表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君に百億の百合を ~超大国に土下座政略結婚したら、あれ、なんか、誠実に愛されてるのか?~  作者: 東山ゆう
君に百億の百合を ~超大国に土下座政略結婚したら、あれ、なんか、誠実に愛されているのか?~
1/29

超大国に土下座外交嫁入りすることになりました


我が祖国の勇猛果敢ならざる戦いぶりは括目すべきものがあった



戦いが始まるやいなや完膚なきまで叩きのめされたのである。


このあまりのコテンパンぶりに兵士たちはとっとと逃げ出し、前線はぺんぺん草も生えぬ更地となって風が爽やかに吹き抜けた


結果的に死者0


平和を愛する国民性と言えば聞こえはいいが要はヘタレ極まりない


戦火が国中に広まる間もなく負けるのは、清々しくすらある。


敵国も全く予想だにしなかった超早期講話の場で、父のとった行動、


それは、土下座。


土下座したらしい。


文字通り土下座外交。そして物凄い勢いで怒涛のごめんなさいごめんなさいどうかお命だけはご勘弁をまだ死にたくない。素敵なお靴でございますね、美味しゅうございます!ペロロロロロ


めり込まんばかりの命乞いからの高速靴ペロペロ。敵国王ドン引き。

見苦しいもここまでくると芸術である


そして最後に、


「忠誠と和平の証に私の娘リリーを差し上げましょう。可愛い一粒種でございます」


と言った。


つまり、私だ



「じょ、冗談じゃ無いわよ、いやーーーっ!いやよー!なに勝手に決めてんのこのハゲ国王、この、バカ父!」


「愛しき我が娘よ、これもお国のためだ。私だって断腸の思いなのだ。えーっと、相手の寄越した返事は第一王子のアンリ王子か。」


わめく私を全く意に介せず糞父が機密資料をペラペラめくる。このたぬき!


「あんたの首のためでしょーが、このダメ国王!」


「はあ…。まあまだ他の王子達よりはマシだな…。スキャンダルは多いが、真面目な性格で執政も優秀。女の扱いも紳士的だそーだ。少なくともうわっつらは。じゃじゃ馬の転がしかたも朝飯前だろう」


「いいいいい嫌よー!誰がじゃじゃ馬ですってーーー!!こんな弱くて小さくて可憐な乙女を!!」


「暴れ馬の方が良かったかな。おまえ、これは外交なのだからな。それも土下座外交。相手は我が国なんて寝起きデコピンピンっで消し飛ばせるとんでもない軍事超大国だ。間違っても粗相をしでかして祖国を滅ぼすなよ。」


じゃ、達者で!


そそくさ


父は逃げるように去っていく。待てぇい!いくら国家存亡の危機だからって、娘の幸せをここまでルーズに決める親ってどうなの!?


それにしてもすんごい逃げ足だ。


この国王にしてあの兵士達ありといった有様である


取り残された広間で、リリーはあんぐり口を開けてパクパクするしかなかった。



***



あれよあれよというまに輿入れの日が来てしまった。


「一緒に逃げよう!」と攫ってくれる家臣も許嫁も異世界からの転生者も現れなかったリリーは、キレながらも絢爛なドレスに包まれることになった。


毎日ぷくーっとむくれながら過ごしたので頬が風船になってしまうかと心配された。


しかし心配ご無用、ふくれっ面でもリリーは存分に愛らしいのであった。


「まあ、なんて可愛らしいのでしょう!お人形のようだわ!」

思わず侍女たちが歓声をあげる


輝くばかりのブロンドを巻き巻きに巻いて、透き通るふわふわ淡雪色のフリルドレスに袖を通したリリーは可憐なお人形のようであった。


「お人形。今の私にはうってつけの言葉ね。」

ふっとリリーは自嘲する。



「ああ、傷ましや姫様…!よもや、こんな悲しい花嫁姿を拝むことになるなんて…うっ」


侍女たちが心を寄せてくれるのだけが救いである。


「いいのよ。お国のためだもの。私だってもう16よ。子供じゃあないわ」


「それでも、この様な酷な話があって良いものでしょうか!あの様な恐ろしい侵略国に嫁ぐなんて!民衆から搾り取った税金でそっとーしそうなくらい豪華な宮殿を増築しまくっているそうですよ。それにそれに、」


ばぁやがびーーーっと鼻をかむと、この世の終わりとばかりに天を仰ぐ


「お相手のアンリ様の醜聞ときたら!大層麗しいお方ですが、悪魔の様な女性遍歴です!なんでも朝食の目玉焼きから、お昼の紅茶までに恋人が十六人変わっているとか!歌劇場の女優は軒並み食い尽くして皆深い仲だそうですよ!あーーーっ!狼!野獣です!そんな野獣に大切にお世話してきた姫様が食べられるなんてー!!!きっとこの丹精込めたドレスもビリビリに切り裂かれるんだワーーーー!!! それどころかその熱く歪んだ熱情を何度も何度も注ぎ込まれるんだワーーーーー!!!」


勝手にどんどん妄想を加速させないで。おいまて、私で卑猥な妄想をせんでくれ。


「み、みんなどっからそんな情報を仕入れてくるの…」


「ああっ、姫様の行く末を案じれば、調べずにはいられなかったんですー!」

「本当にもういいのよ、それに、もう気がすむまで暴れたしね! 父様のおひげを全部むしってやったわ」

ハゲでもヒゲはあったのに


「姫様…」


「みんなのことも、この国も大好きよ。結婚なんて簡単よ。ニコニコと仮面を被って過ごせばいいんだわ。」


「姫様あ~~~~!!!」


「ぐふっ!!!!!」


ばあや感涙のタックルが決まる!

侍従長メイド長その他諸々王宮スタッフが怒涛のごとく続く!

もうそこからは押し寄せぎゅうぎゅうぎゅうぎゅう

葬式かと言わんばかりの涙涙その他諸々の液体ほとばしる感激の別れであった



こうしてリリーは旅立ったのである



波乱の待ち受ける超大国新婚生活へ……




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