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兄登場

 その時……


「……タツキ」

 消え入りそうな小さな声だった。


「うわっ!」

 危うく落ちそうになった。

 誰もいないと思っていたのに、自分の名前を囁かれタツキは心底驚いた。


 振り返るとそこにいたのは、


「ヤイノ!」

 タツキの兄のヤイノだった。

 この兄弟は、互いを名前で呼び合っていた。



「大きな声を出して驚かせたらまずいと思って……」

 と、ヤイノは弁明した。

 ヤイノは翼のある竜人で、音を立てずそうっとはばたきながらタツキに近づいてきていたようだ。


「もっとびっくりした!」

 タツキはまだどきどきしていた。



「とりあえず、このロープをつかんで」

 ヤイノは手にロープを持っていた。そのロープをタツキに持たせる。

 ロープは上からぶら下がっている。

「両手でしっかり持って」



 ロープは上から引っ張られ、タツキの体は上がって行った。

 こうして、タツキは天空岩に帰って来た。




     *


 天空岩の上の部分には、鉄柵で囲まれている。

 基本的に竜人たちはその鉄柵の中で暮らしていた。

 ロープはその鉄柵に結ばれていた。


 そのロープのそばにドラム缶型のロボットが一体。


「もう大丈夫だよ、ファニィ、ありがとう」


――ファッティじゃないんだ。

 ヤイノの言葉を聞いて、タツキは天空岩に帰ってきたと改めて思った。


 天空岩にいるのはファニィで、地上にいるのはファッティと呼ばれていた。

 タツキは、目の前のファニィが懐かしくもあり、寂しさも感じていた。



「タツキ、頑張ったな。つらかったんだな」

 と、ヤイノ。


「いや、別にそんなにつらくは……」

「泣いたんだろ。いいよ、隠さなくて」

「え!」

 タツキは慌てて服の袖で顔を拭いた。

 袖には、泥やら鼻水がついてきた。


「あ、違うよ。これは汗だよ」




 それから、ヤイノはタツキが隠れて泣いている様子を度々目撃してしまう。

 普段のタツキは明るく振舞っているから気づかないふりをしていた。


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