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イアン王子は、ヤキモチをやく

31話〜33話のイアン視点の話になります

 

「ラナちゃん、具合悪くない?大丈夫?」


「あ!ルミナスさん、また来てくれたんだ!大丈夫だよ!一緒にあそぼうよ!」


 湖からの帰り道、ルミナスは休憩の度にラナの様子を見に行っていた。

 本当に治っているのか、ルミナスは心配だった為だ。


 ラナも心配して来てくれるルミナスと、話をしたり遊んだりしているうちに仲良くなり、二人は大分打ち解けている。


 そしてイアンは、ルミナスの様子を近くで見守っていた。



 ……ルミナスさんと、あれから会話していない…。


 何を話せば良いのか言葉がずっと出ずにいたイアンは、会話の糸口になる話題を思案していた。

 


「イアン、ここで食事をするから暇なら狩りでもしてこい。」


 サリシアに声をかけられ、イアンは『狩り』の言葉にある事を思い出す。



 ――そうだ!ルミナスさんは兎を触りたがっていた!


 イアンはすぐに行動を開始する。しかし、いつもなら簡単に見つけられる兎が、探している時に限って見つからない事に焦っていた。



 ――あまり離れるわけにはいかないのに…!兎…どこだ……兎!


 イアンは木の枝に捕まり上に登って辺りを見渡し、兎以外の動物はスルーしていた。

 サリシアは食事をする為の食材を求めて狩りに行けと言ったのだが、イアンの頭には無い。


 ―――見つけた!


 やっと兎を視界に捉えたイアンは、木から飛び降り素早く兎の元に行き、兎の耳を正確に掴む。

「よし!」と思わず声に出し、逃げられないように兎をしっかりと抱えて、皆が休憩している場所へと戻ったのだが………


「ラナちゃんの耳柔らかいねー。」


「もー。ルミナスさん、くすぐったいよ〜。」


 …ルミナスがラナを膝の上に乗せて耳を撫でながら楽しそうにしている姿に、イアンは呆然と立ちつくしていた。



 …………な、なんだこの気持ち…ラナは女の子で子供なのに…。



 イアンはルミナスが自分以外の耳を触っている事に、ヤキモチをやいていた。


 結局ルミナスに兎を見せられず、イアンの捕えた兎はサリシアに「戻ってくるのが遅くてこれだけか!」と叱咤を受けながら食事の材料として使われ、食事を渡す際に「ルミナスさん、食事…」「ありがとう。」「と、隣で食べていい?」「うん。」…がルミナスと久々に話した会話だった。




 その後城まで戻り執務室で報告を終え、話をしていると知らない声がしてイアンは警戒する。

 サリシアも警戒態勢でいたため、何者かが現れても身を呈してルミナスを守る気でいたイアンだったが…



 ……何をしているんだ父上は…壁に手なんかつけて…隠し部屋?いや、執務室の向こう側は外だし…。


 …光の入り口ができ、中から人が現れた事に驚く。



 ……父上が跪いてる姿なんて初めて見た…。魔人…国王より上の位があったのか?でも見た目俺より子供だぞ?もしかして凄い年寄りなのか?


 ルミナスが混乱していたのと同じようにイアンも混乱していた。


 ……ルミナスさんの所に来る。ルミナスさん綺麗だから目に止まったのかな?……それにしても近すぎる。


 イアンは跪いて頭を垂れながらも、横目で二人の様子を見ていたが…次に起こった出来事にイアンは愕然とする。



 ―――くそっ…アクア様は敵だ!!何が挨拶だ…ふざけんな!嫉妬なんか…いや、そうなのか?

 だからってルミナスさんの前で言うなよ!



 イアンは口にして出せない分、心の中でアクアに対して非難していた。イアンにとっては、ルミナスに触れる者はどんな存在だとしても敵である。



 そしてアクアの魔法を見て、ラナをルミナスが治したという事実を聞いて驚き、レオドル王が機密事項を話す事に身を引き締めて聞いていたイアンだったが、理解が追いつかなくなっていた。



 ……だめだ。なんか見るもの聞くもの全部が凄すぎて頭が追いつかない。魔法…っていうのか。えーと…魔法を使うには魔力が必要で…宝石と繋って…アクア様の一部………ん?どういう事だ?父上は魔法を使った事が無いのに何故危険や災いだと決めつけるんだ?

