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機械仕掛けの魔法使い~テッドの舟~  作者: チク
小さな恋の物語

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32/43

たかがされど


「これ? どうやって使うの?」

「その使い方であってるよ」

「繋がらないよ」

「変だな」


 そんな二人をよそに、ふとシズクは思い出していた。

 地上にももう一人シミュレーションドールがいた。かつての大噴火に巻き込まれ連絡がつかなくなった。彼はどうしたんだろう?




     * * *


「シュウ……」

 アッゼは、思い切ってその名で呼んでみた。


 その人物は自分をシムを名乗った。

 シュウという名前で振り返るはずもなかったが。


 シムは振り返り、アッゼを見ると笑顔になった。

「……シュウ?」

 アッゼはその名前で呼んでみる。


 だが……

「シムだよ」


「そうだったな」

 シムは畑を耕していた。その手を止めアッゼに向きなおる。


「そのシュウって子、僕にそっくりなの?」

「あぁ」

「前に僕に瓜二つの子に会ったんだ。世の中には同じ顔の人物が三人いるっていう都市伝説があるよね」

 と、シムは笑う。本人なりのジョークのようだ。


「いや……」

 アッゼはシムを見る。

 瓜二つというレベルじゃない。確実に本人としか思えない。


 言いよどむアッゼに、シムはこんな提案をしてみる。

「デザートの桃でも食べていかない? 丁度冷えてる頃だと思うんだ」




     * * *


 メノウは後悔していた。

 家出なんかしなきゃよかった。

 イチゴジャム食べられたくらいで…… くらいで?



 たかがイチゴジャム。されどイチゴジャム。

 楽しみにしていたイチゴジャムを食べられた怒り、それは筆舌に尽くしがたい。

 なんでイチゴジャムを食べられ、こんなところに置き去り(?)にされて、こんな理不尽な目にあってるんだ。


 メノウはふつふつと沸き上がる怒りを感じた。


「お嬢ちゃん、名前は?」

 そんな時に、名前を聞かれメノウは心臓が飛び出るくらいびっくりした。


 メノウは名前を名乗るのだった。



「メノウっていうのか。そうか……」


 リューオスも名乗っておく。

 なんとなく、メノウという少女がなんでこんな場所にいたのか聞いてみる。

 話を聞いても会話する自信がなかったが、沈黙の状態よりはすっといい。


 それにもし、この状況にリューオス一人だけ放り出されていたら、とっくに諦めていただろう。

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