たかがされど
「これ? どうやって使うの?」
「その使い方であってるよ」
「繋がらないよ」
「変だな」
そんな二人をよそに、ふとシズクは思い出していた。
地上にももう一人シミュレーションドールがいた。かつての大噴火に巻き込まれ連絡がつかなくなった。彼はどうしたんだろう?
* * *
「シュウ……」
アッゼは、思い切ってその名で呼んでみた。
その人物は自分をシムを名乗った。
シュウという名前で振り返るはずもなかったが。
シムは振り返り、アッゼを見ると笑顔になった。
「……シュウ?」
アッゼはその名前で呼んでみる。
だが……
「シムだよ」
「そうだったな」
シムは畑を耕していた。その手を止めアッゼに向きなおる。
「そのシュウって子、僕にそっくりなの?」
「あぁ」
「前に僕に瓜二つの子に会ったんだ。世の中には同じ顔の人物が三人いるっていう都市伝説があるよね」
と、シムは笑う。本人なりのジョークのようだ。
「いや……」
アッゼはシムを見る。
瓜二つというレベルじゃない。確実に本人としか思えない。
言いよどむアッゼに、シムはこんな提案をしてみる。
「デザートの桃でも食べていかない? 丁度冷えてる頃だと思うんだ」
* * *
メノウは後悔していた。
家出なんかしなきゃよかった。
イチゴジャム食べられたくらいで…… くらいで?
たかがイチゴジャム。されどイチゴジャム。
楽しみにしていたイチゴジャムを食べられた怒り、それは筆舌に尽くしがたい。
なんでイチゴジャムを食べられ、こんなところに置き去り(?)にされて、こんな理不尽な目にあってるんだ。
メノウはふつふつと沸き上がる怒りを感じた。
「お嬢ちゃん、名前は?」
そんな時に、名前を聞かれメノウは心臓が飛び出るくらいびっくりした。
メノウは名前を名乗るのだった。
「メノウっていうのか。そうか……」
リューオスも名乗っておく。
なんとなく、メノウという少女がなんでこんな場所にいたのか聞いてみる。
話を聞いても会話する自信がなかったが、沈黙の状態よりはすっといい。
それにもし、この状況にリューオス一人だけ放り出されていたら、とっくに諦めていただろう。




