エピソード0 とあるお手伝いの日
コピー本で書いた話です。
サブタイはここで決めました。なんやこれ
人々の夢や自由を守るために闘う戦士がいる。
その戦士を『魔法戦士ストロングソウル』と言った…
☆
「行ってきまーす!」
俺はいつも通りに家を出て学校まで走り出す。いつものヨーヨーと飴があれば面倒な登校だって楽しくなる。
俺は吉野学、小学四年生。実家はお父さんとお母さんがご主人の「民宿よしの」で弟がいる。好きな食べ物は唐揚げとか焼きそばとかハンバーグとか肉料理。将来の夢は警察官とか先生とか建築家とか…色々悩みすぎて現在考え中。友達はわりと多めで成績と運動神経は普通くらい。
いつもより少し早い時間に教室に着いた。
「おはよう学」
「おはよー」
それから、俺には好きな人がいる。
「おはよう、学くん」
「あ、おはよう先生」
クラス担任の緑川みきこ先生。可愛いし優しいしで俺は好き。でも先生は俺をただの生徒としか見ないし男として扱ってくれない。
「先生、今度二十三の誕生日だろ?プレゼントとか何がいい?」
「何かな?プレゼントより誰かに祝って欲しいわ~。すごく素敵な人に」
「じゃあさ、俺が誕生日にデートしてあげる!」
「ダメよ。先生、生徒とはデートしないよ」
「えー」
先生はやっぱり俺を男として扱わない。俺が生徒で子供だから。
「学、また先生にフラれた?」
「フラれてないやい!先生は俺がかっこいいから照れたんだ!そうだきっと!」
「ハハハっ!」
「笑うな!」
友達の祐樹にまた笑われる。他人事だと思って…
好きな人と友達がいて普通の毎日を送る俺。
だけど俺にはひとつだけ『普通ではない秘密』があるんだ。
※
放課後。
「バイバイ学」
「またなー」
俺はさっさと学校を出る。民宿である実家の手伝いもあるが、それよりもっと大変なのは…
「学!」
「あ、山口さん」
民宿の中年バイト山口さんが来た。
「今日は俺どうするの?」
「近くのパン屋さんの店長が怪我で入院して仕事出来なくなってる。店を手伝うのが任務」
山口さんに今日しないといけない任務を聞く。
「わかった。パン屋だね?『パンダ工房』だな」
「さっそくチェンジだ!」
「うん!」
俺は路地裏に入る。そしてブレスレットで『変身』するんだ。
「ドリームチェンジ!パンダ工房の店員!」
ブレスレットを光らせ、体は眩しい光に包まれて光が消える瞬間、俺は大人の姿に変わる。
「パンダ工房の店員さん!」
可愛いしかっこいいパン屋の制服もばっちり。さあて仕事だぜ!
☆
「店長がお怪我されたと聞いてお手伝いに来ました!」
大人の姿の俺はパンダ工房の裏口を開ける。店長の奥さんが必死に何人も並ぶ店を切り盛りしている。
「あら?あの人いつの間に代わりの店員を呼んだのかしら…?」
バタバタと忙しい店長の奥さんの疑問はスルーし俺は店をテキパキと手伝う。
「メロンパン二つですね?」
接客にパン焼いたりで大変。でも大人の姿になった時、ブレスレットがパン屋は何をすべきか教えてくれるしやり方は変身した時にインプットされたようなもんだから平気平気。
「わーい!」
チョコの菓子パンを受け取り喜ぶ幼児。俺がいなかったら今日はあれはお預けだったんだろうな…
俺の秘密とはそう、大人に変身して人助けすること。子供じゃ出来ないことでも大人の姿になれば出来る。キッカケは一か月前。
山口さんと出会い、「私の仕事を手伝ってくれないか?」と言われた。実は山口さんは神様(自称)である。とにかくある機関の幹部であることはわかる。今のご時世、世の中は荒んでるからお前がヒーローになって困っている人を助けて欲しいんだ。そう頼まれて俺は大人になれる魔法をもらった。そして俺は、街の幸せのために今日も大人に変身して頑張っている。
「ぼくねー!店長さんみたいなパン屋さんになるんだー」
「そうかそうか。店長さんに教えてもらおうなぁ」
「うん!」
幼児は笑いながら店を出た。
山口さんは世の中の夢や希望を守って欲しいとも頼まれている。俺が変身して人助けすることは誰かの幸せや喜びを助けてあげることだと言う。それがもっともやりやすい人種は俺のような子供。この大人になれる魔法のエネルギーの源は子供の持つ夢や希望らしい。簡単なことらしいけど俺にはまだよく分からない。でもこの人助けは大人になれるし楽しいからやってる。
☆
任務が終わり、元の子供の姿に戻ると山口さんのところに行く。任務完了とどんなだったかを知らせる。
「ご苦労様、学」
「いつもより早く終わったから楽勝だったよ」
「最後に来た子供嬉しそうだったろ?あのパン屋があることはあの子の夢なんだ。今日はそれも守れた」
「ふうん、夢ってやっぱり大事?」
「大事だよ!人類に夢が有ったから大きな建物や飛行機や巨大な船が出来たんだよ?」
山口さんがしたいことがどんな意味なのかはそのうちわかるって教えてくれない。
「まあ、家帰ったら空いてる部屋掃除しっかりしてよ。それからジャンプも買って」
「バイトに厳しいね。神様だよ私?」
「神様でもバイトはバイトだよ」
そう話をしながら家まで歩いていたら、
「大変だー!」
「助けてー!」
悲鳴が聴こえてきた。
