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その男、規格外につき  作者: しんぷりん
第1章 雌伏の時
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第20話 ダリエ村攻防戦4 ファイマ領第2騎士団 アルバ

 「アルバ団長!もうすぐダリエ村です!」


 そう声をかけてきたのは、俺と先頭を並列走行している、ファイマ領第2騎士団の副団長を務めるギガースである。俺たちの後ろにも団員が20名、騎馬に揺られながら、足並みを乱すことなく黙々と続いている。なぜ俺たちがダリエ村に向かっているのかといえば、昨日の深夜、ダリエ村に亡者鬼が現れたと連絡があり、その討伐のため、俺たち第2騎士団に出撃命令が下されたからだ。

亡者鬼は魔物としての強さはたいしたことないが、そのやっかいさは上級に匹敵する。何故なら普通の魔物は人間を殺し食べるのだが、コイツは人間を食べないかわりに、人間を魔物にしてしまう。亡者鬼に魔力を奪われたものは、己も亡者になってしまうのだ。そして亡者になってしまった者が、最終的に亡者鬼になってまた亡者を増やす・・・まさに負の連鎖だ。

やつらに仲間意識があるかなどは知らんが、ほっておいた場合、多くの者たちが亡者鬼になってしまう可能性がある。だから発見次第、即時殲滅しなければならない。そんな理由もあり、ファイマ領騎士団で突撃・白兵を専門とし、最も移動が速いと言われる我が第2騎士団がその討伐に選ばれた。

とは言っても亡者になるまでは数日猶予があるので、それまでに汚染された魔力を、聖属性魔法の【浄化】を掛けることで助けることはできる。だから今回の団員は、聖属性持ちを多く揃えた。

本当なら報告を受けた時点で、すぐにでも出発したかったのだが、全属性魔法の中でも一番少ない聖属性持ちの団員を揃えるのに、時間が必要だった。そこで俺は、現地の情報を少しでも早く集めるため、第2騎士団専属の斥候、テオとパトリックを先に偵察に出した。そして俺は奴等に遅れること数時間、集まった団員を引き連れ出発、騎馬を走り通して、ようやくここまでやってきた。


「よし、このままテオ、パトリックと予め決めてある集合地点に向かう。そこで奴等を待つ」


風を切り裂く音と共に、団員の了解です!という声が聞こえてきた。



ーーーーーーーー



 おかしい、集合地点に着いてから、結構な時間が経った。約束の時間を過ぎたが、偵察に出した2人から連絡が入らない。近辺を確認させたら、茂みに2人が乗っていた馬が隠されてあったことから、ここに来たことは間違いない。


「ギガース副団長、パトリックとテオはどうした?」


「はっ、今だ連絡はありません」


「予定時間を超えているが、どう思う?」


ギガースは顎に手をやり、思案する。


「そうですな、奴等はまだ若造ですが、腕は確かです。その奴等が遅れているとなると、それなりの理由があるかと。ですが、今までも数ある難度の高い任務を成功させています。もう少し待ってもよろしいのではないかと存じます」


「ふむ、そうだな。もう少し待とう」


俺もギガースと同意見だ。逆に奴等が帰ってこないぐらいのことが起こっているとなると、この村は想像以上に悪い状況になっている可能性が高い。だがあの2人が亡者鬼程度に負けるとは思えん。俺は団員をそんな軟弱な鍛え方はしていないつもりだ。もしそんなことがあろうものなら、徹底的に鍛え直してやる。

俺は直ぐにでも、状況を確認しに村に入りたいと逸る心を抑え、何事もないような表情で2人を待つ。俺が動揺すると団員にまで影響する、どんな状況であろうと、それを表情に出すわけにはいかない。それに俺の軽率な行動で、団員を無用な危険に晒すわけにもいかない。


刻一刻と時間だけが過ぎていく。流石にもう限界だ、どう考えても2人に何か異常が起きたとしか思えない。俺はさらに偵察を出すのか、このまま村に突入するのかをここで判断しなければならない。決断を下そうと思ったその時、風に乗って、パトリックの声が聞こえてきた。風属性魔法【風伝かぜつたえ】、指定の範囲に自分の声を届ける魔法だ。


「ハァハァ、だ、団長・・・聞こえますか?状況を伝えます、ただいま戦闘中!敵は4体いました、うち亡者鬼は3体、亡者が1体、すでに亡者1体は倒しました。村民の安否は男性1人死亡、この死亡した男性が倒した亡者です。この男性、信じられないことに、汚染されて直ぐに亡者になりました。それと女性1人確保、それ以外の村民はまだわかりません。どこかに隠れている可能性大。俺たちは村民を探している最中に亡者鬼に遭遇、戦闘に移行。現在も継続戦闘中・・・おわっ!あぶなっ!それとこの亡者鬼ですが、俺らが知っている亡者鬼と明らかに違います。皮膚が固く武器も通じず、動作は普通の亡者鬼より数段速く、人を食べます!以上、至急、応援を!!」


