表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その男、規格外につき  作者: しんぷりん
第1章 雌伏の時
11/46

幕間3 レイグリットとジルオール

皆様、メリークリスマス!空いた時間の暇潰しに読んでいただければ、幸いです。

「殿下、明日は休暇をいただきたいのですが?」


俺の執務室にやってきたジルオールは、開口一番にそう言ってきた。俺はその年老いても色褪せない相貌を眺め、少し思案する。


「めずらしいな、何かあったのか?」


コイツは普段から勤務態度は真面目で、あまり自分からは休みをとらない。まあファイマ領領主で国王陛下の弟である俺の護衛という任務がある以上、そう簡単に休暇がやれないのは、仕方がないことなのだが。俺は立場上、常時護衛がついており、その護衛任務を担当するのは、今目の前にいる守護騎士ジルオールを筆頭に、双璧のタイタン、疾風のアルバがいる。

我がルーガニア王国でも屈指の手練れたちだ。この3人のうちの1人が毎日俺の護衛を担当する決まりになっている。俺の護衛任務がない日の彼らは、それぞれに騎士団を持っているので、自分の担当の騎士団の団長を勤めている。


「えぇ、ちょっと明日は息子が遠出するので、着いていこうかと。」


「マークのやつが遠出するのか、本の虫の奴としてはめずらしいな。」


 にしてもマークは確か今年で18才、成人になったばかりだが立派な大人だ。それにマークも大人になってまで親に着いてこられるのも嫌だろうし、親馬鹿のコイツには、ひとつ釘を指しておくか。


「おいおい、マークはもう大人だぞ、親がついていくなんて、そんな情けないこと、奴も恥ずかしいに決まっているだろ。」


「着いていくのは、マークではなくて、3男のジェノンです。」


ん・・違ったのか、そういえばコイツのところには3男坊がいたな。噂では同年代の子供達とは遊ばずに、近所を走っていたかと思えば、突然寝転んだりしたりとか、変な子供と聞いているが。噂だけを信じるのはなんなのだが、その通りだとすると、凄い変わった趣味?を持った子供だな。


「あぁ、いたな、例の変わった子だな。」


「失礼な、ジェノンはルシア似のとっても可愛い子ですよ、特に寝ているときなんて、あれは天使というやつですね!舌足らずなのに、大人口調な話し方も、本当に可愛いんですよ!話しているうちに会いたくなってきました、帰っていいですか?いいですよね?」


駄目だ、コイツ。相変わらず、家族のことになると性格が変わってしまう。大体ルシアは確かにとんでもなくいい女だが、それは中身であって、外見はごく平凡な女だ。そのルシアに似たというのは、顔は凡庸ということだぞ。もちろん俺はそんなジルオールの逆鱗に触れるようなことは言わないが。


「いいわけあるか!まあいい、わかった、わかった、それで代わりは誰だ。」


「タイタンに代わってもらいました。」


「そうか、了解した。ちなみにどこに行くんだ?」


「古の森ですよ。」


ん・・・なんだと・・・今、何といった。俺の聞き間違いか?


「ちょっと待て、どこに行くって言った?それとジェノンは何才だ?」


「古の森ですね、それとジェノンは6才です、可愛い盛りです。」


6才の子供が古の森だと!通常古の森に入るのは、学校に入って、尚且つ戦闘科で最低でも3年の修練、そして最終試験に合格したもののみが入ることが出来る危険領域だぞ。冒険者だって初級のやつらは入ってはいけない決まりになっている。まあ勝手に入って帰ってこない奴もいるが、そこまでは世話も出来んし、する筋合いもない。


「血迷ったか、キサマ!自分の息子を殺すつもりか!」


「そう思ったんですがね、私もグラン殿にそう言ったのですが、大丈夫の一点張りで。彼がそういうのならば信じてみようかと。ですが話を聞いて私は心配で夜も眠れないぐらいなので、隠れてついていこうと考えているわけです。」


「グラン、あの人がどうして出てくる?」


「出てくるも何もジェノンの家庭教師ですから。」


あのグランが!子供から見ればその容貌から恐怖の対象にしかならない、笑ってた子も必ず泣くと言われる、あの必滅剛槍、鬼のグランが6才児の家庭教師をしているだと!なんの冗談だ、それは。


「最初は槍を教えるだけだったんですがね、何故かうちのジェノンとグラン殿は馬が合ったみたいで。」


つくづく変わった子供だ。あの戦闘狂を気に入るとは。ルシアとその子供たちを溺愛しているグランの狂喜乱舞ぶりが目に浮かぶわ。しかし俺も興味が湧いてきたな・・・そうだ、いいことを考え付いたぞ。


「おい、気が変わった、お前の休暇は取り消しだ。」


「!!何故です?」


「待て!そんなに殺気を放つな、今から理由を言うから。明日は俺も古の森に連れていけ。俺の護衛はお前ということでいいだろう?連れていくなら、明日は領内巡視の日にする。」


