第9話 魔法考察
推敲しても推敲しても文字にすると、うまく説明できないです。本当に小説を書くのは難しい。
ダンテ兄さんは数日帰省した後、ベルとともに王都に旅立った。その間、俺はベルとの別れを惜しんだり、ダンテ兄さんと模擬戦をしたり、釣りをしたり、古の森で魔物を狩ったり、一緒にグラン先生に叩きのめされたりと、濃密な時間を過ごした。俺は楽しかったこの時間を一生忘れないと思う。
俺は兄さんたちが去ってから、魔法のことを考え始めた。というのも魔物狩りをしていたときに、兄さんが【風刃】という魔法を使ったからだ。15mぐらい先にいる魔物が一瞬で真っ二つに切断される様を見て、俺は魔法の凄さを知った。魔法を覚えれば戦略の幅を一気に広げられる。有効利用しない手はない。
俺なりに魔法を考察してみた。
魔法は魔法石碑に書かれている呪言という文字を手でなぞりながら、正確に口頭することによって体内に魔法が生成される。魔法には属性があるし、自分の魔力以上の魔法は覚えることはできないという制約がある。
魔法属性だが火・水・風・土・聖・闇・無属性があり、人は無属性以外のどれかひとつの属性を持っている。こう言うと自分の属性以外の魔法は覚えられないのかと思うだろうが、そんなことはない。魔法は覚えたい属性はどんなものでも覚えることが出来る。ただ反対属性の魔法を使用した際、魔法発動時間が遅くなるという制約が発生する。そして反対属性ではない属性もやはり幾分発動時間は遅くなる。
反対属性とは火↔水 風↔土 聖↔闇である。
そして魔法を放つには発導体がいる、それは人は体内にある魔力を自分で動かして外に出すことは出来ないからで、その導き手として発導体が必要・・・・
とマーク兄さんの部屋にあった「魔法について」という本に書いてあった。これが魔法に関するこの異世界の世間一般常識だ。
だがその通説は間違っている部分がある。実は人はどの属性でも時間減衰なしで魔法を使用出来るし、魔法を使うのに発導体など必要ないのだ。それを俺の《強化知識》が教えてくれた。
人間の体の中には生まれつき、各属性の魔力を通す魔力経絡なるものが存在する。
例えば火属性で考える。
火属性を持っているという人は、火の魔力径絡が生まれつき発達している人で、その反対に水の魔力径絡があまり発達していない人である。火の属性が超大得意という人は、火の魔力径絡が異常に発達しているが、逆に言えば水属性の径絡はほとんど発達していない人で、水魔法を使っても発動するまでかなりの時間を要してしまう。ちなみに無属性は一番発達している魔力径絡を使うので、発動時間に減衰はない。
だが実はどの径絡も訓練することで発達させることが出来る。
訓練方法は、魔力を筋肉や臓器、血管、肌、目、指の先、体すべて、細胞の一個一個にまで、浸透・定着していくようにイメージして、魔力と細胞が体隅々まで混じりあわすこと・・・そうつまり俺が生まれたときからやっていた魔力量増大法、これこそが魔力径絡を発達させる方法であったのである。
俺は魔法をまだひとつも習得していないが、この理論上でいうならば、どの属性の魔法を使用しても発動時間増加という制約は適用されない。
驚きなのは、この魔力量増大法は、魔力を動かす訓練も兼ねていた。人が発導体を必要なのは、魔力が動かせないからであるが、俺は普通に魔力を動かすことが出来る。そもそも動かさないと、魔力量増大法が出来なかったからなのだが、これは嬉しい誤算であった。
これが魔法を考え始めたら、俺の《強化知識》が教えてくれた魔法に関する真実だ。
さて、ここで問題がある。それはどの魔法を覚えるかということだ。
魔法は自分の魔力量を超えるものは覚えることができない。これは絶対条件になっている。
例えば俺の魔力量が10あると仮定して、【火矢】という魔法を覚えたとする。
【火矢】を覚えるのに必要魔力量が仮に1とすると、10ー1=9、残り魔力量は9なり、まだ魔法を覚えたいと思ったとき、魔力量9までの魔法なら覚えられるということになる。
次に【紅蓮の矢】という魔法を覚えようとする。必要魔力量が仮に10だとすると残り9なので、覚えることができなくなる。そして一回覚えた魔法は2度と取り消せないので、必要魔法量が10を超える魔法はどれも覚えることが出来なくなるといった具合だ。
つまりここからわかるように、高威力の魔法を1個覚えるのか、中威力の魔法に小威力を数個か、小威力の魔法を数多く覚えるのか、という選択肢が出てくる。
それに忘れてはいけないのは、高威力の魔法ほど呪言は難しく長くなり、難易度は非常に高くなる傾向がある。それらも踏まえ、どれを覚えるのかというのを、自分自身で決めなくてはならない。そしてまだ問題はある。そもそも高威力の魔法は国が管理しているので、覚えるためには国の許可がいる。
考えるば考えるほど、魔法というのは奥が深くて、制限が多くてややこしい。
実はまだややこしい話がある、それは呪言だ。
魔法石碑の呪言は属性によって全然文字も違うし、読み方も違う。地球風に例えるのなら、火属性ならイタリア語、水属性なら中国語といった具合に、属性によって全部バラバラなのだ。正直1系統だけでも覚えるのは、大変なことだろう。
だがこの一番難点のこの呪言は俺の場合、何も問題なかった。《言語理解・翻訳》という能力があるからだ。マーク兄さんの部屋で「魔法について」の本を読んだ時、呪言文字の章もあったのだが、普通に文字を理解し読むことが出来たし、俺には呪言の難しい発音も翻訳があるから関係なかった。俺が日本語で呪言を唱えても、呪言は日本語でなく魔法の呪言に翻訳されるからだ。便利だなというぐらいにしか思っていなかった能力が、実は物凄い能力を秘めていることがわかった。
俺は魔力量増大法で人より多い魔力量があると思っているが、それでも無限ではない。なので、この先絶対に必要になるという魔法を吟味して、優先的にそれらを覚えていこうと思う。
本当に最後までお読みいただきありがとうございました!




