第33話:セカンドインパクト!!
今まで何度かこのエピソード郡でも登場した龍子との戦いで、ハイキックをまともにくらって黒星に終わった試合の直後・・・という設定です。
真田黒子という新キャラが登場したので、そのキャラを借りてのエピソードでした。
~~~試合後、控え室に戻る途中で二三度ふらついたまま横向きにへたり込んだパピヨンは、そのまま失神。見つけたスタッフが救急車を呼び、夜間診療センターに緊急入院をした。頭蓋骨に損傷は見られないものの、嘔吐などの症状が見られたため脳内CTスキャンなどの精密検査のために大学病院に移送。現在検査入院中。なお、マスコミ関係には公開されていない~~~
・・・と、一時騒然となった今回の入院劇であったが、経過としては特に心配もなさそうだ。
検査の結果も良好で、とはいえ頭なので一応数日入院することになった。
まぁともかく、いろいろな意味でさすが「熱血硬派龍子」である。おそらくは女児塾で初めてパピヨンに「真剣に」挑んだ人間なのだろう。何に関しても一本気な龍子の性格を如実に表した試合結果とパピヨンの怪我という印象を筆者は抱いている。美衣奈の見舞いには彼女も顔を出していたが、謝るそぶりなどまるで見せないところもそれを物語っていると思う。
つまり龍子はパピヨンを対等の敵として迎えていたわけである。そんなわけで筆者はすっかり龍子が気に入ってしまったわけだが、これは余談。
・・・見舞いの塾生たちが帰った後、がらんとうすらさびしくなった病室での美衣奈とピノの話題はそれではない。
「ねぇ・・・あの人誰だったっけ・・・?」
さっきの中に、見慣れない塾生が混じっていた。
「なんか見たことある気がするけどなぁ」
その、見慣れない塾生は一人遅れて入ってきた。入ってくるなり、自身の両の手を美衣奈のほうへさしだせば、先端にはそれぞれ、カエルとウシの絵の描かれたグローブ。
「こんにちはー。ぼくウシさん」
「自分で「~さん」つけるけるなよ。で、僕はカエルさん」
「君もつけてるじゃないか・・・」
「違うよ。僕は「カエルさん」までが名前なんだよ」
「あ、そっかぁ・・・。じゃあカエルさんに敬称をつけるときは「カエルさんさんななびょーし」ってことになるねー」
「ならないよー」
「ならないねー」
な・・・何なの~!?
半ば助けを求めるような目で辺りを見回す美衣奈だが、ほかの塾生たちはなにやらニヤついたまま、次の展開を期待している。
そんな中でまた、カエルとウシが動き出した。
「で、今日は何しに来たんだっけ」
「今日はパピヨンを励ましに来たんだよ」
「励ますって言ったってカエルさんはもともと髪の毛なんてないじゃないか」
「ウシさん、僕らはハゲを増しに来たんじゃないよ」
あくまで淡々とツッコむカエル。
「でもさぁパピヨン。君ー、たいした怪我ぁ、なくてよかったね」
「彼女は毛はふさふさじゃないか」
「ウシさん、「毛がなくて」っていったんじゃないよ」
「毛!が!!なくって!!!」
「わっ、びっくりしたなぁ・・・」
・・・実はパペットマペットのコントを見たことがないので、こんなヤツラかは多分に怪しいが、とにかく彼女の両手がなおも続ける。
「今日はやけにハゲネタにこだわるねー」
「いやぁじつはさー。僕も髪の毛ほしいなと思って、昨日アートネーチャンにいったんだよ」
「ウシさん、アートネイチャーだよー」
「そうそう。そのアート姉ちゃんに、僕ー髪の毛はやせますか?って聞いたんだ」
「ふんふん」
「ことわられてさー」
「どうして?」
「「ウシロ髪ひかれるから」だって」
「うまいこというねー」
「だから僕「後ろ髪、ひかれたいです」って言ったんだ」
「そしたら?」
「歌われてさー」
「え?」
「♪雨下がりの~真っ青な空!!小さな雲がぁソーダー水の炭酸みたいっ!!」
・・・・・・
