超地味系女子と超自己中男 番外編
「かーなちゃん!」
「なんですか?」
いつも通りの帰り道。何もかもがいつも通りだったが、一つだけ違うことがあった。
それは私とこの男の関係性。そう、私と神崎君は先月から付き合い始めたのだ。
「そろそろ1ヶ月だねー」
「何がですか?」
相変わらず神崎君はヘラヘラしていてどこが本気でとこが冗談なのかいまいち掴めない。
「俺たち付き合ってそろそろ1ヶ月だよ。覚えてないとかないよな、さすがにー」
「ああ、そうですね」
でも私的にはこの半年近くこの男と一緒にいるわけで、付き合う前と付き合い始めてから特に何も変わったことはないから付き合っているという実感自体あまりない。
でもやっぱりお互いに好意を寄せているから一緒にいるんだと考えるとまだ恥ずかしい。
「なんでそんな顔赤いわけ〜?」
「な、なんでもないです!」
やはり神崎君は人の心が読めるのか…。
「そういえば、1ヶ月って早いですね」
「まぁねー。佳奈ちゃんとずっと一緒にいると尚更ね」
神崎君はこういうことをしれっと言ってしまう人だと思い出し、私は多分顔が赤くなっているので、俯いた。
「俯かないでよー?俺、佳奈ちゃんのことやっぱ好きだなー…。佳奈ちゃんは俺のこと好き?」
私はさらに気恥ずかしくなり、言葉が出なくなった。
「……ッ!わかりきってること聞かないでよ……」
「やっと敬語が崩れたねー。まぁ、今日は許してあげるー」
「……どうも……!」
「でも、やっぱり好きな人には好きって言ってもらいたいもんですけどねー」
そう言い神崎君は空を仰ぐ。
付き合いはじめて気づいたこと。神崎君は意外と心配性で、寂しがり屋なのだ。
「佳奈ちゃんさ、あの後は本当に何もない?」
いきなり神崎君が深刻な声のトーンで話してきたことに私は驚いた。
「うん、大丈夫ですよ。それになんかあっても私なら大丈夫ですから」
何かとは、私と神崎君が付き合っているということが噂になった時、神崎君がクラスのみんなの前で言ってしまったのだ。
『神崎と大森さんって付き合ってんの?』
クラスメイトの眞山隆一がクラス全員が聞こえるような声のトーンで言ってしまったのだ。
「ん?そうだけど、なにか?」
『!?』
クラス中から注目を浴びることなど予測できたはずなのに。神崎君はいつもの如くさらっと言ってしまったのだった。
持ち前の明るさと人懐っこさで男女ともに人気の高かった神崎君が私みたいな地味系女子と付き合い始めたのだから派手系な女子たちはもちろん黙っていなかった。
その日の放課後には学年中にその噂は広がっていた。
そして、テンプレートをなぞるように私は校舎裏へ呼び出され、派手系女子たちに囲まれていたのだった。
「どうして神崎くんと付き合ってるわけ?」
そんなの向こうから告白されたからですけどなにか?などとは言えず、
「……。なぜあなたたちに話さなければならないのですか?」
「そんな態度でいいわけ?」
また違う女子が詰め寄ってきた。
「何か私悪いことでもしましたか?」
「なんであんたみたいな地味で目立たない奴が神崎くんと付き合ってんのかって聞いてんの!」
「私が目立つ女子なら文句はないのですか?それは面白いですね」
「な、何が面白いのよ!」
「いやぁ、だって皆さん告白すらしないのに付き合っちゃったら文句しか言わないんですもの。それに私に聞くこと自体筋が通っていないと思うのですが?どうして彼が私を選んだか本人に聞いてみてはいかがですか?」
「ッ!……!」
そう言ったら女子たちはそそくさとばつが悪そうに逃げていった。
あんなに虚勢を張っていたけど、本当は超怖かったり……。
向こうから人が走ってくるのがわかった。少し怯えながら向こうを見ると、男子だった。
「佳奈ちゃん!」
「!?」
私のことを佳奈ちゃんと呼ぶのはあの人しかいない。
神崎君は私を見るなり手を引いて抱きしめた。
「か、神崎君!?」
私は驚きすぎて何もできなかった。
「……。まじで心配したんだよ」
「ああ……ごめんなさい」
「なにされた」
神崎君はいきなり真面目モードでいってきた。
「なんもだよ……。うん、ほんとになんでもないよ」