 アクア様とルミナスさんの魔法を見た限り、そんな感じはしないのに…。



 イアンは知らない。魔法は人や大地を傷つけ、国すらも滅ぼす力がある事を。



 今はまだ知らない。




 ルミナスの事を知れるのはイアンにとって、どんな事でも嬉しい事だった。だからアクアとルミナスが二人で話し出した内容も必死で理解しようとしていたが…


 ……感知?魔力って…殺気や気配みたいなものか?いや、違うか………色があって、少ない?ルミナスさんも父上みたいな指輪があって………。

 ぱんく………?



 …イアンの頭の方がパンク状態であった。




 食堂で食事を終えた後、アクアがルミナスと出て行こうとして慌てて後をついていく。その姿を見ていたサリシアとレオドル王は二人してため息を吐いていた。



 ……俺だってルミナスさんを背負ったり、抱き上げた事はあるけど、手と手を繋いだ事はないのに…。そもそも男と女が手を繋ぐのは、好き同士がするものじゃないか?子供ならまだしも、アクア様は見た目より年上なのに…そんな人と手を繋いでルミナスさん平然としてるし…。


 アクアに来なくても良い、と言われたイアンは用があると咄嗟に嘘をついた。

 歩いている間イアンは二人の繋いでいる手に釘付けである。



 イアンは、ラナの時以上にヤキモチをやいていた。



 ルミナスとアクアが部屋に入ったら、自分も自室へ行こうと思っていたイアンだったが、アクアがルミナスの部屋に一緒に入っていき戸惑う。



 話を盗み聞きなどイアンはしない。出来ない。かといって二人は何をしているか、何を話ているのか気になって仕方がなく、自室へと向かい始めた足を再びルミナスの部屋の前を通り、自室へ…と結局ウロウロと彷徨っていた。



 すると扉が開き、慌ててイアンは柱の陰に身を潜めると、部屋からアクアが出てくる。

 部屋の扉を閉めたアクアは「隠れてないで、出ておいでよ。」とイアンがいる柱に視線を向けながら話しかけた。

 


 イアンはバツの悪そうな顔をしながら出てきて「…申し訳ありません。用があると嘘をつきました…。」と正直に話す。


「別にいいよ。君はルミナスが好きだから気になったんでしょ?」


「え!?あ、えーっと………はい。」


 まさか確信を突かれると思っていなかったイアンは、狼狽え視線を彷徨わせる。



「ただ話をしていただけだから、安心して。ルミナスと君は種族が違うのに、ルミナスが好きなの?」


「好き、です。」


 イアンは恥ずかしさに唇を震わせながらも、ハッキリと言葉にする。「それを本人の前でも言えたら良いね〜。」とアクアがにやけ顔で言ってきたので、イアンは想像してしまい顔を赤くしていた。



「ねぇ、君の名前は?」


「イアン・フェイ・グラウスと申します。」


 アクアに名前を尋ねられたので、アクアと目線を合わせて、しっかりと答えた。するとアクアは微笑みを浮かべ、イアンに対し子供に諭すような、優しい口調で話しかける。


「イアン…ルミナスは人の身で唯一魔法を使える、光の者だよ。イアンが思っている以上に特別で危うい存在だ。それでも…一緒にいたいと思える?」



「俺の気持ちは変わりません。ルミナスさんを守りたい。何があっても側にいたいと思っています。」


 イアンは真剣な表情でアクアを見据える。



 アクアはイアンの様子を見て、柔らかな笑みを見せると「側にいたいなら、他の男に取られないように頑張って。そういえば…ルミナスは僕の尻尾を気にしていたから、イアンの尻尾を触らせてあげたら喜ぶと思うよ。」と言い残し、部屋に行ってしまう。



 一人その場に残ったイアンは「尻尾かぁ…」と呟き、悩ましげな表情をみせながら自室へと向かって歩いた。



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