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機械仕掛けの魔法使い~テッドの舟~  作者: チク
小さな恋の物語

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37/43

ファーストネーム


 全身火傷のリューオスを看病してくれたのがシズクだった。

 しばらく意識が戻らなかったという。目が醒めた時、シズクが泣きながら喜んでくれた。



 リューオスはいろんなことを思い出していた。

 噴火の前に一緒に遊んでいた少年のことも思い出した。


「リグ……」

 ふと、その少年の名前をつぶやく。

 大噴火の前にテッドの舟は旅立った。その舟に乗ってた少年。

 その少年のフルネームは……



 ……リグ・シュミットだ。

 テッドの舟でやってきたあの色付きのグラスをつけた青年シュミットこそがあの時の少年だ。

 どうしてその少年のことを忘れていたのか。

 どうしてシュミットはまるで他人のように振舞っていたのか……


「ははは……は」

 リューオスは昔の思い出に笑みを浮かべていた。


 そして、今度は涙が溢れてきた。

 昔のことを走馬灯のように思い出される。親や友達や恋人や、色んな思い出や感情がごちゃごちゃだった。


「……リューオス、泣いてるの?」

 背中のメノウがそんなことをつぶやく。


「あ、あぁ……自分でもよくわからないんだ」

 涙を拭い、答える。



「……私を置いて行って」



「え?」

 思わず少女の方を振り返る。さすがにおんぶしている子の顔を見ることはできなかったが、泣いているのはわかった。


「そうすれば、リューオスが助かる確率が上がるから」



「少し黙ってろ」

 リューオスは少女の頭を撫でる。

 撫でるつもりだったが、後ろに手を回し、ぐしゃしゃ髪の毛をかき分けるような仕草になった。

「子どもはそんな気を使うな。大丈夫、きっと……」


 リューオスは歩き続ける。




     * * *


 シュミットが魔導電話をかけても繋がらないので、タツキは天空岩に戻って来た。

 リューオスの家の魔導電話を借りようと思ったのだ。


 その途中で桃畑に寄ってみる。


 ヤイノとスティナはいなかった。

「帰ったのかな」

 二人がどこへ行ったかなんてタツキはさほど気にしていなかった。


 今はともかくリューオスの安否が気になる。

 水鏡を覗くとリューオスは無事だった。


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