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第37話:おやつ戦争勃発前夜

35~39話まで、物語の流れとは関係ないエピソードが続きます

この世界を気に入ってくれた人だけ読めばいいと思います。


女児塾のプロレスのイベント内に「おやつ戦争」という催し?があって、

それに引っ掛けて書かれたエピソードです。

「お菓子賛成派とお菓子反対派」に分かれているものだと思ってください。(ちなみに美衣奈はその興行のことを知らない設定です)


もうね、読み返してみて、ぜんぜん女児塾を知らない人に楽しんでもらえるかなと思うと疑問符しかつきませんが、こんな軽いノリ?が好きな人は是非読み流して下さんし。

「っていうわけで、みーな。うちの軍ね」

女児塾の本拠地、厚木市某所はよく蝉が鳴く。耳に突き刺さるそのジィジィ蝉の声が暑さを増長しているようでうっとうしいこと限りがない。

一応ジム内は冷房完備だが、それでも10分も動けば汗に濡れるジムでひとり、満面の笑みをたたえているのは糸織だった。

「へ?何のこと?」

「な・・・」

その余裕の表情が一瞬にして凍りつく。

「あんた!今戦争中なの知らないの!?」

「へ・・・?戦争・・・?」

「ちょっと!!マジで!?ぱっぴーったら世界情勢に疎すぎ!!」

「え?え!?・・・えっとあの・・・イラク?」

「はー?なにいってんの?」

「ねぇ・・・」

要領を得ない会話に加えて馬鹿にしたような言い様に美衣奈もムッとしたようだ。

「なんのこと!?どこで戦争なの!?」

「わ!・・・みーなが怒った!」

言いつつぜんぜんダメージを受けていない糸織。

「だって訳わからないこというんだもん」

「どこでって言われても・・・おだわら?」

「小田原!?」

戦国時代にタイムスリップして北条軍と篭城戦でも繰り広げるつもりか。

「ねえ、ちょっと今あたし、がんばってるんだから、冗談なら後にしてよ」

自分のレベルを上げるのに関節技を取り入れたい。・・・かれこれ半年くらい前からの構想であり、それがようやくさまになってきているのである。本当に冗談なら後にしてほしいくらい、今の練習には熱をいれていた。

だが、視線をそらして人型のダミーミットに向かった美衣奈を、糸織は許さなかった。

「あんたはこの世界からお菓子がなくなってもいーの!?」

「へ?」

その声があまりに凛と冷たく美衣奈の耳を突き通したために彼女ももう一度顔を上げざるを得ない。

「あんたは・・・「ろって」と「みかくとー」と「ぶるぼん」と「めいじ」と「ぐりこ」と「もりなが」と・・・えっと・・・とにかく!!その社員全員をこのお盆で暑くて死にそーな時期に路頭に迷わすつもり!?」

「え・・・ちょ・・・ちょっと待って・・・なんのこと?」

「もう、二度とお菓子食べられないかも知れないんだよ・・・?あんただけじゃない。あたしもじぇのも、かすみねーも・・・みんなみんな・・・だよ?・・・いいの・・・?」

言っている間にしおりの涙がほろりと一すじ地面に落ちる。

「ちょ・・・」

「えぇ・・・そうなのね。みーなってそんなに冷たい子だったんだね。もうわかったモン。あたしたちだけで立派に戦って死んでやるから!!!大日本帝国バンザーーイィ!!!」

そしてそのまま走り出さんとする糸織。

何事かはわからないが、ともかくもこれをとめない美衣奈ではない。

「まって糸姉!!わかったよ!!」

「もういいんだモン!!潔く血肉をすすられてくるから!!」

その尋常でない剣幕に美衣奈は動揺した。

いったいなにがあるというのだ。自分の知らない間に彼女がこんなに取り乱すことがあったとすれば・・・。ピノに相談したいが、今にも崩れ落ちそうな糸織を前にそんな暇はない。

「話聞くから落ち着いてよ!!」

必死の声にも聞いてか聞かずか、糸織は走り去らない。だが背中を向けたまま、顔は向こうを向いて落ちたままである。

「もう残された時間はないんだモン・・・。今美衣奈がうんって言ってくれないなら、あたし行かなきゃ・・・」

「だ・・・だって・・・、戦争ってよくわからないけど・・・あたしじゃ手伝えることなんて・・・」

「ぱっぴーが来てくれれば百人力だモン!あたしたち、心の友達だよね?」

ジャイアンか。

「とにかく今うんって言ってくれなきゃもう間に合わないの!!もう時間が!!」

「わ・・・わかったよ・・・!!」

急に大声早口になる糸織に感化されて、ついうなずいてしまう美衣奈。すぐに「あっ」と思ったが、

「・・・ホントに・・・?」

何歳も年上だということを感じさせないような弱弱しい声を前に、首を縦に振るしかなかった。

「うん・・・手伝う・・・」

「OK!!じゃあみんなにそういってくる!!」

再び振り向いた糸織の顔はいきなり満面の笑みだ。いままの悲壮感はどこへ行ったのか?・・・などと思うほど脳がついていかないままにただただ驚く美衣奈を尻目に糸織はいたずらっぽく手を振る。

「じゃあね!」

「え?え!?・・・あたしは・・・!?」

「うん、明日まで待ってくれればいい~!」

明日は試合じゃないか。

「え!?だって・・!!」

「ばいばーい!!」

走り去る糸織の後姿を、呆然と見送る美衣奈の表情が滑稽で面白い。


そんなわけで「おやつ抗争」に巻き込まれていく美衣奈であったが、迫真の演技で完全に言いくるめた糸織の涙は、実は「目薬」だったということを知ったのは、それからずいぶん先のことであった。

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