「なんだろ?」
「銀行のほうだな」
俺と山口さんは悲鳴が聴こえた銀行のほうへ向かった。
☆
「動くな!すぐに金を用意しろ!」
銀行に着くと、案の定銀行強盗がいた。しかもただの銀行強盗じゃない。
強盗は『黒の月』の怪人だ。『黒の月』とは国際犯罪組織である。生物兵器に戦闘機をぶっ放し破壊活動に独裁となんとも勝手過ぎる連中で奴らの最大の目的は世界制覇である。今銀行にいるのは『カメ男』。見ての通り、カメの怪人だ。銀行員や銀行に来ている人たちみんなは『黒の月』の怖さを知っているから警察が来るまで誰も動けずにいる。
「さもなくば、この街を火の海に沈める。何、大人しくしていれば怪我はさせん」
カメ男は銃を周囲に突きつける。
「ヤロウ、また金目当てか。普通にバイトして貯めたらいいじゃん。山口さんみたいに」
「お前はそう考えるかもだけど、それを嫌がる奴もいるんだよ」
俺の台詞に山口さんは少し重々しく付け足す。
そんなにダメだった?今言ったの。
「学、頼む」
「うん。仕事追加だね」
『黒の月』を相手に戦うのも俺の役目。大人になれる魔法は元々奴らとの戦いにも使うべき力だ。
カメ男に俺の姿は見られていない。それこそ使うべきだ。
「ドリームチェンジ!警察官」
俺はブレスで大人の姿になる。
「さあ、ここにあるだけの大金を寄越せ」
「そこの君、よしなさい」
金を用意させようとするカメ男に大人の俺は挑む。今の俺は警察官、それも凄腕だ。
「なんだ?警官ひとりに何が出来る?」
「悪い子は逮捕しちゃうぞ」
「邪魔者は消す!」
カメ男は銃と足技を駆使し、俺に攻撃する。俺も銃から放たれる弾を避け蹴りを防ぐ。そして蹴りやパンチで応戦。
「お前はただの人間じゃないな?」
カメ男は睨む。
「今更かよ。でも正解。凄腕警官は仮の姿だ」
カメ男から距離を作るようにバク転をすると、懐はら『メダル』を取り出す。これが重要なんだ。
「冥土の土産に教えてやる。俺の実態は…『ファイター・チェンジ!』」
俺はメダルをブレスにはめる。数秒もしないうちに変身は完了する。
「…!」
『黒の月』と戦う時に俺はこの姿に変身する。
「魔法戦士ストロングソウル!」
鎧の騎士のような重装備に日本刀みたいな刀。これがストロングソウルだ。
「アルテミス様が言ってたのは貴様か」
「なんだ、アイツったら組織で俺の噂してんだ。暇な奴」
「その首をもらいアルテミス様に捧げる!」
「させないよ」
またくるか。カメ男はまた銃と蹴りで来る。俺も刀、ストロングブレーカーで応える。
「くっ…ドールたち来るんだ!」
「「ジュウゥっ」」
『黒の月』の戦闘員、ドールたちも出てくる。でも俺は負けない。
背後からのドールには回し蹴り、前からならパンチ、一斉に大勢で来たならストロングブレーカーの放つ魔法の念と切れ味で一掃する。
ドールたちは動けなくなると体が溶ける。これは山口さんが言うに魔法で作った式神だから。『黒の月』も魔法が使えるらしい。
「さあ、もうひと踏ん張り」
「くっ」
カメ男はもう動けまい。俺はメダルをブレスからブレーカーにはめる。
「マジックファイナル!」
ブレーカーの魔力がメダルをはめることにより最大になる。光りだしたブレーカー片手にカメ男に向かって走りこむと十字を切るようにその体を切り裂く。
「ぐあああああっ」
俺がカメ男から離れると体は爆発し奴は敗れた。
「ふう」
爆風が風に消えるのを見つめるのはもうお約束だ。
「学!」
「山口さん」
山口さんが走ってきた。
「大変だ、アルテミスが来たぞ」
「ええ!どこ?」
「公園にいる。みきこ先生が捕まっているよ!」
「なんだと!!」
俺は変身も解かず公園に向かった。アルテミスは俺の街の制覇を『黒の月』の首領に命令された幹部。俺の街は政治家やえらい人がよく行き来するから狙われている。
☆
「アルテミス!」
「やはりな、この女を人質にしてよかった」
銀色の鎧の覆面。アルテミスがいた。しかもみきこ先生の二の腕掴んでるし。
「ストロングソウル!来てくれたの?」
「おうよ、みきこ。今すぐ助ける」
「どうだろうな」
「会話入ってくるなよ」
とにかくみきこ先生助けないと。二の腕掴みやがってこのオッサン。
「みきこから離れな。勝負してやる」
「いいでしょう」
先生を離すとアルテミスは剣を出す。先生は離れて木の影に隠れる。
あいかわらず先生や友達を人質にしといて俺を呼ぶ。なんかややこしいやり方。
「覚悟せよ!」
「いくぜ!」
勝負が始まる。アルテミスは他の『黒の月』の奴らと違う。なんだろう、戦い方や言ってることとか、一人だけ見ているものが違うような。
繊細な動きに無理のない速さ。剣と一心同体のように動く。
俺は魔法の力に引っ張られるのに。
刃と刃の火花が視界に焼き付く。ブレーカーとアイツの愛刀白鳥が空を切るように見える。
「隙有!」
「あぐ!」
隙を突かれて俺は倒れた。
「終わりだ」
白鳥が仰向けの俺の首に落ちてきそうになった時、
「ソウル!負けちゃダメ!」
「みきこ!」
俺らから離れて木の後ろに隠れている先生の声が耳に入る。そうだ、俺まけちゃダメ。街守らないといけないしそれにまだ俺先生に告白もしてない!
