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ルミナスは、魔人を知る

 

 食堂では先程と同じような並びで五人が椅子に座り、少しすると料理が運ばれてきた。食前の挨拶をルミナス達がすると、初めて目にしたレオドル王とアクアに聞かれて、ルミナスは説明をしてやり方を教えた。

 


「お休みになるお部屋は、どうされますか?ルミナス嬢が使用している部屋の隣の客室が空いていますが…。」


 食事を終えると食堂には五人だけだったので、レオドル王は口調を変えずにアクアへと問いかけた。


「うん、そこでいいよ。一緒に行こうルミナス。部屋の場所を案内してよ。」


「はい、いいですよ。」


 アクアが微笑みながらルミナスへ話しかける。その可愛らしい笑みに、心が和むルミナスだった。


 アクアがルミナスの手をさり気なく握り、「じゃぁ僕達は部屋に行くねー。」と席を立ちルミナスを促す。皆より先に出るのを躊躇したルミナスだったが、レオドル王と目が合い頷かれたため、アクアに従うようにした。





「あれ?君は付いてこなくても良いのに。」


「いえ…こちらに、たまたま用があって一緒なだけですので…。」


 アクアの声で立ち止まり、後ろを振り向くとイアンも食堂を出て一緒に来ていた。

 ルミナスと目が合ったイアンは気まずそうに視線を逸らしてしまい「ほら、行こうよ」とアクアに手を引かれ、そのまま部屋まで歩いていく。





「僕はルミナスと大事な話があるから。君は用があるんでしょ?また明日ねー。」


「え?まっ…」


 部屋の前まで来ると、アクアはルミナスの背中を押して中に入れ、イアンの言葉を最後まで聞かずに扉を閉めてしまった。



「アクア様?」


「あの子も面白いね。つい、からかいたくなるよ。」


 アクアは扉を見つめながら、楽しげに笑っていた。


 アクアは部屋にあるベッドに腰を下ろし、ルミナスはその近くにある椅子へと座る。



「あの…大事な話というのは?」


 気になったルミナスが声をかけると、アクアは視線をルミナスへと向けて唐突な質問をする。


「ルミナスは、神を知っている?」


「…いいえ、知らないです。その『神』というのは何なのでしょうか?」


 ルミナスは平静を装いながら答える。前世の知識では、なんとなくだが知っている。だが、この世界での『神』がどういう存在か分からなかった為、知らない振りをしておいた。



「神というのはね…世界を作り、水や大地、空気や動植物、そして人…様々なものを生み出した存在と呼ばれているよ。僕達は人と同じように産まれて育ったけど、魔力をもつのは僕も合わせて四人だけだったんだ。そして、それぞれの国で僕達は人々から崇められる存在だった。」


 ルミナスは壮大な話しの内容に思わずゴクリと唾を飲み、アクアの話に耳を傾ける。


「だけど…人は争いを始め、崇めていた僕達の力を利用するようになった。そしてその頃から人は僕達を恐れ『魔人』と呼ぶようになったんだ。正直僕は、この呼び名があまり好きじゃないんだけどね。」


 アクアはため息を吐きながら再び話し始める。


「何度も争いを起こす事にうんざりして、僕達はそれぞれ指輪を作って王に渡し、人の前から姿を消した。それからは、王が変わる時以外は僕は外に出ないで、自分で作った空間にいたんだ。」


「…そうだったんですか…。あの、何故私にこの話を?」


 執務室で皆には話さず、自分にだけ話を聞かせたアクアに不思議に思い聞いたのだが、アクアは「君が光の者だから…かな。」と言って薄く微笑んだ。



 ふと、ルミナスは先ほどアクアから聞いた話で、疑問に思った事を口にする。


「魔力をもつのは四人だけだったなら、ファブール王国の女王は何故魔力をもっていたのですか?」



「それは…僕達の事をもう少し話してからにするね。僕達四人は魔力の量が限界になった年齢で成長が止まり、食事や睡眠をとらなくても平気になっていた。僕は四人の中で一番早く魔力の量を増やすのも、魔法を使えるようになったのも早くて優秀だったんだよ…。」


 アクアは他の三人の姿を思い浮かべているのか、懐かしむ表情をしながら話をしていた。



 ……確かに魔人だと聞いたり、魔法を使うのを見なければ、町で見かけたとしても気づかなかったよ…。アクアが少年の見た目をしているのは、そこで魔力が限界になったからだったんだ。





「僕が人と関わらないようになっても、人が好きで自分の正体を隠しながら度々町や村に行く者もいたんだけど…そいつが人に恋しちゃってさ。子供が産まれたんだよ。」



 ―――え?なんで…そんな顔で話すんだろう…。



 魔人と人が結ばれて子供が産まれた。ルミナスは、その話をした時のアクアが暗い表情をしている事に気づく。


「産まれた子供は人なのに魔力があった。そして、そいつは光魔法を使えなくなっていたんだ。本当に…馬鹿な事をしたんだよ。」


 アクアは話しながら拳を固く握りしめた。当時の事を思い出しているのか、俯いて苦しげな表情をしている。



「その子供が後に国を立ち上げたファブール王国の女王だよ。そして女王が出産した女児にのみ魔力が引き継がれていったんだ。……今は、君の番だね。」


 アクアから急に表情が消え、じっとルミナスを見据えたまま視線を動かさない様子にルミナスは思わず身じろぎする。



「…ごめんね、長く話し込んじゃったね。聞いてくれてありがとうルミナス。」


「い、いえ!私も色々と知れて良かったです!」


 アクアは一転して、満面の笑みでルミナスに話す。

 ルミナスはアクアの変化に戸惑いを感じたが、話を聞けて良かったと思っていたので、気にしない事にした。



 アクアがちらりと扉に視線を向けて「…そろそろ部屋に行こうかな。お休みルミナス。」そう言ってルミナスの部屋を出て行った。




 ……なんだか毎日色々ありすぎだよ…。


 ルミナスは深くため息を吐き、ベッドへと移動して、そのまま横になる。



 ………魔法の事も…詳しく聞きたかった…な……あした…きいてみよう……かな………




 ルミナスは睡魔に襲われて瞼は自然と閉じ、そのまま眠りについた。



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