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妹からの手紙(レイアス視点)

 可愛い可愛い妹、シルビアから手紙が来た。

 ある日突然美しい風の精霊が現れ、妹からの手紙を預かっていると言って渡してきたのがこの手紙だ。


 母がスタンピードしたモンスターたちとの戦いに敗れて亡くなってから、父が体調を崩し引きこもるようになったので、仕方なく俺が領地を継いだのだが、そのせいで酷く忙しくなり可愛い妹に構ってやれなくなってしまっていた。彼女を守ってやれなくて一度大きな後悔をしたにも関わらず……!


 可愛いシルビアは十二才頃に第三王子エルレアに気に入られたようで、俺が守ってやれなかったせいで悲しいかな、妹の心は奴に奪われてしまった。これが最大の後悔だ。ああ、シルビア……。しかも奴は今、シルビアを捨てて冒険者をしているらしいし、許しがたい!

 シルビアの心を奪ったにっくき第三王子は今はシルビアと同じ子爵だったはずだが、さすがに手は出せないな。肩書きが外れても王子は王子だしな……くそう!


 せめてシルビアに手紙だけでもと一日一通手紙を書いていたら「毎日手紙とか多い。あと長い。仕事して」とシルビアに嫌われそうになってしまった。可愛い妹は怒ると世界一怖い。八通は書きたいところを我慢してるのに! おはようの手紙、朝御飯の間に読む手紙、朝のティータイムの手紙、お昼の手紙、午後ティー、夕飯、団欒、お休み! あれ、少ないか?


 逆に彼女から送られてくる手紙はとても貴重だ。これも宝箱に入れて保管しておかなくてはな。

 その前に内容の確認、の、前に匂いの確認だ。うん、シルビアの好きなバラの香水の香りがする、気がする。クンクン。


 俺はシルビアとお揃いの銀髪、アメジスト色の眼、白い肌なのでキモくはないぞ。うん、シルビアのことになるとこの調子なので妻には呆れられている。政略結婚だったが面倒見の良い可愛い妻だ。ただシルビアのことでは俺が変態的になってキモいと言われてしまう。他の状態は好きらしい。可愛い奴だ。


 それよりも手紙の中身だな。ふむふむ、ダンジョンメイクは上手くいったのか。女神様が声をかけてきた? シルビアは聖女だから当然だろうに。(※レイアスがそう思っているだけです)


 ダンジョンが軌道に乗ってきたから冒険者を送ってほしいんだな。

 すぐにギルドを作ってS級冒険者をこの世に存在するだけ送ろう! かと思ったがコアを壊されたら死んでしまうのか。コアがコアれるとコアる、とか、可愛い駄洒落が書いてあるなぁ。ああ、愛しい。


 ふむふむ、女神様の勘違いでお菓子のダンジョンになってしまったのか。いや、可愛いシルビアによく似合ってるじゃないか。流石は女神様、ナイスチョイス。

 一階はグミスライムで二階は熊のモンスター、三階は風の精霊で、今、手をかけている四階はゴーレムを予定しているのか。ふむ、確かに好調そうだ。宝箱やそのモンスター自体も人気があって、村人も笑顔でダンジョンに入ってくるのか。可愛いシルビアがいるのだから当然だな。今すぐお兄ちゃんもシルビアのダンジョンに行きたいくらいだからな。だがもし仕事をサボったら本格的に嫌われてしまうだろう。


 あ、いや、視察なら仕事だし良いだろう。ついでにその村に別荘を作ろう。夏になったらシルビアのダンジョンで、いや、シルビアのダンジョン近くの別荘で暮らそう。

 妻もたまには遊びに出掛けたいだろうしな。


 そうだ、ギルドを置くなら買い取りをする商人も大量に送って早くその村を豊かにしてやろう。いずれ妹の領地になるのだから構うまい。今は俺の寄り子のような立場だがそのうちに独立……、いや、それは許せぬが。可愛い妹が独立。そんなことになったら髪が全て抜けて国王様と間違えられるようになりかねない。それだけは出来ない!


 そうだ、あの国王様の子なのだから第三王子も将来禿げるぞ、とかそれとなくシルビアへの手紙に書いておこう! 直接的に言ったら俺が嫌われるのでよく考えてぼやかして……、いや、その前に村の拡大の話が先だったな。もうギルドの臨時の出張所は建ててしまおう。そして低級冒険者をどんどん送り込もう。どうやら修行向きの優し目のダンジョンらしいから、冒険者も喜ぶだろう。平民の冒険者なら流石にシルビアに手は出せないだろうしな。まあ普通に低級冒険者に負ける妹ではないのだが、邪な目で見られるかも知れん。

 ……むむっ、女冒険者に限定して依頼しておくか? シルビアの可愛い姿を下品な男たちの腐った目に見せないように。護衛も頼もう。うむ、我ながら良い考えだ。やはりシルビアが絡むと頭の回転が速まるな!

 むっ? 何故か妻の目が厳しい!


 視察旅行に行こうなどと言ったら怒られるかと思ったが、妻は妻でシルビアに会いたいらしく。そう言えば彼女、ミリアムはシルビアやマチェール、リリーナと学友だったか。彼女は卒業してすぐうちに入ってくれたからそれ以来会ってないのか。ちょうど良かったな。ついでにマチェールも誘うかと言ってみたがどうやらマチェールは冒険者になったらしい。王子とは違うパーティーのようだから護衛指名依頼をマチェールに出せば一石二鳥じゃないか。


 リリーナは……流石にな。辺境はまだほぼ荒れ地のままだ。リリーナが離れることは不可能だろう。

 だが、よしよし、これで大体の計画が出来たな。

 まずはギルドに書類を出して、それから商人も派遣して、そうそう、忘れてはいかん、シルビアに禿は遺伝するとぼかして書いた手紙も送っておかねばな。あとはしっかりと愛も囁かねばならん。お兄ちゃんは早くシルビアに会いたいぞ! と、いや、内緒で訪れてビックリさせるのも良いな!


「旦那様、シルビアのことをお考えですね。顔がキモいです」

「何を言うんだい、ミリアム。俺はシルビアに似てるからキモくはないぞ?」

「確かに造形は素晴らしく良いんですけどね。表情が終わっています」

「ぬぬう……っ、そうなのか……。鏡がこの部屋には無いからな……」

「でも私もシルビアの可愛いダンジョンを早く見たいですけどね」


 だろうとも! 待ってろシルビア、お兄ちゃんは大貴族でシルビアの兄、この莫大な魔力を使って文字通り飛んで行くからなっ!


「その表情です」

「ぬぬう……」








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