戦闘詳報:パピヨンとピノ vs 早坂香澄
ちょっと15話に絡むのと、これはわたしが書いたものだからプロレスの興行一試合載せときます。
注釈:ストハヤ=ストップ早坂 早坂を止めろというプロレスの企画?誰もが勝てていない
DG:ノンストップアマゾネスの異名を持つ強いレスラー。ボディービルマニア。早坂は彼女を慕っていて、いつも彼女をよいしょしている
ストハヤも第5弾まで来てしまった。舞、一条、柳沼、神楽坂を下した早坂の次なる相手はパピヨンとピノ。第一期生最後の牙城・・・といえば聞こえばいいが、しかしてその実態は同期生中ビリの戦績の彼女なわけだから、「クライマックス」というより、「消化試合」・・・ぶっちゃけ、「ネタ切れ」という感の否めない対戦である。
だがそれはそれ。リング経験豊富な早坂はそんな下馬評通りに客を飽きさせるようなことはしない。・・・なんと入場曲「サイレントヴォイス」にのって現れた彼女の右腕は、腰のところで完全に固定されていた。
ハンディキャップマッチ・・・というわけである。
「勝って当然の試合なんてしたら、DG先輩に捧げる勝利が色褪せますわ」
そのゆったりした余裕の表情を受けるように現れたパピヨンとピノ。
バトントワリングの練習でもしたのか、持っているホウキをくるくる左手の中で躍らせながらの入場が、こちらも一見余裕っぽい表情を見せてくれる。
「あ!ごめんなさい!!」
途中、手を滑らせてホウキを観客席の方へ飛ばしてしまって、あわてて取りに行くなどのアクシデントがなにかを台無しにしているが・・・。
「まぁ・・・貧弱な体・・・。リングに上がることだけでもDG先輩に対する侮辱ですわ」
彼女がリングに上がるとさっそく挑発モードに入る早坂。
「よし、きたぜ。俺が言った通りに言えよ。美衣奈」
「うん」
実はパピヨンとピノは先日、早坂選手と試合をすることが決まった時にこれまで多くの選手を葬って来た挑発を封じ込める作戦を考えていたのである。
「まず、「あなたも侮辱じゃ負けてないと思うよ」」
その言葉をなぞるパピヨン。早坂の眉がピクリと持ち上がる。
「あ~ら。どういうことかしら?」
「「だって、DGさんのことを誉めるわりには、自分はそうなろうとしないじゃん」」
やや言葉に詰まる早坂。
「し・・・してますわよ。毎日プロテインと日課は欠かしませんわ」
「「あたしだってそうだもん」」
ちなみにパピヨンは筋トレのたぐいをまったくしていない。ピノの方便だ。
「「なりたいけどまだなってないのはお互い様でしょ?それでも侮辱なの?」」
いつもとは様子の違うパピヨンに息をのみはじめる観客。早坂がフンと鼻を鳴らす。
「生意気・・・。子供の生意気はこれだから嫌ですわ」
「「侮辱なの?」」
なにかに取りつかれたような目をしているパピヨンの目をきっと睨み返す。
「わたしはDG先輩の素晴らしさを代弁しているだけなんですの!」
「来たぞ美衣奈!「つまりホントは、自分はああはなりたくないけどとりあえず筋肉馬鹿を立てておくかって思ってんじゃないの?」・・・ってピノ!?大丈夫なの!?」
「なんだと!早坂~~~~!!!!!
・・・明らかに詭弁なのだが、DGという筋肉頭脳が早坂に弁解の余地を与えるほどの知能を持っているならば、今まで一言二言でほいほいとのせられたりはしない。パピヨンが本来言うはずもない罵詈雑言のトバッチリが、そのまま早坂に降りかかることとなったところで、ようやくゴングが鳴った。
さて、今回の早坂はそんなわけで平静さを欠いている。加えてみずからが架した右腕のハンディキャップのせいで、パピヨン相手に完全に浮き足立っていた。
いつものテンポを掴む前に突進。「昔とった杵柄」であるテコンドーの蹴りが右へ左へと空気を裂いていく。が、これは見事に空回りする。まるで鬼ごっこの鬼から逃げるようにリング内外を多彩に転げまわるパピヨンをどうしてもとらえることができず、完全にペースを忘れた早坂は開始5分で既に息が上がってきた。
「ちょこまかと!!」
パピヨンと戦うと、みんな口を揃えてそれを言う。
「行くぞ!美衣奈!「そんなんで息が上がるなんて、やっぱビルダーを馬鹿にしてるんだよ!!」」
「うん!えっと・・・そんなんで息が上がるなんて、やっぱDGさんを馬鹿にしてるでしょー!!」
「ぬぁんだとぉぉぉぉ~~~~!!!!」
もはや理由すら分からないが、そんなことはキレ状態のDGにはお構いなしだ。
すべてを鵜呑みに逆上して、隣の椅子を、座ってる人ごとどこかへ放り投げてしまう。
「よし美衣奈!リングの外だ!!」
「うん!」
パピヨンがロープを飛び越えれば、早坂も荒い息のままそれに続く。何とかして汚名を削がなければならない。
右手の自由が利かないので、ハエのようにぶんぶん飛び回る彼女を掴み捉えることはできまい。残されたのはやはり、膝も含めた蹴りのコンビネーションしかない。
強引に間合いを詰める早坂に対してやはり避けるので精一杯のパピヨン。
だが、リングほどのスペースは場外にはない。徐々に追いつめられ、場外カウント10の頃には完全に早坂の射程範囲に入ってしまう。
そして右の脇腹を前蹴りが貫く。反射的に身を翻して、急所へのクリーンヒットこそ免れたものの、パピヨンの動きが完全に止まってしまった。
逃す早坂ではない。くの字に折れたパピヨンの下がった頭を得意の膝が襲った。
「あぶねぇ美衣奈!!」
目は反応している。だが身体がついてこない!!
ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!
だが次の瞬間、半鐘のような音が場内に響きわたった。
なぜだかは当事者以外は分かっていた。
「は~や~さ~かぁ~~!!」
殺気立った声で自分の名を呼ばれてようやく現状を把握する早坂。
驚いたことに早坂の膝をなんとゴングで受け止めたDGが鬼の形相でこちらを凝視していたのである。
「試合が終わるまでなど待てぇぇぇん!!!どういうことかしっかりと説明してもらおう!!!」
「え?あの・・・ちょっと!?」
「やかましい!!!!ゴタクは裏で聞こう」
DGはそのまま、怪力で有無を言わさず早坂の腰を担ぎ上げ、奥へと連れていってしまった。
「・・・・・・・」
会場が静まり返り、カウント18の声だけが浮かび上がる。
「ぱっぴー!!帰らないともったいないよ~~!!」
そこで一番最初に我に返ったのがしおりん。次いで観客の大声援がパピヨンを後押しし、彼女も戻ろうとする。が、そのダメージから身体の反応は鈍く、間に合う気配はない。
「19!!!!」
そして、レフリー森田の声が無情にも、最後のカウントを、
・・・・・・。
・・・。
・・・最後のカウントを・・・。
・・・。
・・・・・・森田の次の言葉は20ではなかった。
「19,5!!!19,6!!!」
途端、リングの時間がゆっくり流れ始める。コンマ1秒が1秒であるかのようなカウントのスピードだ。いや、比喩ではなく・・・。(さすが森田)
結局、「19.97」の時点でリングに戻ったパピヨンが、まさかの金星を挙げる事となった。
○パピヨンとピノ vs 早坂香澄 ×
6分25,97秒:強制送還(いろんな意味で)