「嘘だ。手と足が震えてんじゃん」
そう言われて初めて気づいた。私はさっきから全身に力が入っていなくて、手と足が小刻みに震えていた。
「うん……。でも大丈夫」
「大丈夫なわけないじゃん。本音を言ってよ。俺、佳奈ちゃんの彼氏だよね?」
「うん…。心配かけてごめんなさい。あのね……。怖かった…………。神崎君来てくれてありがとう」
私は神崎君のぬくもりに触れて安心したのだろうか。気づいたら熱い雫が頬を伝っていた。
「ごめんなさい……。こんな姿見せたくなかった…ッ!」
「俺こそごめん。もうちょっと早く来れたらよかった……。佳奈ちゃんにこんな思いさせるなんて彼氏失格だな……」
「そんなことない!神崎君は……」
私の弱気な言葉は遮られた。
「わかった、何も言わないで。こうしてていいならもうちょっとこのままでもいい?」
「……。うん」
「そ……」
「これからはさ、俺、佳奈ちゃんのことちゃんと守るから。だから、これからもよろしく」
「はい、よろしくお願いします……」
次の日、私のことをいじめた女子たちに神崎君が直接文句を言いに行き、もうあんなことしないと約束させたそうだ。
それからというもの、嫌がらせは減ったもののまだ小さな嫌がらせは続いている。
「だめ、佳奈ちゃんに何かあったら俺が大丈夫じゃない」
「そんな大袈裟な」
私は笑って話題を変えようと思ったが、そういうわけにはいかなかった。
「嘘つかないでね。俺だけには……」
「嘘なんてついてないですよ。そもそも私が……」
私の言葉は遮られてしまった。
一瞬何が起きたか理解ができなかったが、あの日と同じで抱きしめられたのだ。神崎君はあの日と同じでとても辛そうに顔を歪めるのだった。
私はなんてバカなことをしたのだろう。神崎君にこんな表情させるなんて。神崎君にこんな思いをさせるなんて。
「お願いだから我慢しないで。一人で抱え込まないで。俺がいるから……」
「はい……ごめんなさい」
神崎君は少し切なげに笑って私を解放してくれた。
「んで、なにがあった?」
「…………。クラスの女の子たちから少しいじめまがいなことを受けました……」
「具体的には?」
「…………、昼休みに呼び出されて、突き飛ばされたり、蹴られたり?とか……」
「はぁ!?そんなこと黙ってたの!?ってかまだそんなこと続いてんのかよ……」
「ちゃんと言えなくてごめんなさい……」
「いや、佳奈ちゃんは悪くないんだ。ごめん、俺が守ってあげなきゃいけないのにね…。ごめん」
「だから私は大丈夫です!」
私はこんなこと言うのはキャラじゃないと思ったが、
「神崎君とこうして一緒にいられるだけで幸せなので……」
「…ッ!もう俺、佳奈ちゃん大好きだ」
私と神崎君は互いに顔を見合わせて笑った。
「またなんかあったら絶対言ってよ!?俺がぶん殴るから、そいつらのこと!」
「殴っちゃダメですよ、神崎君怒られちゃうし」
神崎君は少しやりかねないから怖いのだ。
「まぁいいや、帰るよ!佳奈ちゃん」
「え?……」
私は差し出された手にとっさに反応できなかった。
「え?じゃないよー!はい、手繋ご?1ヶ月たつのに手すら繋いでないとか健全すぎでしょ!というか手でも健全だけどね!」
「……はい」
「じゃー、帰ろー!」
私たちは繋がれた手からお互いの熱を知った。
「神崎君」
「なにー?」
「好きだよ」
「!?」
「不意打ち成功?」
「不意打ちはひどいよぉ〜!佳奈ちゃんー!いつか俺もやり返すから!」
「じゃあ待ってますね」
「待ってられちゃ不意打ちになんないじゃん!?」
「確かにそうですね」
こんな幸せがこの先も続きますように。
……FIN……
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
ついに番外編がかけました!
本当にこの作品は書いていて楽しいです!
私的には神崎君が好きですw
皆さんはどっちが好きですかねー?
番外編の第2弾も書けたらなーと思っています!
というか、このキャラたちが好きすぎてやばいですw
皆様にも愛されているといいなと思います!
それでは、また会う日まで!
2015年2月8日 高橋夏生