「おんどりゃ!!」
白鳥を避けて俺は立ち上がる。
「何?!」
「そっちこそ隙有!」
アルテミスも腹を蹴る。その勢いでうまく離れれた。
「こいよ、決着いい加減つけたいから」
「私もそれに同意だ」
立ち上がる俺はブレーカーを持ち直す。
「ソウル頑張って」
先生は両手をぐっと握り俺を見つめる。なんか可愛い。
「ありがと、俺は勝つぜ」
もう決めよう。マジックファイナルで決めてやる。
さっきと同じでメダルをブレーカーにはめ込む。先生が見てるからなんだか勇気が出てくる、魔法最大だ。
街の平和と、先生とラブラブの未来。この一撃で叶える!
「マジックファイナル!」
俺はアルテミスに向かって走りこむ。アルテミスも白鳥を構え、俺に向かってくる。
「ウィングクロウ…」
「はあ!!」
「…っ」
二つの力が押し合う。そして、
光の爆発と爆音と煙が公園を覆う。
「ストロングソウル!」
先生は無事で声が聞こえた。俺も意外と無事。
「みきこ大丈夫か?」
「うん。アルテミスは?」
肝心のアルテミスは、
「ああっ、まただ」
爆風にうまく隠れて姿を消した。その証拠に白い一輪のバラが地面の上にあった。決着つけるんじゃなかったのかよ。
「またアルテミス逃げた?」
「うん、まったく何してんだよ」
俺は変身解除する。
もちろんまだ大人の姿。俺が学だなんて先生は知らない。
「ソウルが無事でよかった…」
「俺もみきこが無事で…」
大人の姿、ソウルじゃなきゃ先生とこうしてイチャイチャできないよ。学としての俺のことは何とも思ってないんだから。
「そうだ、ちょっと早いけど誕生日デートしてあげる」
「え?いいの?でもなんで私の誕生日しってるの?」
「いいから。晩飯とか食いにいこ」
俺は先生の手を引く。だけど先生は
「ありがとう、でも私今日はだめなの」
「え?なんで?」
「誕生日は明後日だし、それに仕事残してるし」
「学校に戻るの?」
「うん。誕生日デートならまた当日ね」
先生。彼氏とかの話も学校も同じくらい大事だって言ったよな?俺も先生が先生だから好きなんだし。仕事の邪魔したらかっこ悪いな。
「そうか。じゃ俺帰るな」
俺は木の影に向かって歩いて先生から離れた。
「ばいばい」
先生は笑いながら手を振ってくれた。
「…チェンジ解除」
俺は物陰で元の吉野学に戻った。そしてまた、先生のところに向かう。
「おーい先生!」
「あ、吉野くん」
「ストロングソウルが先生ここにいるっていってたからかわりに学校まで送ってあげる」
「ソウルが…」
やっぱり子供の俺には大人の顔をする。大人の俺の前なら可愛い、いわゆる恋する乙女みたいな顔するのに。
「じゃあ行こ。今から俺とデートだよ」
「はいはい」
やっぱり子供の俺として好かれたい。ソウルじゃなくてちゃんと吉野学として。
「先生なんか可愛い」
「からかうんじゃないの」
山口さんにソウルの正体を誰かに知られたら魔法の力が無くなるって言われたから俺がソウルだなんて言えない。でも俺は子供の俺として先生にアタックしてやる。
「またソウルに会えるかな?」
「おうよ。ソウルは先生も街もみんなも守るから」
学校までの道を俺と先生は歩いていった。
その様子を自称神様のオッサン、山口さんに終始見られていてそれを知った俺が激怒したのは別の話である。
吉野学は魔法戦士である。魔法戦士に待ち受ける黒の月は地球制覇を企む犯罪組織である。
ストロングソウルは人間の夢と自由のために黒の月と戦うのだ。
《未完》