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妖精からの要請

 暫くお菓子をかじってからダンジョンコアを確認する。と、色々な説明文らしきものが書かれた透明な板のようなものが現れた。タワータイプ、お菓子属性、美味しいダンジョン、ダンジョンレベル1、モンスター数0、リスポーンポイントなし等々、どうやらこのダンジョンの説明らしきものが読めるようだ。

 幾つか意味が分からない言葉が有るので説明役出てこないかな、と思いつつその板を触ってみると、ぬるぬると文字が上に進み、ナビゲーター召喚と言うポイントを見つけた。タッチしてみる。


 目の前にまた強い光が! 目がっ、目があっ!

 暫く眩しくて目を瞑って顔を押さえていると、子供のような甲高い声が耳に響いた。また女神様? って違うか、声は高いけど少年の声みたいだし。


「何一人でム○カ大佐ごっこしてんのさ」

「……私は子爵だけど大佐じゃないよ? 大差があるよ? ぷっくくっ!」

「うわっ、さむっ!」

「寒いよね、なんかこのダンジョン風が通り抜けるみたいで」

「風にまでツッコミされてる?!」


 むう、良く分からない言葉で喋る彼は妖精のようだ。手のひらに乗れそうな大きさで蜻蛉のような羽を持ち、うっすら青く光ってる。


「ひょっとしてあなたが案内役(ナビゲーター)?」

「そうみたいだね。せっかく異世界転生したのにあの糞女神。……ダンジョンコアに俺と君の魂を縛りつけられちゃってるじゃん。あーあ、酷い……」


 どうやら彼は地球と言う異世界の星の日本と言う国の人だったらしい。色々な言語や知識はダンジョンから流れているそうで、ナビゲーターをしてくれるようだ。お菓子のダンジョンとか子供みたいなセンスだな、とか笑われた。私が欲しかったのは美味しいダンジョンだ! そう反論したけど更に笑われただけだった。


「じゃあ早速進めてみようぜ。これはこれで楽しそうじゃん。あっ、ちなみに君と俺はダンジョンマスターと補佐ってことで不老で不滅の存在らしいよ。コアが壊れたら死ぬけど」

「な、なんですって! 聞いてないっ! コアがコアれたら死んじゃう?」

「寒い! マジ冷たい風が吹くしっ!」


 ちょっと、禁術書禁術書……。書いてる。ダンジョンマスターは不滅の存在となり、コアが壊れない限り死ぬことも老いることもない。……ちゃんと読んでたら良かったよお……。

 でもこのまま若くいられるなら悪いことじゃないのかな? 多分成長も止まってしまうんだろうけど。もう十センチ……一センチ……一ミリ身長が欲しかった。

 はいはいどうせもう成長止まってましたよ。現在の身長は百四十センチと、ちょっと……で! 大柄なドワーフと思われることが度々ある。くそー、身長伸ばせないかなダンジョンの力で。


「そんな機能は無いね」

「分かってるよ! ふえぇ……」

「まあそれは良いとして」


 良くないけど、確かにこのままじゃ話が進まないね。

 妖精さんの名前も聞いてないし。


「オレ? タイム。漢字ででっかい夢と書くんだけどこの世界漢字は無いよね」

「冷たい風は感じるけど漢字無い」

「寒いから! そのギャグが寒いから! 風が冷たいの多分ツッコミだから!」

「むう、私のギャグセンスは一部の友人に定評があるのに。夏場のあっつーい日には皆がこぞって聞きに来るのに」

「エアコンがわりにされてる?!」


 どたばたとして少しも話が進まないので私も自己紹介してから妖精さん、タイムに話の進行を任せる。


「とにかくダンジョンを起動してモンスターのリスポーンポイントを設置しよう!」

「妖精が要請とかよーせー」

「はようせい! 寒い! この世界駄洒落言う度に冷たい風が吹くっ!」

「風の精霊がいるから?」

「リアルにツッコミされてたっ!?」


 私のギャグは風の精霊に大ウケなのだとばかり思ってたよ。いや、ひょっとしたら受けてるのかも?


「そうかも知んないね。風の精霊でもダンジョンで呼び出して聞いてみる? あ、このダンジョン普通のモンスターいない。甘い水の精とかはいるけど。風の精だと綿飴に乗ったキャンディジンって言うのが……あれ雲じゃなくて綿飴だったのか」

「そのうち呼び出してみたいね~」


 風の精霊は果たして、駄洒落好きなんだろうか? 検証しておこう。どうでもいいか。


「今はポイント足りないからキャンディグミスライムってモンスターのリスポーンポイントしか設置できないっぽい」

「なんか美味しそうな名前だね」


 私の言葉に、じゃあ呼び出したら食ってみる? とか言い出すタイム。彼ってけっこう食いしんぼさんなのかな?

 まあ板に書かれたスライムの説明文には「可食」とあるので、試しに私も食べてみたい。

 キャンディグミリスポーンポイントを設置すると決めると、ダンジョンの形が板、スクリーンとタイムが呼ぶものの上に現れる。


 ……ただのトンネルだこれ。入り口の小さい門からここのコアルームまで五十メートル程度の真っ直ぐなトンネル。中は天井が光ってて明るい。壁はクッキーやチョコレート、飴だ。美味しそうな色をしている。……あのダンジョンは美味しいって話題になるなら構わないか。

 とりあえずコアルームの前にリスポーンポイントを設置。ドキドキ。

 ……やがて魔法陣が光り、赤、黄色、緑、茶色など様々な色の柔らかそうな半透明の、半分潰れた球体のようなものが現れる。スッポーンとスポーンしたよ! おっと、寒いしタイムの目が冷たい!


「見たまんまRPGの雑魚敵だなあ」

「RPGが何かは分からないけど、一般にグミスライムって呼ばれてる初心者冒険者が狩るタイプのモンスターだよ。普通はあんな美味しそうな色はしてないけど」

「早速食ってみようぜ? 一匹こっちに呼び寄せて」

「あ、そんな機能有るんだ。どの色の子にしようかな?」

「赤からいってみよう。多分イチゴ味だろう」


 どうやら支配下のモンスターを手元に呼び寄せる機能がダンジョンに備わっていたようだ。タイムがそう言うので赤を呼んでみた。普通に甘い匂いがするしこの子! 呼び出した瞬間にぶわっと甘い香りが部屋を満たした。

 タイムがまずかぶり付く。スクリーンに可食とは書いてあったけど、度胸あるなあ。……意外と一口が大きいな、妖精のくせに。二十センチくらいの身長なのにその半分くらいグミスライムをかじった。


「うっ、普通に美味いっ! めっちゃ汁が出てくるし味も超フルーティー!」

「え、ほんと?」


 タイムに促されて私もカプッとスライムにかじりつく。……ふわあ、良く熟れたイチゴの味がする! 口の中が洪水になったようなジューシーさ! このダンジョン、壁からモンスターまで美味しいの?! このダンジョン……ヤバイっっ!!






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