー。――おーい、俺も乗せてくれ」
タツキは宇宙船に向かって手を振ってみた。
テッドの舟は地平線の向こうへ消えて行った。どうやら地上に向かっているようだ。
* * *
――同じ時刻。
桃畑で、リューオスもテッドの舟を見ていた。
それがテッドの舟という名前であることは知っていて、なぜあの船の名前を知ってるのか自分に疑問を持った。
そんなリューオスの脳裏にある出来事が思い浮かぶ。
それは、地上の火山の大噴火の時だった――