プロローグ 1
初投稿です、みなさま、よろしくお願いします。
俺は生まれつき体が弱かった。
医者がいうには物凄く珍しい病気らしい。
そのせいで俺は運動は一切することができなかった。
そんな俺がスポーツ選手や格闘家に憧れるのは、全く持って仕方のないことだと思う。
一度でいいから、彼・彼女らのように精一杯体を動かし、努力し、自分の力を試したかった。
皮肉にもまるで我が家のようになってしまったこの白い病室で、いつもそう夢想して生きてきた。
だがしかし、それも終わり、とうとう俺の体は限界に達したらしい。
その証拠にいつもは表情の変わらない俺の担当医も今日ばかりは、眉間にシワをよせている。
「先生。」
「なんだい?」
「俺は死ぬのか?」
俺の質問に担当医は静かに目を閉じたあと、俺を見つめハッキリと言う。
「ああ、最初からわかっていたことだが、現代の医学では君を救えない。」
言い切りやがった。
だが俺はこの担当医のこういうハッキリした態度が結構好きだ。
よく誤魔化して死なないよとか、安易に治るからとか言われるよりはよっぽどいい。
「昔からその覚悟はしていたけど、やっぱり辛いな。」
「本当なら君はとっくの昔に亡くなっていてもおかしくはなかった。
担当医がいうことではないが、いままでよく生きてきたと思う、本当に素直に尊敬する。」
「は、本当にもうすぐ死ぬ患者に言うことではないな、相変わらずハッキリと言う。」
「君がそれを望んでいたからし、まあ僕はご存じの通りこんな性格なものでね。」
そう言って担当医は肩をすくめる。
相変わらず表情はあまりないが、いつもより暗い翳りがあるのは俺の気のせいではないみたいだ。
もうすぐ死ぬ俺だが、両親は事故で他界しているし、身内もいない。
どうやら俺の最後を看取るのが、この男になりそうだということだが、案外悪くないと思っている俺がいる。
「まあ、いいや。先生には世話になった、礼をいう。疲れたし、もう寝るわ。」
「あぁ、ゆっくり休むといい。」
そうして俺はゆっくり瞳を閉じた。
ピーーーーーー。
「17時40分、ご臨終です。」
そう言って僕は死亡確認をし、痩せ細った青年を看取る。
彼が子供の頃の付き合いだから、かれこれ25年にもなるか。
こんな仏頂面で愛想のない男のどこが良かったのか知らないが、彼と僕は不思議なぐらいウマがあった。
年の差はあったが、本当に色んな話をした。
体は弱かった彼だが、その精神は果てしなく強かった。普通なら耐えがたいほどの苦痛を堪え忍び、
どう診断しても5年生存は無理だと思っていたのだが、不屈の精神でその5倍は生き続けた。
先程は軽口を叩いて言ったのだが、本当にそれは称賛に値することだ。
それに君は知っていたかい?
君の諦めない姿勢は何よりも他の患者たちの希望になっていたことを。
医者としては何もできなかったけど、彼の友人として、
次の人生があるのなら、今度こそ幸ある人生を過ごしてほしいと痛切に願う。