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ルミナスは、魔力を移す

 イアンは、手の平につるりとした光沢のある水晶と、もう片方の手の平には、シルバーのブレスレットを乗せて見せてくれた。ブレスレットの中央には宝石が一つ付いている。ベリルの手首にあった魔力は、このブレスレットからだと察した私は、イアンが回収してた事に感謝の念を抱きながら、アクア様に顔を向けた。


「アクア様、これに私の魔力を移しても大丈夫でしょうか? オルウェン王は、この水晶とブレスレットに指輪の魔力を移していたようで…。」


「魔力が抜けたら、見た目だけじゃ石か魔石の区別が付かないけど…ブレスレットの方で試してみたら?」


 アクア様の言葉を聞いて、イアンがブレスレットを私に手渡してきた。

 手の平に乗せた私は、もう一方の手を宝石の付いてる部分に触れながら魔力を移そうとし……


「あ、気をつけてね。移しすぎるとルミナスの魔力に耐えられなくて、粉々になっちゃうよ。」


 アクア様の助言を聞いて、一旦やめる。


 ……う〜ん…どうしよう……。私を覆ってる魔力の、光だけが移るようにイメージしてみようかな。


 私は集中するために、瞳を閉じてイメージした。



 すると…



「ルミナスちゃんが、よく見えるようになったわ。」リゼ様の明るい声が聞こえて、私は瞳を開ける。

 

「…本当だ。あれだけ眩しかったのに…上手くできたみたいだね。」

 アクア様は目元を擦って、大きな瞳をパチパチと瞬かせた。可愛いなぁ…と思った事は、心の内に留めておく。どうやら、私の太陽光は無くなったようだ。


 ……アクア様達は大丈夫。後は……


 私はイアンに詰め寄った。


「イアンから見てどうですか? どんな風に見えますか?」

「…え? どうって……その、えっと………」


 イアンをじーっと見つめながら尋ねたけど、イアンは視線を彷徨わせて、なかなか答えようとしない。


「…イアン?」


 何か変に見えるのでは…と不安を感じていると…


「……す、凄く、綺麗…だけど…」


 目線を合わせて答えたイアンの顔は……真っ赤だ。

 ―――う、嬉しいけど! 違うよ! 私は光ってるか確認したいんだよ!

 私まで顔が熱くなる。イアンの後ろから「…ルミナス、光っていないから大丈夫だぞ。」とサリシア王女が言ってくれた。イアンからの不意打ちに動揺したけど、光が無くなったことに安心する。 ブレスレットをよく見ると、白色のキラキラと輝く宝石は、ヒビも入っていない。


「それは僕達が指輪にしたように、ルミナス自身の魔力と繋がりがあるよ。イアンにあげるのかな?」


「イアンに…」


「俺に…?」


 アクア様がニコニコと話しかけてきて、期待のこもった瞳でイアンが私を見つめている。「…どうぞ…」私は顔の熱が冷めないまま、イアンに手渡した。イアンは嬉しそうな笑みを浮かべて、手首にブレスレットを付けている。…私は心臓が鳴りっぱなしだ。


「…ねぇ、ちょっとアナタに話があるわ。」

「は、はい。なんでしょうか?」


 突然リゼ様が、イアンの腕を引いて二人が私達から離れていった。なにやら二人で話をしているようだ。



 ……どうしたんだろう?



「お話中失礼致します。そろそろ日が落ちて参りますが、この後魔人様方はどうされますか?」


 陛下が歩み寄ってきて、アクア様とフラム様を交互に見て尋ねた。空を見ると、日が大分傾いていた事に気づく。


「儂等はもう帰」

「フラム、帰らないわよ。まだやる事が残っているわ。」


 アクア様の言葉を遮り、リゼ様がこちらに急ぎ足で戻ってくる。リゼ様の手にはイアンが先ほど持っていた、水晶があった。


「私達三人は、ここに残ってやる事があるの。あなた達は町に戻って構わないわ。宴に間に合うように行くわね。」


 リゼ様がニッコリと微笑んでるけど、陛下は…固まっていた。


「そういえば、今夜は宴だもんね〜」

「…ふむ…美味い酒はあるかのぉ…」


 アクア様が頭の後ろで腕を組み、フラム様は自身の髭を撫でながら言った。……三人共、宴に参加する気満々のようだ。私は陛下が、これから三人の接待に忙しくなる姿を想像した。


