幸せを願う
「じゃあ、もし仮にマーキュアは人間の男性に恋したら諦めるの?」
シュミットが尋ねた。
マーキュアは竜人だった。
「いや、私は研究があるし……」
マーキュアは女性でありながら自分が子どもを産むということを考えていないようだ。
「そういうんじゃなくて、シズクと付き合った男性は竜人で、その子どもが生まれる可能性が無くなるのは問題じゃないかと……」
「仮にそれが本当に問題なんだとして、マーキュアはシズクの恋の邪魔するの?」
さすがに、そんなことはしないと思うが……
「大噴火の後、テッドの舟はこの星に近づけなかったわけで、シズクは天空岩の復旧のため色々頑張って来たわけだからさ、その幸せを願ってあげようよ」
「まあ、そうだな」
マーキュアは深く頷いた。
「私が間違えてた。今の話、忘れて」
「それを聞いて安心した」
シュミットはにやりとした。そして、自分の願望を語る。
「僕はシミュレーションロイドとの混血児がもっと増えて、シミュレーションロイドって言葉自体が無くなればいいなと思ってるよ」
* * *
メノウは自分がやばい立場にいることに気付いていた。
ゲートを通り抜けてきたはずなのに、自分がいたのは何もない地面の上。
ゲートへ引き返す手段がないので、テッドの舟には戻れない。
空の上にテッドの舟があるはずだが、空は厚い雲で覆われている。
メノウはしくしく泣きだした。
だが、誰も気づく者はいなかった……?
* * *
「えっとー? 何してんだ?」
桃畑に戻って来たリューオスは、その場にいる一同を見てきょとんとしていた。
「この前、桃貰ったから、今日はそのお返しに桃のジャム持ってきた」
と、タツキ。
本来は兄弟で桃のジャムを届けに来たのだ。
リューオスはジャムを受け取り、礼を言う。
「で、そちらさんは?」
リューオスは、でかい犬を従えた少女に尋ねた。
「私、エルフのスティナ。タツキに会いに来たの」
エルフという単語を聞いて、リューオスは大層驚いた。




