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第13話:DEGEIKO IN YOKOHAMA(後編)

柳沼ちはる:通称「ちぃ」。大日本女児塾の中堅レスラー。プロレスやる前は柔道とか空手とかやってました

「ニタさん・・・・・・」

バイクのエンジンのうなり声が、やんだ。辺りはもうすっかりと夜の空が広がっている。

帰って来た。住み込んでからまだ二ヶ月しかたっていないのに、今、ここから見える女児塾の寮はすごく懐かしいものに見える。

「本当に、本当に本当に!ありがとうございました!!」

それしか言葉が思いつかない。美衣奈は今、心も身体も、ただただ震えていた。

感激?・・・わからない。でも、美衣奈はあんなに真剣なニタを見たのは始めてだった。

実力は確かにNANAが先んじたかもしれない。でも、どちらが強いとか、そんなことでは推し量る事ができない何か大きなものを、ニタは見せてくれた気がする。

何よりそのファイトを自分のために買って出てくれたこと。・・・そのすべてが、美衣奈から他の言葉を奪った。でも・・・

「いいからしゃんとしろっての!!」

「あ・・・」

必死でニタにしがみついている自分に気づく。

実際、身体が震えていたのは単に今までニタのバイクの後ろに乗ってたからかもしれなかった。

ふらつきながらも急いで手を放す。すると、意外にもその反動でニタがよろけてしまう。

「え!?大丈夫ですか!?」

「大丈夫じゃねぇ~~~~~~!!!アイタタタタタ・・・・・」

地元に戻り緊張の糸が切れたか、それを皮切りにニタは自分のダメージが思ったよりも遥かに大きいことを悟った。

あたりまえである。美衣奈を意識したのだろう。関節の魔術師NANAは実に多彩な技を魅せた。もちろん一方的にやられたわけではないものの、体中の関節のきしみ具合から考えても、四冠の実力を見せつけられたことを改めて痛感する。

「ごめんなさい・・・あたしのせいで・・・」

「あんたねえ!あたいがここまでやったんだ!それなりの結果出さなきゃ承知しないよ!!」

その勢いのまま、「・・・ちょっと肩かせ」と、美衣奈にもたれかかるニタ。

「あ!ちょ・・・!」

美衣奈は慌ててその重みを受け止めようとした・・・が、まばたき二つしないうちにあえなく2人とも地面に突っ伏してしまう。

「あっ!あっ!ご・・・ごめんなさい!!」

この上、情けない姿の上塗りをして、また怒られると思い、地面に突っ伏したまま必死で頭を下げる。

・・・だが意外にも、その応えは豪快な笑い声だった。

「あっははははははははは!!!」

その声の主は、そのまま駐輪場のアスファルトの上でごろんと仰向けになる。そしてそのまま、息が尽きるまで笑い尽くし、深い息を二つ・・・。暗くて良く見えないけど、ニタはなお笑顔のようであった。

「今日のスパーリングはどうだった?」

「・・・すごく、かっこよかったです」

本心からそう思った。

「馬鹿、そうじゃない。参考になったか?」

「・・・・・・」

美衣奈はニタが仰向けになっているその枕元(?)に正座した。

・・・正直なところ、NANAの関節技は速すぎて、なんだか良く分からなかった。以前、自分を襲った神業は、端から見てもやはり神業だったのである。

ただ一つだけ・・・関節を取るというその行為には、例えそれがどこの関節でも、その本質は同じである、ということだけは感じることができた。

その旨を伝える。するとニタは満足そうに目をつぶり、

「NANAに感謝しなきゃね・・・」

そう言った。

NANAがそれを教えるために、わかりやすく技を掛けていたのだろう。彼女の性格を知っているニタは彼女のその配慮に、心から感じ入る。

「あんたがどこまでやれるか・・・見せてくれよ・・・」

・・・静かな月明りの中、その声は美衣奈に響いた。

「べつにさ。腕立てなんて3回でいいよ。その分あんたは、あんただけのなにかでそれをカバーするんだ」

「・・・・・・」

ニタを見て、NANAの瞳を思い出す。自分など到底かなわぬ大きさに再び身体を震わせた。

「・・・・・・がんばります・・・」

そしてやっとのことで発したこの言葉を、ニタは夢心地で受け止めた。そして星の輝く夜空を見上げる。

・・・あたいも頑張らなきゃ・・・。

その時。

一条の光が一瞬、駐輪場の向うに煌いたかと思うと、刹那にしてニタの上を通りすぎていった。思わず彼女は声を上げる。

流れ星!?・・・ではない。

「げふっ!!」だ。

駐輪場の幅を考えても明らかにオーバースピードで突っ込んだなにかが、ニタの腹で一度跳ねて、その向うで煙を上げながら急停止したのである。

「なんなの!?」

振り返る先にまず確認したのは、図太いエンジンのうなり声とタイヤゴムの焼ける匂い・・・。

バイクだった。

「白い羽根の煌く黒い鳥」・・・ホンダの誇るスーパーマシンであり、駆っているのは女児塾の新鋭、柳沼ちはるだ。

マテ・・・。

・・・と、いうことはアレに轢かれ・・・。

「二、ニタさん!!!!?」

美衣奈の悲鳴に重なってニタの怒号が轟く。

「こらぁぁ!!ちぃ!!!!殺す気かぁぁぁ~~~!!」

「あれ!?二田さん!?」

「二田さん、じゃな~~~~~~い!!!せっかくあたいがかっこよくきめてたんだぞ~~~!!!」

「ぐあっ、チョークチョーク!二田さん、ギブアップゥゥゥゥゥゥ!!」

「どうでもいいけど無事なの~~~~~!?」


マジメになりきれない、女児塾の全容を垣間見るようなタイミングであった・・・。

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