「し、しかし…町では、どのように接したら良いでしょうか?」

 陛下が少し動揺した様子で、アクア様に向かって尋ねた。


「僕達が魔法を使ってる姿も、見た人いるよね〜。もう村の子じゃ通らないかなー…。」

 う〜ん…と顎に手をやり、アクア様が悩むような仕草をしていると…


「あら? そんなに悩む必要ないわ。私達三人は、旅人でいいじゃない。偶然この国に立ち寄った事にしましょうよ。 」


 リゼ様が頰に手を当て、首を傾けながら話「…まぁ、なんでもいいや。レオドルー、適当によろしく。」とアクア様が陛下に告げた。


「……はい、かしこまりました。」


 陛下は難しい顔をしていた。もしかしたら、アクア様は獣人だから良いけど、人間の姿をしているリゼ様とフラム様を町の人に、どう説明するか考えているのかもしれない。陛下はアクア様達の方から、横に体の向きを変えて、ナハト王子と向かい合った。


「…ナハト王子、話はまた後日行う。今夜は城内で休むといい。ただし、部屋から決して出ないようにしてもらうがな。」


「はい。」


 陛下の言葉に、ナハト王子は背筋を伸ばし、真剣な表情で返事した。「父上は先にお戻りください。私がこの者達を城まで連れてきます」サリシア王女が陛下に話しかけ、陛下はアクア様達に頭を下げた後、先に町に戻っていった。


「イアン、マントを貸してやれ。」


 サリシア王女の言葉を聞いて、頷いたイアンがマントを脱ぎ、ゼルバと御者台に乗る人は、マントを羽織っているため、脱いだマントはナハト王子に手渡していた。


「馬車に乗れ。フードも必ず被るようにしろ。」


 ナハト王子とゼルバ…御者台にいた人はサリシア王女に促されて、フードを被り馬車の中に入る。御者台にはサリシア王女が乗って、馬を操り町へと向かった。


「俺達も町に帰ろう。…掴まって。」

「いえ、大丈夫ですよ。魔法を使って川にまた橋を架けて、壁も…」


 私は途中で言葉が詰まる。イアンが俯いてシュン…と落ち込んでいるように見えたからだ。


「や、やっぱりお願いします!」


 私がイアンに対して体を横向きに変えると、イアンは「任せて」と言って笑みを浮かべ、私を抱き上げた。


「ルミナスちゃん、またお話ししましょうね。」


 リゼ様が笑顔で言って、軽く手を振る。アクア様とフラム様も穏やかな笑みを浮かべていた。


「はい。皆様のお話しを是非聞きたいです。」

「失礼します。」


 私とイアンは、アクア様達に向かって頭を下げ…

 イアンが駆け出す。

 あっという間にアクア様達の姿が遠くなり、橋が見えてきた。


 ……宴かぁ…食べ物は何が…あっ!!


「イアン、止まってください!」


 急に声をかけた私に、イアンはスピードを緩めて立ち止まってくれた。「どうかした?」イアンが私を抱く力を緩めて尋ね、私は一旦イアンから降り、腰に下げた袋に手を伸ばす。


「宴が始まるのは、まだですよね? 私にクッキーをくれたし、お腹空いてませんか? 町に入る前に渡したかったんです。どうぞ食べてください。」


 町の中で渡して他の人が見たら、白パンの争奪戦になるかもしれない。今なら二人だけだし。

 私が満面の笑みで、イアンにパンを見せると…イアンは目を丸くした後に……突如吹いて、お腹と口元を抑えながら必死に笑いを堪えている。


「…っふ…ごめ…まさか、パンが出てくると思わなくて…。さっきはクッキーだったし…。他にも食べ物が入ってるの?」


「い、いえ! もう入ってないですから!」


 イアンが私の腰に手を伸ばそうとしたため、私はイアンの口元にパンを押し付け、動きを止めさせる。そのままイアンは一口パンをかじり「…なんだコレ…。柔らかい…」と驚いていた。


 ……危なかった。袋の中には、イアンからもらった猫の置物が入ってる。持ち歩いてると知られたら恥ずかしい…。


 イアンは私の手からパンを取ると「一緒に食べながら歩こう。」と言ってパンを半分に割って、私にくれた。二人で歩きながらパンを食べて、私が食べ終わると、イアンは再び私を抱き上げ、走りだした。




 森と門の間には、数十台の幌馬車があった。村人達が乗せられていた馬車だ。馬は繋がれていなく、人の姿も見えない。馬はどうしたんだろう?と少し疑問を抱いたけど、厩舎に連れていったのかもしれない。門まで着くとハンスや隊の人が、すぐに中に通してくれた。


 空は茜色に染まり始めている。



 ……ひ、人で溢れてる…。


 町の中に入ると、城までの道なりは人で溢れていた。家から運んだのか、木箱が置いてあったり、木製の椅子やテーブルが並んでいる。イアンに抱き上げられたまま、人の合間を縫うようにイアンが走っていた。


 オルウェン王に操られていた、ラナちゃんのお父さんの様子や、広場にいた村人の様子が気になったけど…皆が忙しなく動いているし、邪魔しちゃ悪いと思って私はずっと口を閉じていた。





「あーー! やっと戻ってきた! もーーー! 」


 城に着くと…手に大きな籠を抱えている、マナに会った。

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