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第19話:檄春!花見ライブ!(前編)

本厚木駅北口15:30集合。

・・・「檄春!花見ライブ!」は、新宿のライブハウスで行われるらしい。18時開始なので、余裕を持ってその時間に琴と美衣奈の二人は待ち合わせることになっていた。

4月はあたたかい日と寒い日の差が激しい。季節は行ったり来たりを繰り返しながら徐々に冬を忘れていくが、今日は咲いた花も窄んでしまいたくなるような、そんな寒い空が広がっている。

そんな中、待ち合わせ時間を20分残して、精一杯のおしゃれをした美衣奈は、既にその場所にいた。

「で?」

「え?」

「何でいるの?」

隣には、さも当然のような顔をした糸織が缶コーヒーを飲んでいる。

「え?・・・保護者」

「いらない」

「だめだよ」

大体、そんな恰好でどこに行くつもりなの?

糸織の瞳が上から下へ舐めるように美衣奈の姿を映し出す。

「だから言ったじゃん。ライブだよ」

「その恰好で?」

「いいじゃん、別に・・・」

美衣奈が口を尖らせた。とっておきのおしゃれにケチをつけられたら、自尊心も傷つこうものだ。

しかし、糸織がいぶかるのも無理はない。

まずなにより気になるのが、修道女かと思うような型の黒い薄手のコート(マント?)である。この時点ですでにライブ以前に日本人の恰好ではない気がする。

もっとも、初めて会った時の恰好(すなわちリングに上がっている恰好でもあるのだが)などは、世界中どこの人間の恰好でもなさそうなので、幾分マシと言えるが・・・。

胸にライオンをかたどったアップリケのあるそのマントは肩口が広く開いていて、今はエンジと黄のしましまスカーフで隠れてはいるが、中は白いブラウス、マフラーと同色のネクタイが控えている。ちなみにマントの隙間から覗くミニスカートは灰色のプリーツ・・・中身はまるで、制服である。

「こんな恰好でどこへ行こうというの?」

「ライブだよ!」

価値観の違いというものは恐ろしい・・・。


琴は定刻に来た。

彼女が糸織に会釈をすれば、互いの接点である美衣奈が互いを紹介する。

「ところで糸姉はホントに行くの?」

「そりゃぁもちろんだよ~!」

何がもちろんなのかはわからないが、糸織が胸を張った。

「だって、チケットがもうないかもよ?」

「あぁ、大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫~」

デビュー3手前くらいのバンドのライブで当日券に困ることはまず滅多にない。糸織は当然ながら、そのことを知っている。

結局数分後には、切符の券売機には琴、美衣奈、糸織の3人の影が並ぶことになった。


ライブハウスは、駅で言えば新宿よりも地下鉄「新宿3丁目」に程近い。

「なつかしーなー。ここでライブやったことあるよ~」

会場で難なく当日券を買った糸織の表情は非常に懐かしそうだ。

「へぇ、糸織さんもやってたの?」

「ちょっとねー」

などと糸織は謙遜しているが、とんでもない。「しおりんのベース」といえば、インディーズバンドでは知る人ぞ知る実力を誇り、そのルックスも手伝って数多くの男性ファンを魅了、メジャーデビューも囁かれたほどである。

それが、突然の引退声明で雲隠れをした。彼女は誰にも表明せず、突如プロレスの世界に転向したのである。その心中は量りかねるが、その頃のファンを引っ張ってこなかったところが、糸織らしいといえば糸織らしい。

糸織は自分の部屋に入るように何のためらいもなく2人を先導していく。どうやら中は、1階がバーのようになっていて2階の奥まったところが会場のようであった。

「あれ、もうこんな時間なんだ・・」

琴の時計の針は、コンサートの開始が間近に迫っていることを告げていた。急いで会場入りすれば、客席はそれなりに人で埋まり、ざわめきが大きい。

「みーな、トイレ行った?」

「大丈夫」

「肩車しようか?」

「大丈夫!」

「あたし、来る時部屋の電気切ったっけ~?」

「しらないよ!もう・・・」

糸織と美衣奈もすぐにそのざわめきに溶けていった。

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