顎に手をやって考え込むジルオール。くく・・悩んでも無駄だ。お前には最初から選択肢などない。息子の成長をその目でみたいなら、俺を連れていく以外に手はないのだ。そして最終的には親馬鹿のコイツがそれを逃すわけがない。


「殿下を危険にさらすのは・・・」


粘るな、もう一押しするか。


「我が領内はここ最近は安定しているし、守護騎士と必滅剛槍がいるんだぞ、むしろ過剰戦力だ。それに俺もルシア似の可愛いジェノンを一度見てみたいからな。」


「わかりました、では明日は古の森に向かいますので、準備をお願いします。」


よし、計画通り。子供をダシに使うのが、コイツには一番効果があるな。こんな面白いこと逃す手はない。明日が楽しみだ。



ーーーーーーー


 俺とジルオールはジェノンに見つからないよう、彼らが来る前に古の森に入った。しばらくしてやってきた2人はすぐに森に入ることなく、会話をしている。ジェノンはジルオールの言った通り、本当にルシアに似ている子だった。美形のジルオールと違って何とも見た目は凡庸だ。グランの声は大きいので、ここまで丸聞こえだ。まったくあのじいさん、子供になんてこと吹き込みやがる。

武器は殺すものとか覚悟を問うとか、6才の子供に理解出来るはずはないだろう、と思っていたら、凡庸だった顔が何ともいい武者ぶりの顔になっていった。あれは戦う男の顔だ。グランが次元収納から槍を取り出す。ジェノンは初めてみた魔法に興奮気味だ、こういうところはやはり年相応だな。


 森に入った2人の後を、見つからないように注意しながらついていった。ちなみにグランにはあっさりとばれている。ジルオールはともかく、俺の実力でグランの目を欺けるわけがない。まあやつもあまり気にしていないみたいだし、ジェノンにだけばれないようにしよう。おっと立ち止まった。どうしたのだ?なるほど、フィール草の説明をしているのか。信じられないが本当に先生をしている。

それにしてもジェノンのやつはまったくグランを怖がってないな。むしろ尊敬の眼差しでグランの説明を聞いている。そしてよく見ればグランのやつ、目尻が下がっている、あれはそうとう喜んでいるな。孫可愛がりの老人ってとこか。隣をみると、ジルオールが羨ましそうにそれを見ている。ん・・ちょっと待て、剣に手をかけるな!出ていこうとするな!ばれるだろーが、落ち着けって。俺は慌ててジルオールを押さえつける。本当にコイツ、子供が絡むと節操ないな。


 説明を終えて2人はさらに奥地へと向かった。ここら辺は完全に魔物の生息範囲だ。まだ浅い場所なのでそう強い魔物は出ないだろうが、子供にとっては超危険地帯だ。考えているうちに緑小鬼リョクコキが現れた。10匹か、あいつらはいくら殺しても逃げない魔物だし、グランの奴が1匹ぐらい残してジェノンに倒さすのだろう。

と思っていたら、グランは少し下がり、腕組みしたまま動かない。本気か?まさか6才児に10匹の緑小鬼を相手させるつもりか?止めさせるか迷ったが、迷っているうちにパチンとジェノンが頬を叩き、威勢よく大声を発すると、緑小鬼に一直線に向かっていった。


 俺は今、目の前で繰り広げられる光景が信じられなかった。6才の子供が10匹の緑小鬼を相手に圧倒していた。まだ子供だからか動きは遅いとはいえ、その技術の高さは目を見張るものがある、無駄のない体捌き、確実に急所を突く技術、間合いに入られても慌てない精神力。

圧巻だったのは前にいる4匹を無視して、背後の緑小鬼を回転斬りで斬り伏せたことだ。ジェノンのやつは4匹の緑小鬼が正面にいる中であえて後ろを向いたのだ、敵が正面にいる中で背中を見せるなんてことは、そうはできない。きっとジェノンはあの4匹が自分の間合いに入るまで、まだ時間があると一瞬で考えたのだろう。そもそも子供が初めての実戦で、敵が1匹足りないと気づいた時点で異常なのだ。普通は興奮して気付かない。そして気づいてすぐにそれを対処出来る行動力、判断力、本当にあの子は6才か!?


「殿下、どうです!見ましたか!あれが私とルシアの息子、私とルシアの息子なんですよ!凄いでしょ。格好いいでしょ!」


 興奮したジルオールの鼻息が顔にかかる。ええぃ、うっとうしい!それに何故同じことを2回言う。面倒くさい、家族の絡んだジルオールは、相手にするのが本当に面倒くさい。だが凄いと格好いいは納得できる、確かに俺も心底驚いた。

もはやあれはもう一種の化け物だ。6才であれか、大人になったらと思うと末恐ろしいな。ジェノンがまだ無名のうちに、なんとかこちら側に引き込めないか、早急に考える必要がありそうだ。

長文になってしまいました、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