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ルミナスは、魔力感知をする

 

「……ルミナスさん、服、似合ってる…。」


「え!あ、えっと…ありがとう、ございます。」



 ルミナスは朝起きて部屋の机の上に畳んで置いてあった、黒色のワンピースに着替えてから食堂に来た。

 食堂に入るとイアンが席に着いて食事をしていて、目をパチパチしながらルミナスを見て、話しかけた所だった。

 ルミナスは褒められる事に慣れていなかった為、照れながらもイアンの向かい側に座っている、サリシアの隣へと座る。



 それからすぐに、ライラとアクアが二人で仲良く話をしながら入ってきた。

 

「アクア君!ここが食堂だよー!」


「ありがとう、ライラ王女。一緒に食べよう。」


「うん!」


 二人はルミナスが座っている、後ろのテーブルの席に並んで座った。

 ルミナスが顔だけ振り向くと、二人の尻尾がフリフリ揺れている姿が見える。


 ……可愛い!二人の尻尾が左右一緒に動いてる!

 子供の尻尾は大人より柔らかいのかな?


 ルミナスは口がにやけそうになるのを手で押さえながら、二人の後ろ姿…いや、尻尾をチラチラ見ていた。



 アクアが魔人だとライラは知らない。

 年が近い子を村から預かっていると母親から聞いて、こうしてアクアに構っているのだ。

 アクアもライラの態度を別に気にしていないようで、普通に接している。


「ライラは年が近い友達がいないから、嬉しいのね。」


 柔らかい表情で二人を見つめながら話したのは、この国の王妃、イアン達の母親だ。二人が入ってきた後にきて、今はライラの前に座っている。入ってきた時にルミナスが慌てて挨拶をすると「あらあら、あなたがイアンが…」「母上!今は食事中ですので、お話はまたにしましょう!」と慌てた様子で言葉を遮っていた。


 ミルフィー・フェイ・グラウス王妃

 黒髪は長く腰まであり、三つ編みをして後頭部で縛っていて、前髪は耳の位置まであり、真ん中で分けている。瞳の色は金色で、袖は短く足首が隠れる長いドレスを着ていた。ドレスといっても、ルミナスが以前着ていた派手な感じでは無く、深緑色のドレスには裾に刺繍のみがあるシンプルなものだ。



 皆で楽しく食事をし終えて、ライラはミルフィー王妃と共に出て行き、サリシアも隊の者達と話があると言って退室した。ルミナスはアクアに「アクア様に聞きたい事があるんですけど…」と言い、「ルミナスになら、なんでも教えるよ〜。」と笑顔で言ってくれた。



「…アクア様、俺も一緒でも良いですか?」


「んー。別に良いよ。…もしかして、また二人きりになられるのが嫌だった?」


「そ…ッ!そんなんじゃありません!俺はこの後予定が何も無かったから…!ただ、それだけです!」


 イアンが遠慮がちに聞いたが、アクアの言葉に焦って椅子から勢いよく立ち上がって、弾みで椅子が倒れてしまった。


 …?…なんのことだろう?


 二人のやりとりに、自分がいない間に何か話でもしたのかな、と疑問に思ったルミナスだったが、アクアが席を立ってイアンの隣に座り「それで?何が聞きたいのかな?」とルミナスに言ったので、思考を切り替えて「魔法の事を知りたいんです。」と昨日聞きそびれた事を聞いた。しかしアクアは……



「 嫌だよ。 」



 ……と、キッパリとした口調で言った。



 ……あれ?さっき『なんでも教える』て言ってなかった?

 アクアの拒絶の言葉にルミナスも、アクアの隣に座るイアンも目を丸くする。


「ねぇ、ルミナスは何で魔法を知りたいの?」


「え…?」


「ただの好奇心?魔法で誰か殺したいの?それとも国を滅ぼしたい?何かしたい事でもあるの?」


「え?え、えっと……」


 アクアがルミナスをじっと見ながら、続けざまに質問する。前世の記憶があるルミナスにとって、魔法は使えたら便利だし憧れていたものだ。前世では、風を操れたら空を飛んで会社までひとっ飛びだー!とか、火や水を自分で出せれば水道光熱費が浮くのになー。と妄想していた。

 無自覚で使っていた魔法をアクアに教えてもらえば、自分で意識して魔法を使えるようになるかも、とルミナスは只それだけの理由で聞いただけだ。

 特に深い理由もないし、アクアの質問が物騒なものばかりで上手く答えられずに吃ってしまう。



「アクア様。さっきルミナスさんに、教えるって言ったじゃないですか。なんでそんな風に言うんですか?」


「そ、そうですよ。お願いします!」


 イアンがルミナスの戸惑っている様子に、見るに見かねて聞いてくれた。ルミナスもイアンの言葉に便乗して、もう一度アクアに頼む。


 するとアクアは「教えるとは言ったけど、僕はルミナスに魔法を使ってほしくないんだよ。」と溜息を吐きながらも、話をし始める。


「…僕達は最初は、魔法を全然使えなかった。どうしたら使えるのか試行錯誤して、色々な魔法を使えるようになったんだ。僕は水や大地を操る魔法が得意で、使う度に魔力の量も増えていった。初めて僕が魔法を使ったのは…。」


