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短短編集  作者: 酸化黒蟻
3/6

「隣にいる君たち」


 いわゆる「ロボット」が人権を獲得し、幾世紀か経つ。


 人類のコミュニケーションの変化とそれに伴う人口減少が後押しし、いまや「世界人口」の4割はロボットだ。


 繁殖は人工的に行われ、生産は機械的に行われ、都市部に限ってみれば、人間と人間が直接会うことすら稀な世界。


 人のパートナーは、ロボットだ。


 遺伝子レベルで、完全に適合するようデザインされ、学習し、常に最適化されるロボット。


 幼き頃は親として、大人になれば伴侶として、老いて旅立つときまでも共にある。


 人間が愛を分け合う、すべての対象がロボット。




「というような世界です」


「ふーん」


 ここはどこかの街の、どこかの家の、寝室。ベッドの上で、胡坐をかいた幼女と、正座をした女性が向かい合う。


「ふーんって、聞いてました?」


「聞いてたけどさーぁ……もう聞き飽きて逆に忘れた感じやわ」


 真面目そうなおかっぱで眼鏡の女性が、ロボット。だるそうに爪をいじってる天然パーマの幼女が、人間。2人は、パートナーである。


「パートナーなのに、何で2人とも女なん?」


「それはあなたが遺伝子レベルで女を求めてるからですが?」


 百合である。肉欲よりも、友情を最優先に考えてるタイプである。女同士の。


「まぁええわ。そんなことより、また昔のアニメ見せてんかぁ」


「えぇ……なんか、草創期のアニメを見せだしてから、結構な悪影響を与えてるような気がするんで、嫌なんですけど……」


 変な関西訛りも、アニメの影響である。ホルモン屋の少女リスペクトである。


「まぁまぁ、見とる間ひざまくらしたるさかい。イケズせんとってぇなぁ」


「しょーがありませんねぇえ! ほら、早く!」


 ポンポンと自分のヒザを叩くロボット。めっちゃ嬉しそうである。ニッコニコしてる。


 そして、アーカイブからデータを引き出し、ひざまくらした少女が見やすい位置の壁に映し出す。


 ロボットが幼女の頭を優しくなでながら、しばらくアニメの音声だけが部屋に流れる。



「……なぁ、ウチにも、オトンとかオカンって、おるんか?」


「そうですねぇ……遺伝子上の親は存在しますね。バンクに登録されてる、過去200年のどこかには」


「ふーん」


「ふーんって――」


「ま、ウチにはここにちゃんと家族おるし。なぁ?」


「~~~~~っ!」


「ちょ、ちょぉヤメてんか! ワシャワシャされたら見られへんやん!」


「あらあら、ふふふっ。見おわったら、おやつにしましょうねぇ♪」


「ぬぅぅ……あ、ウチ、ホルモン焼き食べたい!」


「いや、おやつにホルモン焼きて。おっさんの酒のつまみか」


「誰がおっさんや」


 そして2人で笑いあい、仲良くアニメの続きを見た。おやつに食べたホルモン焼きは、思いのほか美味しかったという。



 遠い未来に、あるかもしれない、2人の話。


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