「ウシさん、そのネタ、奇面組世代じゃないとわからないよ」
「♪セーラふっくをぬ~が~さ~ないでっ!」
「もっと古いから」
「♪コマッちゃ~う~な~・・・」
「工藤静香じゃないから」
「♪デートに誘われないっ!!」
「誘われないんかぃ!!」
「カエルさん、キャラ変わってるよ?」
そこで2匹?の目が方々に移る。
「みんな・・・目が点になってるね」
「そのまま砕け散るかな?」
「ウシさん。それは「めがんて」だよ」
「試して目ガッテン(NHK)!!」
「ウシさん、ツッコむほうの身にもなってよ」
・・・ちなみにその2匹を巧みに操る彼女は、無表情のままうつろな目を美衣奈にむけていてそれがちょっとコワかったりするが、声はあくまで陽気である。
「今日はなんだかキレが足りないねー。カエルさん」
「だって、あんまり笑わせると頭に悪いかなと思ってさー」
「とにかく早く元気になってほしいね」
「そうだね」
「早く退院してね」
「がんばってね」
「ピノ君」
「パピヨンに言いなよ!!」
・・・そして彼女は役目を終えたとばかりに無口のまま病室を出て行ってしまった。
「まぁオチの弱さは別にして・・・だ。あいつら何モンだろう」
「ピノと似てるけど、普通に聞こえるようにしゃべってたよね」
美衣奈もピノも「腹話術」というものを知らない。
「似てねえよ。ただあの本体見ても口も動いてなかったぜ」
そうだ。まずあの本体は誰だろう。
「あんな人、うちにいたっけ?」
「なんかさー、ちょっと前からジムで練習してたような気もするんだよなー」
女児塾は新規参入の士の紹介をあまり大々的には行わないことは、彼女に限らず、静江や一期生たちの時からもわかっているのだが、それにしても2週間以上前から在籍しているにもかかわらず顔も覚えられないのは、美衣奈の人見知りによるものか、はたまた彼女の表に出ない性格によるものなのか・・・。
「あーなんかさー、奴がいなくなってから誰かが名前言ってたぜ。えっと・・・なんていったかな・・・く・・・く・・・・くろ?」
「黒田勘兵衛」
「ちがうだろ」
名前が出そうで出ないのが気持ち悪い。こんなことならそれからしばらく残ってた糸織にでも聞いておけばよかった。
「もういいよ。今度あったらお前が聞け」
「えー!?だって・・・怖そうなんだもん・・・あの人・・・」
もっとも、はじめは化け物と勘違いするほどに怖かった静江が実は優しかったりするので、人は見かけだけで判断してはいけないとは思うのだが、基本的に自分に話しかけてくる人にしか話しかけない美衣奈が彼女と接点を持つことは難しい。
「あ!そうだ!!わかった!!」
そんな中、彼女は何かを思いついたらしい。手をたたいて起き上がり、騒ぐといまだに痛む頭に打ちのめされて再び枕に突っ伏す。そしてか細い声を上げた。
「あ・・・あの・・・カエルとウシに聞けばいいんだよ・・・」
「大丈夫かよ・・・」
「大丈夫・・・」
「でもあいつら、まともな会話になるのかなぁ・・・」
「そこは似たもの同士、ピノお願いね」
「似てねーよ!!」
かくいう美衣奈もピノとあの2匹?は別のものだと思っている。
・・・少なくともピノの声は、自分以外には聞こえない。
余談。いまだにその正体を明かし惜しみをしているこのピノについて、ひとつだけ付け加えておきたい。
病院に運ばれ精密検査を受けることになった時、医者は当然のことながら検査に邪魔となるピノを脱がしにかかったのだが、これがどうにも外れない。
・・・結局、その人形を破いてでも手を露出しなければならないほどの理由はないと判断し、そのまま検査に及ぶこととなる。
あまり大層なことではないものの、無意識の中でもピノをつかむ手の力を絶対に緩めようとしなった美衣奈の、心の闇を象徴するエピソードだと思ったので追記した。