 アクアは一度言葉を切って黙ってしまった。

 両腕をテーブルに乗せて指を組み、話す事を躊躇している姿に、ルミナスは思わずもういいです、と言いそうになるが、言葉を発する前にアクアが続きを話し始める。


「……病で苦しげに倒れている母に、僅かな水を生み出したのが最初の魔法だった。母は僕を見て凄く喜んでいたよ。私の息子は『神の子』だ、ってね。その時他の国でも魔法を使える人が見つかっていたから、神を信仰していた人々は、僕達を神の子って呼んでいた。」


 アクアが話す話は、随分と昔の話なのだろう。『神の子』と呼ばれていたのが『魔人』と呼ばれるようになる間に一体何があったのか気になったルミナスだったがアクアは「この話はルミナスに関係ないか。」と話を切り替えて「ルミナスにはさ…」と再び話し始める。



「……僕達のように、なってほしくないな…。」



 ルミナスには、複雑な顔をするアクアが、泣いているように見えた。


「それは…どういう意味ですか?」


「昨日…僕達は、魔力の量が限界になった年齢で成長が止まったって話したよね?それと、光の者は膨大な魔力があるって…。」


「はい。」


 アクアの言葉にルミナスとイアンも頷いて、理解を示す。二人の様子を見ながらアクアはすこし言いづらそうにしながら話す。

「膨大な分、魔力の限界がどこまであるのか僕達にも分からないんだ。つまりね…指輪の魔力を戻した時点で、ルミナスは僕達と同じ『人』ではなくなり『魔人』になるかもしれないんだよ。」



 ………え?


 ルミナスはアクアの言葉に唖然とする。魔法を使えたら良いとは思ったが、人で無くなるとは考えてもいなかった。魔人になりたい、とルミナスは思えない。

 そしてルミナスは先ほどのアクアの表情を思い出し、『魔人』になる事など、誰も望んでなった訳ではないのだ、と思い至る。


「ファブール王国の初代女王は魔法を使った事は無かった。魔力を持っていても、魔法を使用しなければ増えなかったし、僕達はそのまま見守るだけにしていたんだけどね…二代目、三代目と女王の代が変わる度に魔法は使っていないのに、魔力が増えている事が分かったんだ。」



 ルミナスはアクアの話す内容に、テーブルの下で膝に乗せていた手を固く握りしめる。


 ……それって…今の私の代は、とんでもない量の魔力があるのでは…?


 魔力の量を見ることができないルミナスは、アクアが言う魔力の量の限界が、どれほどか想像はできないが、アクアが言いたいことは理解できた。


「女王の魔力は女児を出産すると、自身は魔力を失い子供へと引き継がれていった。魔法を使おうとする女王もいたけど…何百年前だったかな、この国の王も馬鹿な事を考えて、光の者の力を手に入れようとした事があってね。女王は獣人の大半と、他の国の民も巻き添えにして消しとばしてしまったんだ。あの時は人が全て滅んだと思って驚いたよ。」


 アクアの話にイアンとルミナスは、顔を強張らせながら聞いていた。そこまでの力があるとは思っていなかった為だ。



「昨日話を聞いて知ったけど、レオドル王はその当時の話を代々引き継いで聞いているんだね。その事があってから僕達四人は協力して一つの指輪を作り、ファブール王国で子供が産まれたら、指輪に魔力を封じるように言ったんだ。もちろん、本人が望めば指輪から魔力を戻せるよ。…それで人がどうなっても、それは人の意志によるものだから僕達には関係ないしね。」


 アクアは微笑んではいるが、目が笑っていない。



「…それなら、なんで私には教える事を躊躇したの?」

 人がどうなっても良い、と言ったアクアに納得がいかず、思わず素で話してしまうルミナスだったが、アクアはその事に気にした様子は無く「…なんだろう。ルミナスは人のままで、幸せに生きてほしいと思えたんだ。」と今度は優しい表情で微笑んでいた。



「…えっと、つまりルミナスさんは魔法を使わず、指輪の魔力を自分に戻さなければ人のままでいられる、って事ですか?」


「うん、そうだよ。よく理解できたね。偉い偉い。」


 イアンが自分の中で話を整理したのか、顔を横に向けてアクアへと尋ねると、アクアは教え子が理解をしてくれて嬉しい先生のような態度で話す。その二人の様子を見たルミナスは自然と笑みがこぼれた。



 ……まぁ、今まで魔法を使わなくても過ごしてたんだし、これからも早々使うことはないか。



 そう思ったルミナスは「そういえば国王と指輪で繋がっているって言ってましたけど、私も自分の指輪と繋がりがある、って事ですか?」となんとなく聞いて「そうだよ。君も自分の一部を探す感覚で指輪がどこにあるかは分かると思うよ。」とアクアが答えた。



 ……自分の一部かぁ…。そういえば自分の顔まだ確認してなかった。別の姿ならすぐに思い浮かべれるけど………あれ?これ、かな?もしかして会いに行く感じで思えば、行けたり……



 瞳を閉じて頭にルミナスは、前世の薫が指輪を付けている姿を思い浮かべた。すると、魔力の反応を見つけたのだ。魔力感知をできたルミナスはつい嬉しくて、この時調子に乗っていた。


「―――ッルミナス?何して」とアクアの焦ったような声が、途中で途切れて………





「…………ルミナス?」



「………え?……お兄様?」



 …ルミナスが瞳を開けると、目の前にはブライト・シルベリア……ルミナスの兄がいた。

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