双剣の少年
「ヴァイスあとは任せた...」
父さんの声が聞こえて僕は目を覚ました、
しばらくの間ぐっすりと眠っていたようだ。
あまり高くない天井を僕は見つめていた、
冷たく、ヒンヤリした空気が僕の身体を冷ます。
「起きたか」
声の方に首を動かすと、
見知らぬ老人とさっきの少年が僕を心配そうに見つめていた。
僕はゆっくりと身体を起こした。
「ヴァイスお主を探したぞ」
「え?何で僕の名前を」
「お主はジークの息子だろう...昨日戦い終えた...」
「父さんを知ってるの!?父さんは今どこにに!?」
勢いある質問を僕は老人にした、
老人は少し眉間のシワを寄せて僕を睨んだ。
「"白銀龍"に捕食された、ジークの弟ルークが駆け付けた時にはもう間に合わなかった」
そんな...、
父さんが戦死.....?
父さんが負ける事など考えられない。
いつも遠征に行って、凱旋の時は笑顔で拳を天に立てて、どんな魔物にも勝ってきた。
ありえない...、
涙と鼻血が僕の頬を伝って服を汚す。
「ルークも後から戦った、だがルークは右腕と両目を無くして、“ヤツ”を殺す事は出来なかった、お主の母カレンも亡くなった.....」
心臓がはち切れそうなくらいの悲しさに溺れた僕はおかしくなりそうだ。
心の中であの龍を思い出し憎しみにも溢れていた
絶対に殺してやる...。
憎しみで、
腹部の傷の痛みなど可愛く思えてしまう。
大切な人が次々と溢れ落ちて行く、
後十年ほど早ければ僕が騎士になって助けれていたかもしれない...。
騎士になりたい、
強くなりたい、
涙と鼻血を何度も何度も飲んで僕は再び誓う。
「強くなりたい....」
老人は驚いた顔を見せたが、
立ち上がって僕に言葉を返した。
「ルークに会うといい、この村の何処かにいる」
そう言って部屋を出て行った、
部屋には僕と双剣の少年が残った。
少年の名はグレイと言う。
グレイはこの村から離れた何処かの街から来たそうだ、
街が魔物達の軍勢に襲われて、逃げて来たらしい。
同じだ.....。
グレイは何故か呆然としている。
頭が痛いのか、頭を抱えて、
「違う....」
とボソッと呟いた。
何が違うのか分からない。