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四階と五階とお兄ちゃんと

 タイムの提案で四階はケーキゴーレムを、五階はクッキーゴーレムとチョコゴーレムを置くことにした。またそれぞれには勝手に進化してもらおう。

 ちなみにキャンディグミシリーズも進化して一階に置くには強すぎるので、進化したものだけは五階に、チョコクッキーゴーレムと一緒に置くことにした。キングキャンディとか、かなり強いから専用階を設けたいなあ。

 まだ進化するのかなあ?


 四階のボスは堅焼きクッキーゴーレム、五階のボスはビターキャンディゴーレムだ。火にも若干強いのが生まれたので大きいサイズのをボスにした。普通のゴーレムが二メートルでこのボスゴーレムたちが三メートル半ほどだから、かなり強いと思う。私なら一撃で倒せるのだが……。

 護衛はドラゴンとかにしようかな……。果物が生るフルーツドラゴンと言うのがいるらしい。いわゆるグリーンドラゴンの亜種かな?

 強いはず。私はドラゴンとは戦ったことないなあ。スタンピードの時は出たらしいけど、私はその当時は一年生、王都の学園にいて、悲惨なニュースだけを伝え聞いた。私も泣き崩れたが辺境伯家の令嬢、リリーナは親兄弟を亡くして領地も失ったのだ。泣き叫んでいた。それから彼女はすぐに学園を辞めて復興に当たっている。彼女とはいつか協力して戦う約束をした。

 私も領地経営を手伝いたかったのだがまだ魔物が跳梁跋扈していた時期。父にも兄にも反対された。学園だけは出ることにしてその間にこのダンジョンを作る計画を立てたのだ。


 とりあえずその話は置いておこう。今は……。


「実食ですっ!」

「食べ応えがありそうだな!」


 そう言えばタイムって体の割に一人前のご飯食べちゃうんだよね。どうも食べたものが全部魔力になるらしい。

 まずはケーキゴーレム。表面がクリームのものを食べてみることにした。食べやすい大きさにカットする。


「ウインドカッター!」

「魔法でカットとか豪快だな!」


 まあ大きいからね。普通にケーキ入刀とはいかないでしょ。結婚式で形だけの入刀じゃないんだから。

 そうして切ったゴーレム。中にはフルーツが挟んである、普通にケーキだ。砂糖で軽く煮てあるのかそのフルーツたちは艶々で甘そうだが……。タイムはマンゴーと、そのフルーツを呼んでいるようだ。

 はむっ、と口に運ぶと、おお……。酸味と香りもバッチリだよ。美味しい……普通にケーキ食べ放題だよ。太っちゃうよ。


「うめえ……。あっちのチーズケーキも食べてみようぜ」

「よっ、ウインドカッター、ほいっ」


 ガンガンとケーキを切り分け、風で手元に運ぶ。見た目はゴーレムなのにちゃんと全部ケーキ。どうやら魔力で形を保っているようで、攻撃はしっかり抵抗されている。

 まあ私のゴーレムなので攻撃されないし逃げられもしない。私の魔力ならそうでなくても余裕だし、食べ放題だよ……。ヤバい。


 ちなみにトリシャちゃんたち冒険者三人組はケーキにも勝てなかったようでダンジョンの外に追い出されていた。さすがにしばらくは登ってこないだろうと思ったらグミを食べて回復してまたすぐ四階に来て、またすぐ追い出された。根性あるね。

 そして最初にケーキにありついたのはタカリヤさんたち村人五人組。倒した訳じゃなく普通に生きたままの状態で食らいついていた。文字通り食らいついてた。

 いくらか食べてたけどすぐに倒されてた。そりゃ普通の村人だからね。みんな面白いようにポンポン飛んでいった。まるで村人がボールのようだ。タイムは「ハッハッ、見ろ! 人がゴミのようだ!」とか渋めの声で言ってたけど意味は分からない。ゴミは酷くない? 三階を抜けてきてるだけ凄いよね。


 トリシャちゃんたち三人組もまず食べてみることにしたらしく食らいついていた。文字通り。さすがに三人は少し抵抗して、三人で腕一本分くらい食べたらお腹一杯になったのか逃げていった。この後彼女たちは凄く強くなって行ったので美味しかったんだろう。


「この階層のドロップは何にしよう?」

「調理器具とかどう? フライパンや包丁の良いのがあるんだ。テフロン加工してあるのとか」

「てふろん? でも調理器具は美味しいダンジョンらしくて良いかも」

「どうせなら武器も食器シリーズにする?」


 そして今後は、この階層でケーキゴーレムをフォークの槍で突き刺してスプーンの斧で抉り、ナイフの剣でカットする、ある意味正常な光景が広がることになるんですね。

 それも面白いや。一階のドロップ品から組み直そう。なんだか楽しくなってきたなあ。


 コアルームに帰ってそんな風にタイムと二人で色々といじり回していると、ものすごい魔力の持ち主がダンジョンに入ってきたのを感じた。

 あ、レイアスお兄ちゃんだ?!

 お兄ちゃんは普通にガンガンモンスターたちを倒して登ってくる。後ろから付いてきた、奥さんで私の友達でもあるミリアムが、ただドロップ品を拾ってアイテムポーチに入れて暇そうにしている。あー、魔法のポーチだ羨ましい。さすがは領地半分失っても伯爵家だよ。

 あ、四階まで来たけど普通に倒してる。ケーキを頭から被ってるけど。お兄ちゃん美味しそうだね。クリームをたっぷり被った上に目がフルーツっぽい色合い。私も同じ色だけどね。その見た目はほとんどケーキ人間だ。

 しかし、嫌な顔一つしないな。とても変な顔でたまにニヤニヤしてるけど、あれは私のことを考えてるらしい。


「うわっ、キモッ! つよっ! キモ強い!」

「お兄ちゃんは気も強いからね~」

「そしてこっちは寒い! 侍女ジニーが大爆笑してる!」


 そうそう、侍女にジニーを数人入れたんだよね。ほとんどやってもらうことは無いんだけど、お茶とか出してくれる。あと暇な時はお話をしてくれる。私が風魔法が得意だからかすごく気が合うんだよね。胸囲は驚異だけど。あ、また、ジニーたち笑ってるよ。明るくて良い精霊たちだ。


 あ、一方のお兄ちゃんは五階のチョコゴーレムやクッキーゴーレムも楽勝だ。さすがは私のお兄ちゃんだよ。


「お兄ちゃんが鬼い強い!」

「寒いって! ジニーも笑うな!」


 結局お兄ちゃんはコアルームまでノンストップ。お兄ちゃんに導かれた村人たちはケーキゴーレムやチョコゴーレムの、ダンジョンに吸収されずに消えてない部分を持って帰っていた。やっぱり美味しいダンジョンだから食べる分は残る仕組みになってるようだ。ドロップ品扱いなんだね。

 さて、レイアスお兄ちゃんを迎えに行かなきゃ。






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