第2話 3才になりました
アルガルド大陸ルーガニア王国ファイマ領というのが俺が生まれた場所だ。
俺の家はどうやらこの王国でいうところの男爵の地位にあるらしい。
家族構成は父ジルオール・レイヴァン、母ルシア、長男ダンテ、次男マーク、
長女にエリーゼ、次女にフローラ、そして俺ジェノン。
3男2女という大所帯だ。
といっても領主の護衛騎士をしている父は、めったに家には帰ってこないし、
長男のダンテ兄さんとエリーゼ姉さんとは会ったこともない。
ダンテ兄さんはこのレイヴァン家を継ぐため勉強を王都にて勉強中、
エリーゼ姉さんは他家に嫁いでいるで、こちらも会う機会がない。
3才児で特に仕事もない、やることのない俺の日常だがすごく忙しい。
とはっても相変わらず3点セットの繰り返しだ。
まず朝起きたら魔力を全身に巡らせ、枯渇させる。
朝御飯を食べている間に魔力が回復するので、
もう一度枯渇させ、家の近所を走る。
途中体力が尽きたら、そのまま寝転んで休憩、
そしたら体力・魔力とも回復するので、再び枯渇させ走る。
その後、家に帰っては昼御飯を食べ、また魔力を巡らせて枯渇させ、
夕食まで走って寝て回復→枯渇→走ってと繰り返す。
最後は寝る前にまた枯渇させてから就寝といった具合だ。
夕食後は、学校から帰ってきたフローラ姉さんに抱っこされる。
フローラ姉さんは俺のことが気に入っているのか、夕食後は必ず抱っこしてくる。
13才になった姉さんに抱っこされるのは、
精神年齢25才+3才の男としては恥ずかしいのだが、
なんせ今は3才児でもあるし、大人しく胸のなかで収まっている。
年齢に似合わずたわわな胸が当たっているが、
さすがに姉弟のせいか性的なものはなにも感じない。
それに姉さんは光る絹のような金髪に、吸い込まれそうな空色の瞳、
ぷっくりとした艶のあるピンク色の唇、まあようするに想像を絶する美人なので、
余計に恥ずかしさが倍増する。
平凡とした俺の顔を比べても、本当に兄弟とは思えない。
そういえばマーク兄さんもジルオール父さんも、
道ですれ違ったら、振り向かれるほどのイケメンだ。
もしかしてまだ会ったことのないダンテ兄さんとエリーゼ姉さんも
そうなのだろうか?
まあ俺は別に男前でもなくて構わないし、この母さん似の赤い髪も平凡な顔にも、
満足している。断じて負け惜しみではない。
「フローラ姉さんはいつも僕を抱っこしますね。」
「だってジェノンって肌すべすべで、あったかいんだもん。」
「僕はもう眠たいのです。」
「そのまま寝てもいいわよ、後でお部屋まで運んであげるわ、今日も疲れているのでしょう。」
「はい、今日もいっぱい走りました。」
「家の回りをずっと走って何が楽しいのかわからないけど、倒れるまで走っちゃダメよ。というよりなんであんな走ったり倒れたりって変なことやってるの?」
「それは秘密です。」
「えー、教えてよー。」
学校に行っているはずなのに、しっかり見られていた。
このトレーニングは家族にも秘密にしている。
一度魔力枯渇の話を聞いたことがあるのだが、
世間一般では枯渇させたら物凄く体に悪い、何度も繰り返すと死ぬと伝わっている。
実際死ぬことないのは俺が身をもって知っているのだが、
あのだるさと痛さを経験したものからしたら、そう感じるのも不思議ではない。
それに1度や2度の魔力枯渇ではなにも効果はないから、誰も試そうとはしない。
俺も効果が出始めた!と感じたのは、毎日枯渇させて1ヶ月ぐらいしてからだしな。
というわけで、魔力枯渇を家族に知られたら、特にフローラ姉さんに知られらた、
間違いなく止められてしまうので、秘密にしているというわけだ。