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たぶんぼー⑥


 どちらかが友達と一緒なら、状況はまったく変わっていたはずだ。この渡り廊下で僕たちの前後に人はなく、一対一というのがどうにもマズい。

 廊下の右側を歩く僕に対して、留美子のほうは若干こちらに寄ってきている。寝不足であるはずなのに、あの爛々とした目は何だ? 蹌踉(そうろう)とした振りから、まさかの酔拳?

 とにかく彼女は話しかける気に満ち溢れているようだった。リノリウムタイルの目地に沿ってまっすぐ歩けよ、と心の中で罵ってみる。


 僕たちは同じ高校に進学したけれど、クラスは別々。お互いに別々の友人ができ、放課後の過ごし方もそれぞれだった。

 さすがに高校生になってからは、うちに来る頻度が減っているけれど、逆に図々しさは増したように感じる。昨日僕が帰宅したとき、うちの家でバクバクと晩飯を食っていた彼女の姿が、まさにそれだ。

 それについては、僕も小学生時分に榊原家でそうとう馳走になっているので、言えた義理じゃない。

 ただ、留美子が来ると僕のおかずの量が減るので、食っていくときは、前もってうちの母ちゃんにひと言断わってほしい。


 留美子は今飯を食ったところなのに、ポテチを摘まんでいる。

 僕が晩飯を食べている間、ダイニングテーブルに着いてずっと喋っていた。内容は誰それがどうしたこうしたという話。おかげで、僕が会話したことのない、江利リンと麻里ポンの趣味嗜好に詳しくなった。

 そして、僕が食事を終えて二階へ上がると、留美子は帰っていった。が、五分と間を置かずにメールが飛んできた。

(行く)なかなかシンプルな本文だった。

 今帰っていったばかりだろう……。それを無視していると、しばらくして網戸にBB弾の当たる音がした。彼女がしびれを切らして、電動ガンで射撃しているのだ。


「やめろよ。それと、そのデザートイーグルは返せよな」立ってカーテンを開けた。

「これって弾がよく詰まるわよね」

「だからぁ、文句言うなら返せ。ジャイアンかよ」

 留美子は銃をこっちへ向けた。

 僕はすばやくしゃがんで隠れた。

 彼女は容赦なく弾を打ち込んでくる。無茶苦茶だ……。

「おい、散らかすな。部屋で回収漏れの弾を踏んだら痛ぇんだって」

 言いながら、下から手を伸ばして網戸を閉めた。

 彼女の打ったうちの何発かが自分の部屋に跳ね返り、銃撃は止んだ。馬鹿めが。


「ねえ、お父さんが出張に行ってて、今日は誰もいないんだけど」

「そんなこと」知るか、と言いかけて思いたった。「それならルミん家で映画上映会にしようぜ。田中から、トム・ハンクスのダ・ヴィンチ・コードを借りてきたんだよ。ポータブルのプレイヤーも貸してくれたんだけど、どうせならデカい画面のほうがいいしな」

「OK、わかった」

 留美子は銃を下ろして、脚立を構えた。

「ちゃんと玄関から行くって……」



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