水鏡に映る少女
* * *
リューオスは、水鏡に映る女の姿が気になっていた。
水鏡は桃畑の中にある。
元は水たまりだったが、その下から黒い四角い岩が盛り上がってきた。
上は水も入るような窪んだ形になっており、そこに水を入れるとどこか別の所の映像が見えるのだ。いつしかリューオスはそれを水鏡と呼んでいた。
下は若干地面に潜り込んだ洞穴のようになっていて、リューオスは数回ほどその洞穴から地上の居住区へと瞬間移動していた。なのでその岩を魔導エレベータと呼んでいた。
地上の居住区へ瞬間移動して、そこに住んでるシムという少年に会った。後日、桃をおすそ分けに行って、お返しにパンをもらった。
話を戻そう。
水鏡に映っているのは、女というより少女だ。
年齢はタツキぐらいだろう。
栗色の髪の少女で、どこかシムにも似ていた。
その少女はほぼ横たわっているか、たまに座っているかの状態。
眠ってばかりで、食事もとってなさそうなその姿にリューオスは心配になった。
(やばいな、俺ってストーカーかも)
そう思いながら、今日も水たまりに映ったその少女を見ていた。
ふと、窓らしきものがあって、その外に鉄柵が映ってるのが見えた。
(ということは、天空岩のどこか……?)
鉄柵は天空岩の外周にはりめぐらされている。
余談だが、タツキが地上に落ちて以来、ドラム缶型のロボのファニィがよりよく鉄柵周辺を見張るようになった気もする。
天空岩といっても意外に壮大だ。
この少女に見覚えがあるような気はするのだが、この少女がいるのがどの辺か検討がつかなかった。
* * *
ある日、リューオスは池に行って、ホウセンカに聞いてみた。
ホウセンカは翼のある竜人。釣りが趣味でほぼ毎日、池に来ては釣りをしている。
「栗色の髪の女の子に心当たりってあるか?」
ホウセンカは気の抜けた様子で釣り竿を掴んでいる。
「ん? なんだ? そういう趣味か?」
「いやいや、幼女に興味はないよ」
「そこで幼女って単語が出る辺り、怪しいもんだ……」