「パトリック!」


【風伝】は一方的にしか声を届けるしか出来ない。それでもパトリックのあまりにも異常な報告に、思わず声が出る。だが会話は出来ない、今はそれがもどかしい。俺はパトリックの報告に、首をかしげるしかなかった。汚染されて直ぐに亡者に?皮膚が固い?人を食べるだと!?何だ、それは?本当に亡者鬼なのか?疑問は尽きないが、ここで悠長に考える猶予はなさそうだ。


「聞いたな、お前ら。総員騎乗!!」


「おぉぉぉっ!!」


号令一下、全ての団員が一斉に騎乗する。俺は全員が騎乗したのを確認すると、もう一度号令を下す。


「突撃!!」



ーーーーーーーー



騎馬を最大速力の襲歩しゅうほで走らせ、村へ向かう。一団になった我ら第2騎士団は、風の如き疾さでダリエ村に近づいていく。小さかった村がグングンと大きくなってくる。


「総員、戦闘準備、抜剣せよ!」


そう命令しつつ、俺も鞘からバスタードソードを抜く。抜くときのシャリンという金属音が、俺に安心と高揚を与えてくれる。村の入り口で亡者鬼と戦っているテオとパトリックの姿が見えた。報告通り、明らかに俊敏な3体の亡者鬼の攻勢に、なんとか耐えているようだが、その状況は明らかに劣勢だ。待っていろ、今すぐに助けてやる、手綱を持つ手に力が入る。

馬蹄の音でこちらとの距離を測ったのだろう、パトリックとテオが振り向くことなく、絶妙の間で同時に左右に飛び退くのを見て、俺は頬が緩んだ。あいつら、分かっているじゃないか。


「総員、このまま亡者鬼に突撃、吹っ飛ばせ!!」


「おっしゃ、いくぞお前ら!遅れるなよ!」


すぐ横を並走している副団長のギガースが団員に活を入れる。俺はそれに満足しつつ、亡者鬼に向かって突撃する。さて、どのぐらい固いか試してやろう。俺はバスタードソードを振りかぶり、すれ違いざまに先頭にいた男の亡者鬼に、叩きつけるようにして斬りつけた。バスタードソードが、正確に男の首に吸い込まれるように食い込んだ。グギャッという音と共に、頸部が折れ曲がるが、首を撥ね飛ばすことは叶わなかった。馬と剣の勢いに押されて、男が派手に吹き飛んでいく。俺の手に予想外の衝撃が残る。


「成る程、固いな」


パトリックの報告通りだ。普通の亡者鬼なら今の一撃で、頭と胴は完全にさよならしていたはずだ。

俺はそのまま直進し、村の広場らしきところで、馬を旋回させて停止させる。駆け抜けてきた団員が次々に集まってくる。


「全員揃ったな、総員馬から降りて、盾を装備!これより陸上戦に移る。それとギガース!」


「はっ!ここに!」


「盾を使ってやつらを囲って抑え、村の外に押し出せ。団員の選択は任せる。報告を聞いて分かっているだろうが、決して触られるなよ。村の外に押し出した後、火魔法で遠距離攻撃、その他の団員はそれを手助けしろ!」


斬りつけた時のあの感触、剣などの鋭利な武器は、通じにくそうだ。殺るためには、メイスなどで叩き潰すか、亡者鬼の苦手な火で燃やすのが、上策だろう。第2騎士団でメイスを使う奴はいないので、俺は火魔法で燃やすことに決めた。その為にはまず村の外に押し出さないと、家屋に燃え移ってしまう危険がある。

本当ならあの程度、俺1人でなんとでもなるのだが、それでは団員が成長しない。団員に経験を積ますのも団長の務め、もどかしいが手を出さないで、出来る限り静観することも仕事の一環だ。


「了解です!ジミー、トム、ペイジ、マイケル、オリバー。亡者鬼を抑えるぞ!」


ギガースは迷うこと無く団員を選び指示を出すと、各員2人ずつに別れさせた。1体の亡者鬼に2人の壁役を作るつもりなのだろう。俺の予想通り、2人3組はそれぞれが違う亡者鬼に向かって駆けていった。

 

それにしてもあいつらは一体なんなんだ?見た限り、亡者鬼の特徴に一致しているが、あの固い皮膚に俊敏な動きは、亡者鬼のものではでない。俺が殺ったことのある亡者鬼どもは、もっと柔く脆く鈍かった。


「総員に通達、これよりは先ほどの指示を守り、各自協力して亡者鬼を殲滅せよ!それとパトリックとテオをここに寄越せ」


あの2人には聞きたいことが山ほどがある、村民の居場所を見つけ出す任務も残っているし、ダリエ村周辺の詳細な捜索・調査もさせなければ。まだまだ休ますわけにはいかない。

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