「機桜王国の軍部事情」
カガチ型4番機ホオズキが、〈夜香木〉部隊のナイトジャスミンに惚れたらしい。
酷いネーミングなのは開発局長のいつものアレなので置いておくが、ホオズキはどこでナイトジャスミンに出会ったのだろうか。
ゴリゴリに前線配置の戦術級戦闘ロボットのカガチ型が、貴人護衛暗部の夜香木型と、出会えるものなのか。
夜香木型とか、メンテナンスまで王室専属技師がやるから、王立開発部技師の俺達ですらその姿を見たことがないっていうのに。
「で、夜香木型って、どんなんだったの?」
「ウゼェ……誰だ、このバカに喋ったのは……」
調整台に横たわるホオズキの傷んだ装甲を剥がしながら、インタビューを敢行してみる。
「いや、お前の恋愛事情とかにはさして興味はないんだ。ただ、秘密のベールに包まれた夜香木型の情報が知りたいだけだから」
「言うかよ。テメェ、開発部の主任くらいなら、いくらでも換えはきくんだぞ?」
ま、そうだろうね。そんなこと俺が知ったら、それこそ暗部に……。
「あー、その場合は夜香木じゃなくて〈月光花〉がみれるのかな?」
「いや、笑顔で暗部の粛清者の話をすんなよ。シャレにならんわ」
音に聞く、先々代の技王が作った最高傑作のロボット。王の前にしか姿をみせない裏の最強存在。
「そもそも、テメェみたいなザコ消すのに月光花が出張るかよ。せいぜい新人の練習台だろ」
「一理ある。どっちみち、戦闘系のロボットの動きが、俺の眼で捉えられるわけないか」
「いい加減くっちゃべってないで、早くメンテしろよ。休戦中つっても、ちょっかいかけてくる奴はいるんだぞ」
「はいはい。あ、そういえば、この前の試供品どんな感じだった? 使った?」
「あー……まぁ、エグかったな。効率は確かにいいんだが、〈宝石の塔〉の連中は発想がヤバイな」
「エキウム伯の傘下の開発部局だからね。敵対者に容赦するような……んん?」
「どうした、なんかエラーでも出たか?」
「……お前に、出頭命令だ。王室からの」
「は?」
「正確には、第4王女様からだ。帰投次第、平時装備に換装して参られたし、だと」
「…………」
「……あ、もしかして、夜香木の」
「……いいから、命令だろ。さっさと平時装備に換えてくれ」
「おいおい、おいおいおいおいおいぃ! まじかよ、おいおいおい。なあコレ、俺もついていっていい?」
「……ウゼェ……」