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ルミナスは告白し、イアンは衝撃を受ける

ルミナス視点とイアン視点の話になります。

 今まで幾度もイアンには名を呼ばれている筈なのに、その声がやけに頭の中で響いて聞こえた。心臓の音がドクン、ドクンと高鳴り始める。


 イアンが私に好きと言って、あれから随分と色々な事があった。私が告白したら、イアンはどんな反応をするのだろう。


 ……まだ好きでいてくれてるのかな?


 私は今、期待と不安な気持ちが半々だった。



「ルミナス、さん。」



 再び名を呼ばれる。私が振り向かないからだろう。

 胸がギュッと締め付けられる思いがした。


 ……あれ? そういえば、私の名前………



「もう、呼び捨てにしないんですか?」

「え!? あっ…あの時は咄嗟に……そのっ………」


 ふと、疑問に思った事が自然と口から出ていた。イアンの顔は見えていないけど、焦ったような声が聞こえてくる。


「いや、ずっと…っ…俺が…そう、呼びたかったんだ。」


 イアンの言葉に、私の心臓の鼓動が早まる。イアンがどんな表情をしているか気になった私は、ゆっくりと後ろを振り向き、イアンと向かい合わせになった。

 イアンは顔を赤くしていて、私が突然後ろを振り向いた事に驚いた表情をしている。



「これからも、呼び捨てで構いません。私も…その方が嬉しいでび……」


 語尾が緊張で変になった。イアンが肩を震わせて笑うのを堪えてる姿が視界に入る。うぅ…恥ずかしい。

 羞恥で悶えそうになるけど、コホンと咳払いをして気持ちを落ち着かせる。




「わ、わ、わたひっ……っ…、イアンが好きです!」



 だめだ。全然落ち着けてなかった。

 イアンの顔をまともに見れずに、かぁ…ッと顔が熱くなるのを感じたけれど、自分の中で秘めていた想いを告げれたことで、少し胸が軽くなったように思えた。



「……本当は気持ちを、伝えるつもりじゃありませんでした。私は今後も魔法を使う気でしたから、いつ人間でなくなるか、自分自身分かりません。魔人となっては、お互いが辛い思いをすると思いました。それに私は…やりたい事があります。」


 私は自分の気持ちを……今まで思っていた事を正直に話す。俯き気味に話していたけど、シン…と辺りが静まり返り、鳥のさえずりが耳に入ってくる。イアンが何も言わないのが気になり、恐る恐る顔を上げると……







 イアンは放心状態だった。




「……やりたい事って…?」


 イアンが絞り出すように声を出す。


「この国で…そうですね。数ヶ月ほど過ごしたら、私はシルベリア侯爵領に行き、お父様とお兄様に会ってこようと思います。それから、他の国にも行ってみたいですし……あ、ファブール王国があった場所にも行ってみたいです。」


「俺も一緒に行く!」


 やりたい事リストの内容を話すと、イアンは声を上げながら私に詰め寄ってきた。


「でも、イアンはこの国の王子です。陛下や…サリシア王女が国を出ることに反対しませんか?」


「反対は、されると思う。それでもルミナスが国を出立する日までに、必ず説得する。」


 その声には熱がこもっているように感じて、イアンの決意は固いように思えた。




「……例えルミナスが魔人になっても、俺は側にいる。好きだと伝えたあの時以上に……俺は今、ルミナスが好きだ。これから、もっともっと…好きになる。」


 イアンが私の両肩にそっと手を置いて、真剣な表情で、私に訴えかけるように話す。


 ………嬉しい。 嬉しい、嬉しい…っ!


 イアンの言葉一つ一つが私の中で木霊して、涙ぐみそうになる程の愛おしさが込み上げる。もし、魔力が感情で増減していたら、今の私は限界突破しているに違いない。


 私はイアンの手に、自身の手を添えて微笑みかける。




「……イアン、大好きです。」




 嬉しい気持ちと、いとおしく感じる気持ちを言葉にして伝えたくて、私はもう一度イアンに告白する。

 すると……イアンがバッと突然肩から手を離して、自身の顔を覆うようにして隠してしまった。



「―――ッご、ごめんッ! ちょっと待って! 」



 イアンは体を横向きに変えて、ゆっくりと深呼吸し始めた。顔は見えないけど耳が真っ赤になっていて、尻尾がピンと垂直に立っている。

 イアンの熱が伝染してきて、私まで顔の火照りが再熱してくる。




「ま、町に、戻ろうか…。」

「は、はいっ…。」


 未だにお互い熱が冷めなくて、アクア様のように魔法で町に戻ることを私は躊躇した。

 集中出来ずに、上手く魔法を行使できる自信が今は無かったからだ。







 私とイアンは手を繋ぎ、ゆっくりと歩き始める。





――――――――



 森の中を町に向かってお互い無言のまま歩く。それでも気まずい感じはしなかった。俺が抱き上げて走れば、町まであっという間に着くが……今は、のんびりと歩いていたい。


 チラリと隣に視線を向ければ、ルミナスが真っ直ぐに前を向きながらも白い頰が、ほんのりと赤く染まっているのが見えた。



『 イアンが好きです 』 『 大好きです 』



 ルミナスから聞いた言葉を思い出し、破顔してしまいそうになるのを、口を固く結んで必死に堪える。

 名前を呼んで良いと許可をもらえただけで、舞い上がりそうになったのに……突然の告白を受けて、衝撃を受けた。



 好きと言われた。

 しかも二回。

 大好きと言われた。

 好きより大きいって事だ。



 歩きながら俺の頭の中は、ぐるぐると同じ事を考えている。姉上に今の俺を見られたら、だらしないぞ。と叱咤を受けるに違いない。

 だが、今だけは許してほしい。



 見慣れた森の景色が、陽の光をいつも以上に浴びているように見える。草や、木の葉一つ一つが輝いているようだ。空気が澄んでいて、風で葉の揺れる音や鳥や動物の鳴き声…全ての音が鮮明に聞こえてくる。






 ルミナスの笑顔も、仕草も、言葉も…俺にとっては、どんな魔法より威力がある。





 幸せすぎて…死んでしまいそうだ。


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